2008年12月 1日 (月)

■モノにしがみつく■

アニメージュオリジナル vol.2  12月3日発売
Vol2_jake
●『空の境界』を識る
10ページ、構成・執筆。美少女アニメ特集ということで、「空の境界はどう?」と提案したら、けっきょく自分でやることに。コア層にのみ重厚に支持され、いわゆるライト層が存在しないこのアニメ、「一体どう説明しようか」というところからスタートし、講談社の太田克史さんにガッチリとインタビューしてみたら、これが大当たりでした。『空~』を知らない人ほど面白い記事のはず。必読!

『屍姫 赫』の色
4ページ、構成・執筆。これは特集とは別に、美術監督と色彩設計の方へのインタビューがメインですね。色づかいが非常に鮮烈な作品なので、今のうちに取り上げたいなと。

●『鉄腕バーディー DECODE』 赤根和樹監督インタビュー
これは編集部からの要請で、計4ページ。個人的には、赤根監督応援企画のつもりで。アニメーターさんの話がいっぱい出てきますよ。

●作家・河森正治の足あと 第一回
4ページ、構成・執筆。「第一回はマクロスFの最終回をフィーチャーして欲しい」という編集部の条件をのんで、河森LOVE全開の新連載。かなり自己流解釈を書いたけど、これはおそらく、「研究」の名を借りたラブレターですから。突撃ラブハートですよ。

河森さんといえば、11月29日、先端技術館@TEPIAにて「SFアニメが現実に!?激論ロボットトーク」を見てきた。出演は河森さんのほかにロボット工学者の古田貴之さん、水内郁夫さん。総論のあたりで、「ロボット単体ではなく、街や環境もふくめてネットワーク化して考える」「そうすれば、モノを増やさずに快適に生きられるかも知れない」――という話が出てきた。古田さんは例として「iPodがあれば、CDというモノは必要でなくなる」と仰っていたと思う。
その直後、会場で待ち合わせていた知り合いから「20年前にフルスクラッチした模型の残骸」を見せられ、しばし唖然とする。プラ板のカタマリに過ぎないといえばそれまでだが、その「モノ」に蓄積されたエネルギーに圧倒されるのである。

例えば、今はケータイ漫画のダウンロードが盛んだと聞く。
でも、俺はどうしても本屋で買ってきてしまう。気に入った本が、手垢で汚れていくのが好081130_04360001きだ。古本も好きである。
僕らよりちょっと上の世代になると、モノ頼みの人がチラホラいて、ネットなんてやらなかったりする。メールもそこそこに、いきなり電話がかかってくる。そういう人と接していると、安心する部分もある。
さっきの模型の話も同様で、指先で触れられるモノに苦心の痕跡を見つけると、そこに作り手の美意識はおろか、生き方をも感じとることが出来てしまう。それがモノの力である。

ところが、本なんていうモノづくりに参加していると、そこには「読まれていないのではないか」という恐怖も生じる。読まれない本は、上映されない映画のようなものだ。
夜中2~3時のファミレスで、どんな事情があるのか知らないが、一人でじっと読書しているお嬢さんがいる。ああ、美しいなと思う。いまや、本というモノそれ自体が付加価値である。若い頃、映画の企画が通らないので「だったら、このストーリー、飛び出す絵本にしてやる!」と宣言したことがあったが、それぐらいの気持ちでつくらないと、モノとしての本の価値は本当に消滅する。
僕らは、モノにしがみつく最後の世代だから、せめて悪あがきはさせて欲しい。悪あがきしながら、かつては買うのに勇気が必要だったエロ漫画さえ手軽にダウンロードされる時代の風の、その薄ら寒さにゾクゾクしてもいるのである。

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2008年11月25日 (火)

■ワインが飲みたい ただそれだけ■

月刊モデルグラフィックス 2009年1月号 発売中
Mg_09_01_3
●「VF世代の四半世紀」 執筆
模型誌、しかもMGに『マクロス』のことが書ける!というので、他の仕事をすべてストップして、土日だけで書き上げた1万字です。
最大の資料は、当時のアニメ誌だったりするので、友人が古本屋に走って記述に間違いがないか確かめてくれました。
記事の中では明確に書いてないけど、当時のアニメファンには高等意識があったと思う。だから、通俗性まる出しの『マクロス』に腹を立てたのだろう。その一種の「下品さ」が劇場版で脱臭され、『マクロス』は「認められた」んだろうけど、そのプロセスが、どうも釈然としない。その気分が、誌面に出ているだろうか。

TSUTAYAが半額セールだったので、永作博美目当てで『気球クラブ、その後』。どういうわけか、全編ビデオ撮影。公開時はキネコしたものを上映したらしい。
永作の扱いは、なかなか良かった。永作がらみのエピローグは、あとから大幅に撮り足したものだそうだ。このエピローグがなかったら……ただ若者が携帯電話で無作法にくっちゃべり、だらしなく酒宴を催すだけの不愉快な映画じゃないか?と思っていたら、エンドクレジットに「脚本・監督 園子温」と出て、納得した。
園子温監督が、まだPFF周辺で映画を撮っていた頃、「俺」と書いた旗を持って街中を走り回る映画があった。あの旗が、今回は気球になったのか。作家の業なり癖なりを知ってしまうと、もうそれで許す気になってしまう。

まったく話は変わるが、ムーンライダーズとアニメ音楽といえば、『東京ゴッドファーザーズ』を思い出す人が多いと思う。しかし、ライダーズのメンバー個別で見ると、かしぶち哲郎が『ポケットの中の戦争』の劇伴をやっていたり、なかなか油断できない。
岡田徹でいうと、何といっても吉浦康裕監督『ペイル・コクーン』。

この挿入歌は、確か版権の問題でCD化できないと聞いた。僕が好んで使う「星が眠りにつく頃」というフレーズは、実はこの曲から拝借している。
岡田徹といえば、ゲーム『クラッシュ・バンディクー』のCMソングを担当していて、これがフルコーラスで聴くと、かなりイイ。発作的にCDを買ってしまった。
鈴木慶一のCMソングはかなり多いけど、キッコーマンのマンズ・ヌーヴェレールの「ワインが飲みたい ただそれだけ~」は、確かアルバム「CM WORKS」にも入っていなかったと思う。僕のノスタルジアを刺激するのは、意外と90年代初頭ごろに聞いていた曲であって、数少ない友人と共有できた聴覚の記憶である。
個人的体験に細分化されればされるほど、限りなくノスタルジア濃度は強まる。人に話しても分かってもらえないような経験こそが、実は最も「懐かしい」のである。

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2008年11月15日 (土)

■谷村美月は、風に吹かれている■

EX大衆 12月号 発売中
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●愛ドルのリコーダー 第11回 末永佳子
●原紗央莉 「予感」
●山本梓 「とび
っきりの笑顔。」

それぞれ、ポエム執筆です。今回は、かなり恥ずかしいポエムが書けた!と胸をはって言えます。
ところで、もう一個のブログでも言ってることですが、編集者がグラビアページに付けるタイトルが、実に詩的で良いですよ。手元にあるバックナンバーをめくると「華の予感」「洋館より愛を込めて」「美女は二度微笑う」「背徳のシネマ」「美女と鏡とスーパーカー」などなど……その場かぎりのアイデアなんだけど、だからこそセンスが問われる。こういう瑣末な部分を楽しめなきゃな。

ようやく、リビドーに従った映画鑑賞のできる時間が出来た。谷村美月めあてで『魍魎の匣』。監督は原田眞人なので、話の難解さとスマートなカット割りも楽しむべし。
しかし、今回も谷村は、ひっでぇ目に合っている。子供が見たら、泣いちゃうような姿で出てくる。だけど、この役は「誰かが」やらなきゃならないんだ。それを買って出て、次の映画では何事もなかったかのように、ニッコリ笑う。谷村美月は、風に吹かれている。彼女は、誰にも守られちゃいないんだ。
この映画では、田中麗奈のチャキチャキぶりが光っている。先日、10年ぶりに『がんばっていきまっしょい』を見たけど、この人は何をやってもカラッとしている。反面、谷村美月の081115_15310001ウェットなこと。不幸をしょいこんだ役なら、右に出るものなし。それなのに、いまだに「美月ちゃん、かわいい!」などと見当違いの誉められ方をしてしまう……それも不幸。だけど、誰かがジメジメした人間の暗部に踏み込まねばならない。映画というメディアが、それを要求しつづける。谷村は、命綱さえつけずに最深部へ挑む。その勇気に見合った賞賛が得られているとは、とても思えない。そんなこと、本人も気にしていないかも知れない。ウェットだけど、ワイルドだ。やっぱり、好きな女優だ。

「人間の機能をすべて再現した機械をつくろうとすると、ビルディングぐらいの大きさになってしまう」……確か、子供向けの科学雑誌に出てきた記述だ。エド・レジスの名著『不死テクノロジー』にも通じる、その倒錯した着想に、目眩を感じたものだった。その目眩を、原作の『魍魎の匣』からは、かすかに嗅ぎとることが出来た。
一人の少女を生かしておくために、途方もない大きさの建造物が必要である――耽美主義は、つねに絶望、諦念、感傷と隣りあわせだ。しかし、原作も映画も、そこまで踏み込むことは出来なかったように思う。耽美主義は個人を幸せにするかも知れないけど、大勢を幸せにするわけじゃないからなあ(笑)。

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2008年10月10日 (金)

■私の青空■

オトナアニメ Vol.10 発売中

513rfnlstll__ss500__2●『鉄のラインバレル』レビュー/3DCG監督インタビュー
●『天元突破グレンラガン 紅蓮編』 中島かずきインタビュー

中島かずきさんは、「えっ、この人が?」と思うぐらい腰の低い方でした。あけすけというか実直というか、ウソのつけない方――これぞ作家だよね。
とてもじゃないけど、このブログに書いたような「ヨーコの乳が揺れる条件」なんて、そんなことは話せない(笑)。もし喋ったら、「ああ、そういう見方も面白いですね」と優しく返してくださったと思う。ホントは、中島さんの方から、ヨーコのブラについての話も出るには出たんだけどね。

さて、某ムック用に日本映画ばかり十数本、観たのだが、『うた魂♪』にやられた。家で081010_02440001 DVDで観てたのに、終わった後に一人で拍手してたぐらい(笑)。最初の20分の幼稚っぽい展開で、「こりゃ寝るな」と思ったんだけど、そういう映画こそ、隠し玉を持っているのよ。
エンジンがかかるのは、主演の夏帆が「アイ・アム・フルチン!」を叫ぶところ。映画ってのは、凄いよ。この歳の、この瞬間の夏帆の笑顔を、容赦なく切り取るから。百年後に観ても、この輝きは決して失われない。それが映画というものだ。夏帆なんて、今までなんとも思ってなかったけど、この『うた魂♪』は素晴らしかった。
それから後は、もう打ちのめされっぱなしですよ。特に、レコード喫茶のシーン。故・草薙幸二郎が、喫茶店のマスターに、エノケンの『私の青空』をリクエストする。ところが、古いレコードなので、針が飛んでしまって、ちゃんと聞けない。たまたま喫茶店に居合わせた、夏帆たち合唱部の女の子たちが、その続きを歌いはじめるんだよ。
このシーン、セリフは一切なし。歌だけ。夏帆たちの歌を聴きおわった草薙さんは、にっこり笑って、両手で大きな輪っかをつくる。
――そして、この短いシーンが、草薙幸二郎の遺作となったんだ(2007年没)。若い女優たちの『私の青空』に送られるようにして、草薙さんは亡くなった。映画は、しばしば、このような奇跡をやってのける。
草薙さんは、他の誰のものでもない「私の青空」を見たのだと思う。俳優であったがゆえに。草薙さんがまだ若い女優たちに、何かをバトンタッチしたように見える美しいシーンだった。

しかし、夏帆は、本当にいい顔になった。というか、一本の映画の中で顔が変わっていく。そういう年齢なんだよね。日本映画は今、第二の黄金時代を迎えていると思う。

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2008年9月16日 (火)

■星間飛行の旅の終わりに■

グレートメカニックDX6 本日発売!
Scan20010
●『クローン・ウォーズ』レビュー
この映画の試写会の時にはちょっとした美談があって、試写状を持っている編集者が電車の運転遅延に巻き込まれて遅れてしまったんですよ。猛暑の屋外、「こりゃ間に合わないな」とうなだれていたら、宣伝会社の人が「以前に『エクスマキナ』を取材してくださった方ですよね? 試写状なんか無しでいいですから、入っちゃってください!」と。覚えられやすい顔で良かった。

●シャア・アズナブル in Z GUNDAM
以前に書いたシャア論が評判よかったので、これはシャア論の第二弾ですね。

●内田健二氏に聞くZガンダムの真実
なんと、僕のサンライズ時代の上司であり、現サンライズ社長の内田さんにインタビュー。他では聞けないぶっちゃけ話、これは必読。

●オヤヂ酒場DX
藤津亮太さんと、真昼間から飲みながらの放談コーナー。今回のお題は、『スカイ・クロラ』と『崖の上のポニョ』。俺が藤津さんの聞き役になってきてるので、もっと喋んないとまずいな(笑)。

●ギャラクティカNOW
勝手に応援連載第二回は、いよいよ明日17日より放映開始の『ギャラクティカ/シーズン2』の特集。先にシーズン2、全20話(字幕版)を見せてもらったけど、物凄いよ。シーズン1は助走に過ぎなかったんだと良く分かる。シーズン1の途中で飽きちゃった人も、シーズン2は絶対に見ないとダメだ。『ギャラクティカ』を見たあと、俺はマジで『スター・ウォーズ』のDVD-BOXを売り払った。お伽噺より現実を見ないと。『ギャラクティカ』を見て以来、俺の心の中は戒厳令状態ですよ。

●マクロスF CGメカアクション
CGIテクニカルディレクターの八木下浩史さんとプロデューサーの葛西励さんへのインタビューですね。いわゆるメイキング記事ではないけど、他誌には載らないような特選切り出しカットを用意していただいたので、メカ戦好きな方は必見!

今まで何誌も『マクロスF』特集に参加したり、時には自分ひとりだけで20ページも編集したりしてきたけど、それはやっぱり「絶対面白い」「面白いところを強調したい」というモチベーションがあったから出来たんだよね。そうでなければ、現場で喧嘩までして記事つくんないよ。程度の低い編プロのせいで、ぐちゃぐちゃにされた記事もあったので(別冊アニカンR)、真剣に怒ったら自動的に仕事が来なくなったしね。
でも、モチベーションがピークに来たときに、第12話の『星間飛行』のシ 080915_20250001ーンを放映前に見せてもらって……もう編集氏と二人で、ガッツポーズですよ。「このフィルムで30ページも特集組ませてもらえるんだ? もう誰が何と反対しようとランカの原画載せよう!」って言おうと思ったら、もう原画がカラーコピーで用意してあった(笑)。最高だよね。今でも捨てないでとってあるよ(原画そのものではなく、コピーだけど)。
寝た記憶がないよ。寝てる場合じゃないと思って、ずーっと原画を選んでいた。編集氏に「いい加減にしてください」って呆れられたよ。でも、寝てる場合じゃなかったんだよ。
僕自身もバカになっていたし、お話もバカのまま突き進むと信じていた。遅刻しそうになったアルトがバルキリーで登校するシーンぐらいあると思ってた(学校の屋上にあるVF-1を最終決戦に使ったら、いよいよ『ギャラクティカ』なんだけど……やらないよな、多分)。
第12話は、展開がバカで良かった。だって、『星間飛行』って、初めて聞いた瞬間にもう「思い出の曲」なんだもの。懐かしいんだよ、聞くたびに泣いてるよ。その曲にふさわしい、ほわ~んとしたエピソードになっていて、幸せだった。歌の力に支えられたお話だった。
偶然に偶然が重なって第12話の特集をやれて、本当に僕はラッキーだった。ライターや編集者って、作品とそういう関係を結べる瞬間がある……だから、僕にとっては第12話で『マクロスF』完! オヤジと若造が一緒に楽しめる、いい作品でした。

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2008年9月13日 (土)

■いいアニメというのは、ヒロインがいい■

EX大衆 10月号 発売中
Ex_taishu_08_10
●男泣きアニメ名作選
「泣けるアニメ」というテーマで、『スペースアドベンチャー コブラ』(松崎しげるの方)、『ジャイアントロボ』、『時をかける少女』、『風の谷のナウシカ』、『クレヨンしんちゃん』、『カウボーイ ビバップ』などから、ちょっとマニアックなシーンを抜粋。アニメの『ナウシカ』はラストが好きじゃないので、前半からちょっと地味なシーンを拾ってきたら、ちゃんと版元チェックをクリアできた。
そしてもちろん、『ゼーガペイン』を載せましたよ! 

●愛ドルのリコーダー かの夏帆
●中村優 グラビアポエム
●浜田翔子&折原みか グラビアポエム

今月は3本。しかし、浜田翔子&折原みかの写真のエロさには驚いた。こういう凄い写真が来ると「ポエム、いらないんじゃない?」と思ってしまう。一生懸命書いたけど、この写真には勝てん。
女優は映画監督と、グラビアアイドルは写真家といわば「寝て」、女を磨くのだろうと思う。ポエムってのは、その恋愛的関係に物語という花を添えるんだ。
話を広げると、恋愛なんてのは犯罪なんだよ。犯罪的要素のない恋愛なんて、存在しないと思う。押井守は『スカイ・クロラ』で「自分を殺してくれる相手を見つけるのが恋愛だ」と屁理屈を言っていたけど、あながち間違いではない。心に秘密を持つのは、気持ちいいんだよ。
やっぱり、人生の前半でどんどん恋愛していった方がいいね。人生の後半は応用編なので、いちいち犯罪していられない。

話題は一転するが、アニマックスで始まった『機動戦士ガンダムZZ』が面白い。というか、カッコいい。主人公のジュドーが、『プラネテス』みたいなことやっているシーンから始まる。ハイザックの残骸を回収しようとしてあきらめたり、「暮らし」がベースにあるのがいい。「これがガンダムなら、高く売れそうでしょ」って、そんな粋な動機でガンダムに乗った主人公はジュドーだけだ。
第一話で新メカが出ないってのもカッコいい。疲弊したアーガマが怪我人だらけだとか、セリフのひとつひとつが世界を多角的にあぶり出していく。銃を持たされたジュドーが「重い」ともらすのも良かった。その一言で個人の持っている世界の狭さがパッと伝わる(広さじゃないよ、狭さだよ)。そのことを「リアルだ」っていうんだよ。
マシュマー・セロが出てきてから話は停滞気味だが、キャラクターの言動に強い一貫性があるので、ストレスはない。
080913_04480001あとは、やっぱり原えり子が声やってるエル・ビアンノがいいね! ああいう、ダメな少年たちに自然と溶けこんでしまう男勝りの女の子は好きだな。『がんばれ!ベアーズ』のアマンダの系譜ですな。
いいアニメというのは、ヒロインがいい。これは絶対条件。『カリオストロの城』を評価してる人は、その評価の中にクラリス好きが混入しているはずだよ。映画で女優が綺麗なのと一緒ですよ。どうしてみんな、アニメと実写を分けて考えるのか、僕には分からない。

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2008年9月 4日 (木)

■プチ・天元突破■

機動戦士ガンダムの常識 続・一年戦争編 発売中
Isbn9784575300673
●30本ほど記事執筆
一巻目が、増刷につぐ増刷で記録的な売れ行きになったそうで、予定通りに二巻目刊行。前巻と同じく、裏話とか初期設定とかガンプラとかの話を中心にやりました。やっぱり、かなり読者の視線を意識してクールにならないと、こういう本は書けません。

さて、今月もグラビア・ポエムを無事に納品したのだが、ちょっと嬉しいことがあった。WEBラジオ・談話室オヤカタに出たとき、「こんなもん、当のグラビア・アイドルたちは読まないですよ」と言ったと思うが、ちゃんと読んでくれてる人がいた! リンク貼るのもおこがまいような気がするけど、相沢真紀さんのブログに「グラビアページに載っていたポエム的な文章がかなりツボだった」と書いてあった(笑)。
これはちょっとねぇ……プチ・天元突破ですよ。俺の顔も名前も知らない方、しかも美を武器にしているアイドルが、文章だけ読んで「要チェック」とまで書いてくれている。読みようによっては、「ひょっとして、これは笑われている…のか?」という気がしなくもないけど、けっこういいはずだよ、このポエムは。レオ・セイヤーの『タキシード・ボディ』を引用してるからね。全日空のCMソングですな。あれを聞くと「今日は、日曜日だ」って気分になるんだよな(リンク先に、全文出てます)。
以前に「廣田さんのポエム、女性編集者には評判いいよ」と聞かされてはいたんだけど、「文章だけ」でコネクトできるって、ヒョイと何かを越えた感覚になれる。このプチ・天元突破感だけは、自ら望んで書き続けた当人にしか分かるまい。いろいろやってみるもんだね。

さて、タイミングずれてしまったけど、この人の話題。
080903_01470001別にインパクトもないし、怒りさえわかない。なんでかって言うと、こういう人には、今まで大勢会ってきたから。ダメ大人の典型すぎて、呆れもしない。経営者でも「やーめた」って人はいたし、そういう人は別に乞食になるわけじゃないんだ。今でも、のうのうと業界で生きている。リスクを背負ってないんですよ、逃げられる人って。経営者だけじゃなくて、フリーでやってる人間もそう。仕事中に失踪しても平気なんだよ。誰かが食わせてくれるようになってるから。
どんだけ無責任になろうが立場を放り出そうが、どうにかなるの。だから、ニートや引きこもりが成立する。無気力でも向上心なくても、餓死したりはしない。そういう意味では、日本は完成されたシステムだと思う。「国」じゃなくて「系」、つまり、仕組みでしかないんだよ。
この仕組みが維持できるなら、誰も義務や責任感は持たないよ。ましてや、理想なんか持つはずがない。理想という言葉を、ものすごく遠くに感じる。外国語みたいだよ。泣けてくるよね。

このブログらしく、フィクションからの引用で締める。「皆、疲れている。息をつく暇もない。080903_21280001 どこへ行ってもサイロンが後を追ってきて、逃げても逃げても、奴らが現れる。それでも我々は、自らに課せられた義務を果たさねばならんのだ!」(『ギャラクティカ』より)
こんな当たり前のことを言うドラマが、アメリカで大流行して、日本でマイナーな現状は何なのか。答えは簡単で、当事者意識がないんだよ。フィクションに癒し以外のものを求めてないんだ。

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2008年8月27日 (水)

■僕のギャラクティカ袋■

コクピットイズム Vol.8 30日発売予定
Tps0808
●スーパーロボット操縦思想の系譜
全12ページにわたり、『機動戦士ガンダム』『機動戦士Zガンダム』『超時空要塞マクロス』『装甲騎兵ボトムズ』『無敵超人ザンボット3』『勇者ライディーン』『新世紀エヴァンゲリオン』『メガゾーン23』『トップをねらえ!』のコクピット、操縦方法を解説。あとはコラムで『戦闘メカ ザブングル』なども。
なんと、前代未聞のコクピット専門ムックですよ。こういう「ちょっとアニメを載せてみたい」という依頼が来たとき、たいてい僕は肩の力をほぐして、「軽くて浅くて、ぬる~い感じがいいんでしょ? ハイハイ」ってスタンスを取るんだけど、『コクピットイズム』は編集さんがガチで熱い人だった。各作品につけられたリードが知的で熱い。『ザンボット3』のリードなんて「ただ戦うだけでは許されない!」ですからね。そのまま番組のキャッチになりそうな勢い。
この特集の完成度は、僕の力量とは関係ない。本はやっぱり、編集者で決まるんだ。
ライターに与えられる作戦内容は、戦線ごとに違う。任務を与える指揮官だって、毎回違うのだ。初めて組む指揮官と呼吸を合わせられるかどうか。それが出来るのがプロであって、それ以外にプロの条件なんてない。

さて、なかなか日本ではブレイクしない『ギャラクティカ』のミニ特集を書いている。
080827_03410001誰に薦めても、その人にはその人なりのカテゴライズがあって、「ギャラクティカ? またアメリカのドラマですか?」と米ドラマ袋に入れる人もいれば、「ギャラクティカ? なんかSFですか?」とSF袋に入れてしまう人もいる。それはしょうがないんだけど、俺は『ギャラクティカ』序章を見た日に「ギャラクティカ袋」をつくった。翌日、『ユナイテッド93』を見て、それを「ギャラクティカ袋」の中に入れた。社会性の強いフィクションは、何でも「ギャラクティカ袋」に入り得る。
物事をギャラクティカ的視線で見るようになったと言ってもいい。そうすると、『スター・ウォーズ』なんてのは、もう失格なわけだ(笑)。偉大なる引きこもり妄想ヘタレ監督だった頃のジョージ・ルーカスは魅力的だが、もう僕の人生には必要ない。
仕事に向かって気をひきしめたい時、僕は『ギャラクティカ』を見る。たちまち自信と責任感が呼び覚まされる。それが僕と『ギャラクティカ』の関係だ。

シーズン2には、『エヴァンゲリオン』によく似たシーンがある。その場面は『エヴァ』を参考にしたのではなく、逆に『エヴァ』が『ギャラクティカ』のために用意したように、僕には見える。「ふざけんな、後から『ギャラクティカ』がパクったんだろ」と言われようとも、僕の視点からはそう見えてしまう。まるで、重たい巨石を下から積み上げてピラミッドが築かれたように、さまざまな文化が集積に集積を重ね、ある時代、ある作品が頂点に到達してしまう……。そういう現象が、あり得るんじゃないだろうか。
たった5万人になった人類が、異文化と戦ったり交じり合ったりしながら死にもの狂いで生き延びる話――『ギャラクティカ』のあらすじを簡単に言うと、そうなる――は、頂点に立つのにふさわしい物語と、僕には思える。

ここまで書いて気がついたけど、『ギャラクティカ』の魅力を説明しづらいというより、説明する俺に問題があるんだな……。
余談だが、若き日のジョージ・ルーカスは僕の中では、「ヘンリー・ダーガー袋」に入っている。快楽至上主義の誇大妄想クリエーターという点で、ルーカスとダーガーはかなり近いと思う。

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2008年8月24日 (日)

■ガウォークとポニョ、ライアンの娘■

ロマンアルバム 『崖の上のポニョ』 発売中
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●インタビュー記事、お手伝い
近藤勝也さん、吉田昇さん、宣伝チームのインタビュー、もうベタ起こししてあるものを文字数どおりに切ったり貼ったり……僕がインタビューしたわけではないので、本当にお手伝い。
この仕事している時は、映画も未見だったし忙しかったし、『ポニョ』に何の思い入れもなかった。出来た本を見ると、グラン・マンマーレがまた色っぽい。リサは25歳だそうだけど、俺の中では「成長したキキ」確定なので関係ない(近藤さんのリサのスケッチが、また色っぽくてグー)。
あと、フジモトってのは人間界に飽き飽きしたクロトワなんだよね。それと、やっぱりポニョのガウォーク形態(半魚人形態)は要らなかったような必要だったような。最初は、この半魚人形態が最初に決まってて、ファイター形態(サカナ形態)は後から決まったそうです。実はバルキリーもガウォーク形態が最初に決まっていた。メカもキャラも、中間形態が先に決まるんだな。まあ、どうでもいい話だけど。

それで、ロマンアルバムの近藤さんインタビューを読んでいただくと、『ポニョ』の男女関係のベーシックには『ライアンの娘』がある、と。自由奔放な娘を、男は最後には許して受けて入れていく。『ライアンの娘』は70年代の映画で、TSUTAYAに置いてあると思う。
『ポニョ』は一種、躁状態の映画だ。それに比べると『ライアンの娘』はぐっとシビアで沈痛な映画。海沿いのアイルランドの寒村で、酒屋の娘のロージーが生真面目な教師と結婚する。ところが、彼女は新たに村に赴任してきたイギリス人の少佐とあっさり恋に落ちてしまう。「恋に落ちる」というか、いきなりキス、二回目でセックスですよ。ロージーと少佐の間には、会話らしい会話すらない。情欲、肉欲オンリー。
ロージーはイギリス兵と関係したことから無実の罪を着せられ、村人からリンチに合う。彼女の浮気に深く傷ついていた夫は、ボロボロになったロージーを見て、二人で村を出ていくことを決意する。これは、単純なハッピーエンドではなく、二人を見送る老神父は「先のことは、分からん」と呟く。これは、宮崎駿が久石譲に宛てたメモ中の「不安定で、先が思いやられる状態で映画は終わりますが(以下略)」に符合する。
『ライアンの娘』には時代状況が絡んでいるし、死者も出る。でも、ロージーは周囲のことには全く関心がないし、崇高で観念的な愛なんて知らないわけだよ。快楽を知り抜いているだけであって。ポニョだって、「宗介、好きー」しか行動原理ないもんね。スキンシップしかない。
だからね、肉体と肉体の関係を、こんな視覚的快楽重視のアニメで表現してしまった『ポニョ』は淫靡で背徳的で当然なんだ。そして、肉体だけのつながりが愛ではないとは誰にも言い切れず、淫靡な関係が悪いとも言えないわけですよ。
まだまだ、僕らには知らないこと、分かってないことがいっぱいあるんだ。

監督がどこまで意識的だったのかは分からないけど、『ポニョ』は、激しくモラルを揺さぶる 映画になった。
080823_23220001_2(←ロマンアルバムより。こんなエロいキャラを、子供に見せてはいけません)
やっぱり、世の中は清濁交じり合って成立している。聖と俗の両方がないと、世界も人も成立しない。

(それとは全く関係ないのだが、結婚している頃、妻と通じる唯一のギャグ・ネタだったオカマの宮崎留美子さんが、なんと近所を歩いていた。とっさに妻にメールしようとしたが、離婚後二年半、音信不通の果てのメールがオカマかい!と我にかえり、メールはしなかった。オカマを見ないと妻のことを思い出せない俺も、どうかと思う)

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2008年8月11日 (月)

■『うる星やつら』に関する、ある挫折■

EX大衆 9月号 発売中
Scan20002
●優木まおみ グラビアポエム
●愛ドルのリコーダー 坂本りおん 妄想ポエム館
●マクロスF徹底攻略!

グラビアポエムは毎月のことだけど、最後の「マクロスF徹底攻略!」は旧作と新作の似たシーンを比較……というミニ特集ですね。濃いマニアからは「だからどうした?」と言われそうだけど、読者に合わせて記事の方向・深度を変えられないとね。
実はこの雑誌で『マクロス』やるのは二度目なんだけど、その時は河森監督や飯島真理さんのインタビューを入れたりして、お堅くやりすぎた。

招待券をいただいたので、銀座松屋へ「高橋留美子展」を観に行く。めちゃくちゃ人が多く、絵の前に立ち止まることが出来ないほど。でも、カラー原画にエアブラシが使ってある080808_14250001_2のを見て、高校時代、『うる星やつら』のイラストを描いていたことを思い出した。70~80年代、エアブラシはハイテクの象徴だった。スーパーリアリズムはもちろん、SFXの現場でも欠かせない魔法の道具で、憧れのアイテムだったんだ。星型のマスクを切って、ラムちゃんの後ろの背景をボカして描いたりした。中毒レベルの『うる星』ファンだったんだ。
だけど、同じ『うる星』好きの友人が、高橋留美子作品の18禁同人誌を集めているのを見て、すさまじい嫌悪を感じた。さらに初の劇場映画『オンリー・ユー』の試写会が追い討ちをかけた。ラムちゃんのブラジャーが外れるシーンで、一斉にカメラのシャッター音がしたのだ。「俺は、お前らとは違うぞ」と叫びたかった。
でも、あのシーンで写真を撮った連中が悪いんじゃない。そんなシーンをつくった押井守が悪いんでもない。ただ、僕と『うる星』の「関係」は、その夜に終わった。
翌日、ファンクラブの会誌から原作本、レコードから文具から、何もかも売っぱらって、二度と『うる星』、いや高橋留美子作品には近づかなかった。そんな複雑な思いも、「高橋留美子展」会場で僕の足を急がせた理由のひとつだろう。
思春期に漫画やアニメに熱中していれば、誰でもひとつやふたつはそういう過去があるんでは……と思うのだが、意外や挫折経験は耳にしない。

それも道理で、たいていの人は深く踏み込む前に、自分でも気づかぬほど小さな挫折を通過して、あっさりと漫画やアニメから手を離したり、自然に距離をおいたりしてきたのだ。
結局、ジャンル・国籍を問わず実写映画を一日に3~6本観るという生活を経た後、ある映像制作会社で『ジャイアントロボ』の冒頭10分ほどを見せられて、アニメという表現に再び強い興味がわいた。
今年、仕事の資料として『うる星』のテレビ版最終回と劇場版完結編を初めて観た。その時の感覚は、インポテンツに近かった。あるいは、疎外感といってもいい。あらゆるアニメの中で『うる星』に対する感情だけが、ぽっかりと空洞になっている感じ。
だけど、そんな事情と関係なく読者に記事を提供できるから、俺はこの稼業で食っていけてるのだ。「好き好き大好き」だけじゃダメだと思う。何ごとも。

余談だが、二日かけて『ギャラクティカ/シーズン2』全20話を一気に見た。シーズン1は話の方向性がバラバラで抽象的な部分もあったけど、シーズン2はがっちりと「事実」だけを積み重ねていく。その正攻法のドラマづくりが頂点を迎える第9話では、声を出して泣いてしまった。「熱い」のではなく「厚い」ドラマ。シーズン2の放映は9/17から。まだシーズン1を見てない人、北京オリンピックなんて見てる場合じゃないぞ。

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2008年8月 7日 (木)

■キキ、今年32歳■

オトナアニメ Vol.9 明日発売
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●『マクロスF』クロスレビュー
●河森正治年表
●『マクロスⅡ』レビュー
●『鉄腕バーディー』 出渕裕×植田益朗 対談

河森さんの年表は主観丸出しで書いたので、けっこう直されてるかも。あと、『CONTINUE』に書いたせいか、『マクロスⅡ』は僕のところに回ってくる(笑)。けっこう、見ないで黒歴史とか言ってる人が多いような気がするんだよな。

昨夜は五歳上のオッサン一人誘って、『ポニョ』二回目。いやはや、やっぱりスゴイ。宮さん飛ばしすぎ。どこにでもありそうな港町に、フジモトみたいな魔法使いが平然と住んでるところからして、もう空前絶後の異世界だ。日常と魔法が地続きなんて、これほどアニメ向けの世界はない。
080807_14350001ポニョ』を「常識に欠ける」と批判する人が多い。作品に合わせて自分のチューニングを変えられない人が、こんなに大勢いることに俺は驚く。「海水で暮らしていたポニョを真水につけたら死ぬはず」とかさ。俺も小さい頃、海でつかまえたカニを飼育しようとして、うっかり死なせてしまったものだ。それは実体験や親が教えるべきものであって、アニメに頼るもんじゃない。「宗介の母親は、乱暴な運転をしすぎる」とかさ。あなたが日常で安全運転すれば、それですむ話でしょ。作品を矮小化して、自分の目線にまで引きずりおろしてる人が多い。変幻自在に物理法則の変わる世界を敢えて手間暇かけてつくっているわけだから、見る側にも柔軟性がないとあかんのですよ。
『ポニョ』に限らないけど、エンターテイメントやフィクションに対して、被害者ヅラする人が増えた気がする。映画専門のクレーマーみたいな人がいるよね。自分の人生がつまんなきゃ、そりゃ何を見てもつまんないよ。……と、小言はこれぐらいにしておきますか。
「他の映画はどうだか知りませんが、今回はこれで最後まで行かせていただきます」というワガママっぷりでは『CASSHERN』に匹敵するし、目玉をくすぐるような視覚的快楽も含めてアンモラルな内容だと思うし、『ポニョ』嫌いな人は、その背徳性に怒ってるんじゃないだろうか。
ゾクゾクするような官能的な『崖の上のポニョ』、俺は大好きですよ(『ポニョ』が参考にした映画は、8月下旬発売のロマンアルバムの近藤勝也氏のインタビューで明かされるはず)。

ところで、リサが『トトロ』の歌をうたうのは、『トトロ』はもうクラシックになった(現役をしりぞいた)という、作家の表明であるような気がした。ちょうど20年だからね。あと、「どんな不思議なことが起きても、あとで分かるようになる」みたいなこと言ってたのは、やっぱりリサは成長したキキだからじゃないかと思う……『魔女の宅急便』が89年公開だから、今年でキキは32歳なんだよ。五歳の子がいても不思議じゃない。キキも自転車二人乗りで暴走してたし……。

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2008年7月28日 (月)

■アニメージュでキラッ☆■

アニメージュオリジナル 本日発売News080728_02

●なぜマクロスFはこんなにも面白いのか? 構成・執筆
●りょーちも、鉄腕バーディーを描く 構成・執筆

『マクロスF』は全24ページで、第12話のメイキングがメイン。特に「星間飛行」の振り付けの原画を、出来るだけ「多く」「大きく」載せてます。キラッ☆に関して、前にも後にもこれだけこだわった特集はないはず。何しろ編集に「キラッ☆が多すぎるのではないか」と止められたぐらい。
河森さん×吉野さんの対談は「最初はこんなつもりじゃなかった『マクロスF』」と題し、なるべく本音の部分を語っていただきました。『マクロスF』という作品に違和感のある方は、何となくヒントがつかめるのでは……。
080728_16070001_2 とにかく、メイキング記事であるけど、キラッ☆ですね。これでもう後悔はない。オリジナルのキラッ☆を堪能してください。サテライトさんの全面協力に感謝します。必見!
『バーディー』の方は、とにかく「りょーちもさんの絵を見たい、載せたい」一心でした。ラフスケッチのなかには「どこがバーディーなんだ」という絵もあるけど、絵として魅力的なら載せてしまおう、と。『ノエイン』以来の片思いですよ。有田シオンの原画もかわいいじゃないか、大きく載せようと(でも、りょーちもさんのインタビューの最後の方で句読点が消えたり、太字処理がなくなったりしてるんだけど……こういうの、全部ライターのせいにされるんだよなぁ)。

アニカンFREE VOL.58 配布中
●2008年夏、Production I.Gの攻勢
これは、元「押井塾」の黒澤亘さんと藤咲淳一さんの対談です。これは面白いですよ。特に『スカイ・クロラ』と『RD 潜脳調査室』のロケハンの規模の差とか(前者はポーランド、アイルランドに二週間、後者はサイパンに3泊4日)、普通はメーカーチェックで切られるようなところが、ちゃんと記事に残っている。特に、藤咲さんの話が最高に面白かった。

『アニメージュオリジナル』は、錚々たる執筆陣で濃くて濃くてしょうがない本だけど、僕は飽くまでチャラチャラ部隊というか、大人向け雑誌なのにキラッ☆だったり、そういう担当なんだと改めて思った。他誌の『ボトムズ』の特集でも、ココナの画像をなるべく載せたり……みんなが右を向いているとき、なるべく俺は左を向いていたい。
昨夜、アニマックスで『うる星やつら』の第一話を放映していたけど、ようはあれにガツンとやられた体験が『ガンダム』あたりより、よほど大きかったんじゃないかな。あの頃は『うる星』のサントラをエンドレスに流して、原作マンガを一日中読みふけるというアヘン中毒者のような生活をしてたから。だから、アキバの人たちがグッズ集めたりPCゲームに泣いたりする気持ちは、ぎりぎり分かる。『ポニョ』でも、宗介のママと人間化したポニョに色気を感じたし(さすが近藤勝也さん。カットは宮崎監督が全部手を入れてるけど、原画を仕上げるのは近藤さんだったそうです。作監だから当然といえばそうなんだけど)。

『マクロスF』12話は、今の陰謀話になる直前の一番ハッピーなエピソードだったんだよね。昨夜見直したら、プロットはご都合というか仕掛けが丸分かりなんだけど、作画と歌に賭けている。理屈じゃないんだ。あの幸福感を誌面にこめることが出来て、チャラチャラ部隊としてはミッション成功ですよ。本当に幸せな仕事だった。

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2008年7月15日 (火)

■久美子vs里依紗■

EX大衆 8月号 本日発売
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●愛ドルのリコーダー 由梨亜 ポエム執筆
●小倉優子 グラビアポエム執筆

リコーダーの方はもう7回目だから、ちょっと方向性を変えないと。小倉優子さんの方は、前に小倉さんが出たときの続きっぽい内容で。
池田憲章さんのラジオで喋った影響か、あちこちでグラビアポエムのこと聞かれるんだけど……先日、別件で双葉社に行ったら、「でもさ、こういのうは新入りの編集者が無理やり書かされるんだよね、ふつうは」。俺の前で言うなって。でも、まだまだ上手がいる。グラビアポエムの世界には。

シネマシティ立川のレイトショーに行く寂しさは、半端ではない。080714_22500001上映後は、それこそ数人の客しかいないし、駅までの歩道は人通りも少ない。この薄ら寒い雰囲気は、嫌いじゃないんだ。

昨夜観たのは『純喫茶磯辺』。もちろん、仲里依紗目当てで。
てっきり『かもめ食堂』みたいな路線かと思ったら、ギラギラした中年(それもバツイチ、キャバ好き)への応援歌になっていてビックリ。
麻生久美子が(中年男の)女への妄想を最高潮まで高めておいて、地面に叩き落す。鼻血は出すし、下ネタは言うし、性格破綻してるし……そして、最後にちょこっとだけ「女」の株を持ち上げる。でも、その持ち上がった部分は、主人公の宮迫博之には伝わらない(その辺り、シナリオが上手い)。何しろ、宮迫の麻生への態度が、キャバ嬢とじゃれ合うシーンとほとんど変わらないのが素晴らしいね。普通はいい芝居を入れてホロッとさせるもんだけど、ずーっと軽薄なまま。

でも、麻生も勝負に出たけど、この映画では仲里依紗に軍配が上がった。
憧れの男に幻滅してから(この映画は幻滅してばっかだな)、一気に一年ぐらい老ける。表情から声の出し方から、ぜんぶ変わる。それは演出やメイクもあるだろうけど、やっぱり17~18歳という肉体を、仲里依紗が持っているから。その歳でないと、女優は一本の映画の中で、ああも変われるはずがない。10代というのは、やっぱり凄い。
今年70歳のミッキー・カーチスが素晴らしい役をやっていたし、エンディングがCKBというのも納得の、オッサンのための映画だけどね。この世に女神はいないけど、いるつもりで頑張れ、と。

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2008年7月12日 (土)

■『ポニョ』と『ポニョ』以外のすべて■

アニメージュ 8月号 発売中
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●『崖の上のポニョ』インタビューまとめ×2本
ラジオ「談話室オヤカタ」で、「アニメ誌に書いたことがないライター」と面白がられていた私も、とうとうアニメージュに。と言っても、他の人が聞いたインタビューを、他の人がベタ起こししたものを文字数以内にまとめただけですけどね。献本がなかったら買うつもりだったので、送ってもらえてありがたい。

「――それほどまでのことをしなくてもよさそうなものなのに、あえてそんな工夫がしてあるような代物だからね。しかし、そんなものである以上、他のものでは有りようがなかったわけだ。」(稲垣足穂『放熱器』より)
『崖の上のポニョ』を見て以来、何となくこの辺りの言葉が頭を漂っていた。こうして書き出してみると、やっぱりちょっと違う。でも、「これ以外の方法では、もうつくることが出来ない」というレベルにまで来てしまった作品。
例えばテレビで『ゲド戦記』がやっていたけど、アレンが塔から落ちそうになるカット。「あと百通りぐらいの見せ方があるな」と僕でさえ思ってしまう。つまり、絞り込めてない。
うろおぼえで悪いけど、岡本太郎だったと思う。「色ではない色を塗れ、形ではない形をつくれ」、そういうレベルに『ポニョ』は達している。『トトロ』に「私たち、風になってる」というセリフがあったけど、『ポニョ』はそこをセリフにしない。いきなり視覚化している。
かっきりと、『ポニョ』と『ポニョ』以外の映画、という区分けが頭の中に出来てしまった。ひょっとしたら、意外に通好みの作品になっているのかも知れない。

『魔法遣いに大切なこと』、ますます良い。何たってムーンライダーズだ。「9月の海はクラゲの海」だ。アニメでこの曲が聞けるとは。キャラクターも、みんないい。井上麻里奈のキャラも期待通り。セリフ回しが良かった。
あとは大林宣彦『あした』。ちょっと昔の映画だが、女優を脱がす脱がす。古いほうの『転校生』でも、小林聡美を脱がしてましたけどさ。オッサン、脱がせすぎだろう。椎名亜衣という女優が良かった。映画初出演で、これといって必然性のないヌード。でも、顔が好き。ペ・ドゥナに通じる間抜け顔の美人。宝生舞も良かった。オッサン、嵐のように女優出す。原田知世まで容赦なく出す。もうちょっと、最近のオッサンの映画も見てみるか。
テレビドラマは『ギャラクティカ』以外は見ないたちだが、永作博美のために『四つの嘘』を見る。夜食がカップやきそばってのが不健康でいいね。永作は自分を捨てている。捨てることで、ますます永作になってしまう。そういう女優、表現者が好きだ。

『ポニョ』と『ポニョ』以外のすべて――という考え方をした時、ふっと押井守監督の『勝つために戦え!』の一節が思い出された。「人生にはルーティンすらない、原則もない。全てが例外なんだから。一人一人が違うというのはそのことを言ってるんだから。」
この考えに納得がいくから、俺は映画に点数をつけたり、順位をつけることに嫌悪を感じるのだな。

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2008年6月23日 (月)

■次の曲がり角■

Virtual Walker 創刊2号 27日発売予定
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●TV情報欄
●映画情報欄

後者は『スカイ・クロラ』レビューと、押井作品4本の紹介。TV情報欄には『鉄腕バーディー』の情報も書いたんだけど、これは編集氏の指示だったか自分で希望したのか、ちょっと覚えてない。来週試写だけど、どうなったかなぁ。

旅行中に録りだめしてあった『アクビガール』を見て、あいかわらずご都合主義でオチがないのに、やっぱり泣いてしまう。
080622_20340001(←これが、沖縄で買った琉球アクビのステッカー。このパラダイス感が、アニメのイメージにフィットしていると思う)
なんでこんなに泣けるんだろう、と考えた。『アクビガール』で泣く僕の感性が優れているのではなく、『アクビガール』という作品が特に優れているわけでもなく、単に、僕と作品の「出会い」「関係」が素晴らしかったのだ、としか言いようがない。
作品に点数をつけたり、頭ごなしに酷評する人は、実は作品と出会ってすらいない。自分を完璧だと思っているので、作品と「関係」なんて築けるわけがない。欠落を認め合わなくては、作品を愛せないし、愛されない。
脚本が良くない、演出が最悪、音楽もセンスなし……えんえんと続く作品への酷評は、実は自分への恨み節なのだと思う。自分の欠落を一切合財、相手になすりつけているだけじゃないだろうか。

臨死体験できるドラッグを探し回るロードムービー、『図鑑に載ってない虫』は下品なギャグも含めて、キュートな映画だった。途中で、「どうせ、なんかマジメなオチが待ってるんでしょ?」と気がついて、事実その通りだったんだけど、だからこそ愛らしい。常に「意外なオチ」が偉いなんて、誰が決めた?
この映画では「極楽」という言葉が出てくるけど、僕の好きな言葉を使うと「楽園」を捜す旅。すべて。映画やアニメを見るのも、人と会うのも仕事するのも、酒を呑んだり笑ったり泣いたりするのも、すべて精神的楽園にたどり着くための道程なのだと思う。
作品を見ることは、いつもは曲がらない角をちょっと折れてみるのに似ている。そこに何かあるかも知れないし、ないかも知れない。何もなかったら、次の角を曲がればいい。なぜなら、まだ旅の途中だから。

あまり関係ないけど、今週の『マクロスF』(第12話)がスゴイよ。ひさびさに「萌え~」という言葉を思い出した。やっぱ、アニメってすげえ。段取りやシナリオ上の約束事を重ねた上での「萌え」なんだけど、確実に理屈を越えた何かを語りはじめている。この番組を作ってきたスタッフの積み重ねと、見てきた視聴者の積み重ねがピタッと重なる。こんな幸福でいいのかな、とさえ思う。必見。

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2008年6月16日 (月)

■沖縄前夜■

CONTINUE Vol.40 明日発売
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●『超時空要塞マクロスⅡ』レビュー
●『マクロスダイナマイト7』レビュー

最初、編集さんからこの話が来たとき「他のライターさんが希望しなかった作品のレビューを引き受けます」と返事した。愛されない作品を愛するのは、俺の必殺技だから。そしたら、『マクロスⅡ』が来た(笑)。「続編」としては愚直なほどに良心的な作品なので、いずれまたどこかで取り上げたい。
もう一本の『ダイナマイト7』は、実は『プラス』あたりより成熟度が高いと思う。『プラス』は大人のドラマというよりは、青春モノだと思うんだよな。

EX大衆 7月号 とっくに発売中
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●名作アニメ最終回 誌上再放送25
●愛ドルのリコーダー 安藤成子 ポエム
●山崎真美 グラビアポエム  
●相澤仁美 グラビアポム(袋とじ!)

「名作アニメ最終回」は、もう3回目。人気企画なんだけど、古いアニメは発掘して見るまでが大変なんだよなぁ。ソフト化されてなかったりするので。
あと、グラビアポエムに関して某局から取材の要請が来ているとか聞いたけど、いまだ連絡なし。取材、大歓迎なんすけど。

グレートメカニックDX5 本日発売
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●富野由悠季 ザクを語る(インタビュー構成)
●ザクプラモの歴史
●ザクがもたらしたロボットアニメの変革
●ギャラクティカNOW
●『ブレードランナー』ファイナル・カット レビュー
●オヤヂ酒場DX

「オヤヂ酒場」のネタは、『マクロスF』と『亜空間漂流ガルダス』と『河童のクゥと夏休み』という異色三本立て。今回から、意識して辛口モードへ。
「ギャラクティカNOW」は、国内での『ギャラクティカ』の動きをなるべくお伝えしていくというコーナー(俺は連載のつもりなんですけどね)。いくら地上波でやっていないとはいえ、『ギャラクティカ』は10年後に見ては遅すぎる作品。「今」を描き続けるこの作品の切迫感・危機感は、巻頭特集の富野監督インタビューとも、かすかにリンクしている。ザクには富野監督の歴史観が表れている。世相を反映しないフィクションはあり得ないのだ。

青少年ネット規制法の成立、児童ポルノ法の厳罰化、人権擁護法案……これら耳ざわりのいい怪しげな法律によって、5年後には「思想・言論・表現の自由」なんて言葉は、死語と化しているかも知れない。
080614_00470001_2『ギャラクティカ』には、以下のようなセリフがある。査問会で嫌疑をかけられたアダマ艦長が、委員長に言い放つ。「君は見失っている。法の本来の目的をな。法は人を守るもので、吊るし上げるものではない。以後、われわれに残された道が何であれ、これよりはマシだ」
フィクションを通して、現実を見よ。現実から得たものをフィクションに落とし込め。快楽原則にのっとった萌え系アニメでさえ、現実と無関係ではいられない。鬱屈した中高校生が異性と隔絶している以上、『To LOVEる』だって現実と絡み合って存在している。現実と不可分なものを安易に規制すれば、歪みは必ず生じる。
あらゆるフィクション、あらゆる表現は理不尽な国家と戦うための、最も強力な武器である。

ちょっと唐突な話をしてしまったが、明日から3日間、沖縄へ。

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2008年6月 7日 (土)

■予定調和の何が悪い?■

月刊「創」 7月号 発売中
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●日テレ、TBS、フジを中心に映画事業本格化 今や最大の製作会社TV局の課題
●星野康二(スタジオジブリ代表) インタビュー記事
●押井守(「スカイ・クロラ」監督) インタビュー記事

年に一度の映画特集ですね。押井監督インタビューは、「どうして声優でなく、俳優を使わざるを得なかったか」の部分が面白いと思う。このインタビューに関しては、11日配信のラジオ「談話室オヤカタ」で、裏話というほどじゃないけど、どんな様子だったか話してきた。とにかく話のネタとしては本当に最適の映画だし、ひさびさにドラマであるとかセリフであるとか演技であるとかについて語れるアニメ。

昨日は、所沢の古本まつりへ。帰宅後、猛烈に眠かったけど『アクビガール』だけは何とか見たんだよな。5分なら起きていられるから。
080607_03480002今回も良かった。で、このアニメの何がいいのか漠然と分かってきました。主人公の女の子(るる)が、男の子(いとしクン)に恋をしていて、アクビはるるの恋のキュービットになるべく魔法を使う。でも、いつも魔法は失敗してしまい、るるは大あわて……それが毎回のパターン。
アクビの魔法は失敗するんだけれど、いとしクンの寛容さや勘違いによって、るるの恋は「毎回、必ず」救われる。というか、るるはいつも「いとしクンと仲良くなりたい」と言っているけど、物語開始時点で二人の恋はすでに成就している。このアニメは、るるの得恋ラブラブ状態を描いているに過ぎないのだ。アクビは、るるの恋があたかもピンチ状態に置かれているかのように見せかけるためのトリックスター。だから、アクビの失敗は常に許される。
『アクビガール』の世界は祝福されているのだ。寛容と慈愛に満ちている。どれだけ失敗しても、見えざる神の手によって「ほら、これで元通り」と修復される世界。そんな優しい甘ったるい予定調和の、何がいけないっていうんだ。この物語の主人公の名前は「夢見るる」。たった5分間の夢なんだよ。

……まあ、そんなことをレンタルも始まった『ギャラクティカ』を見ながら考えた。
080607_05120001_2ミリタリーSFの装いで始まったこの物語は、少しずつ予定調和によって侵食されていく。人造人間であるはずのサイロンが、すべての出来事を「神の計画」と呼びはじめるのだ。実際、人類を裏切ったバルター博士が当てずっぽうで「神」に祈ったとたん、偶然に偶然が重なって、主人公たちは窮地を脱してしまう。最前線に立つギャラクティカの面々は、サイロンの「神の計画」など知るすべもないというのに。この薄気味悪さも、また『ギャラクティカ』の抗いがたい魅力のひとつだ。
いまや「論理的に説明のつく客観的事実」(バルター博士のセリフより)の世界に、われわれは住んでいない。だから、どんなに不条理であろうと「神」や「予定調和」が物語に介在した方が納得できるというか……努力によって克服される物語は、もはやリアリティを持っていないと思う。この何十年か有効だったフィクションの常識が通用しなくなってきているんじゃないだろうか。

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2008年6月 5日 (木)

■アクビの魔力■

『空の境界 伽藍の堂』 パンフレット
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●メイキング・ページ 構成・執筆
折り返し点、第四章(よくクビにならずに続けさせてもらえたなー)。なんと、監督と作監を兼ねた滝口禎一さんが自ら描いたカット……と、こういう情報は一番最後に分かったりするのだが、なんと8枚もセルを重ねてある。「凝った作画」=「動きの派手なカット」と考えがちだが、そんな単純なものじゃないんだ、と勉強になった。

ところで今、『アクビガール』を毎日見ている。『よばれてとびでて! アクビちゃん』じゃなくて、金田朋子さんが声をやっている5分番組。
080605_01490001たまたま見ていて、「あれ? この声、金朋さんじゃないの?」と思ってから、もう一日に一度は見ないと気がすまない。別に熱烈な金朋さんのファンじゃないけど、この人が出ていると、たいていのアニメは許せる。
「たまたま見ていて」というのは実はウソで、「日経キャラクターズ!」の取材で「今、タツノコアニメのグッズが若い女性に人気」というのがあったんだ。商品開発担当者(男性)がノリノリで。おっさんをもトリコじかけにするアクビの魔力。それを確かめたかった。
『アクビガール』は、まず背景の絵がいい。ファンシー。脳裏に「ジュニアそれいゆ」という誌名が浮かんだが、それは古すぎる。俺、『キャンディ・キャンディ』が好きで「なかよし」買っていたから、そっちの乙女回路が作動したんだろうな。
あと、ストーリーがないところがいい。主題歌で数十秒、アクビの決め台詞で20秒近くとられるから、物語は抽象的にならざるを得ない。原画マンは一人らしいのだが、作監はいる。制作進行は3人もいる。クレジットの都合でそうなっているんだろうけど、気になるよね。

金朋さんには二回インタビューしたことがあって、二度目は10人ぐらいの声優さんに面接形式で話を聞いたんだけど、金朋さんは一番最後にしてもらったんだ。話が長いから(笑)。
それはともかく、『アクビガール』って批評眼を持って見ることのできないアニメなんだ。なぜなら、短すぎて批評眼を持つ前に終わってしまうから(笑)。もちろん、このアニメを見て得るものなんかひとつもない。何かを「得る」というのは消耗することでもある(先日、『コードギアス』を見ていてマジ泣きしてしまったんだけど、それを消耗と言わずして何という。感動とは消耗である)。『アクビ』は見ていても消耗しないわけだから、癒される一方だよ。そういう卑怯かつ甘美な関係って成立しうるんだな、と不意に思い出した。恋愛もそうだし、子供の頃って過剰に得したり損したりするよね。

ところが、ある程度の歳になると物語(作品)にギブ・アンド・テイクを求めるようになる。例えば二時間の映画を見せるなら、ちょっとは笑わせてくれ、泣かせてくれ。分厚い本を読ませるんだから、せめて知識欲は満足させてくれ、とか。
『アクビガール』は、そんな大人のルールから逸脱している。綺麗、かわいい、笑える。こちらがギブするものは何もない。ソフト・ドラッグみたいなアニメだ。なんか不安になってきたので、社会性・宗教観・倫理観がとことん試される『ギャラクティカ』でも見よう。『ギャラクティカ』は、面白い代わりに疲れるからな。

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2008年5月29日 (木)

■ラジオ、腑抜けども、ギャラクティカ■

機動戦士ガンダムの常識 発売中
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●30本ばかり、記事執筆
コンビニで良く売ってる500円本で『ガンダム』をやっちゃおうという企画で、「だいたい、ひとつの記事について1時間ぐらいで書けるだろう」という読みは甘すぎた。「トミノメモ」とか「アニメ新世紀宣言」とか「ガンボイ」とかそのへん担当だったので、出典が当時のアニメックだったりする。もう、『ガンダム』は常識がどこにあるのか、分からん……マニアの方は、いろいろ突っ込んでください。

やっと休日というか何も予定のない日が出来たので、のんびりと池田憲章さんのWebラジオ「談話室オヤカタ」に出演させていただく(放送は6月11日と18日)。過去の番組を聴くと、業界の偉い方々ばかりなので「なんで私が?」と思っていたのだが、非常にリラックスして楽しく話せた。自分には確固たる肩書きもないし、一貫性もない。そこが逆に面白がられたみたい。モデラーからライターになるまでの話もしたのだが、そこで何か決意したわけでもなければ覚悟したわけでもない。ただ、現場をしのいできただけだ。
よく凝りまくった名刺をつくってギッシリと肩書きを刷る人がいるが、僕の名刺はシンプルだ。連絡先さえ分かれば仕事は出来る。
やったことの結果は受け入れていくし努力もつづけるが、自我は殺したい。

永作博美目当てで『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』を見たんだが、なんと30歳すぎても処女で、色気のかけらもない人妻の役。髪形も服装もダサくてしょうがない。でも、そんな役を引き受けてしまう永作の自我の希薄さに憧れる。
たとえ自分の名前を忘れてしまっても、自分が自分であることから脱することは出来ない。その一種の諦めが、人間を洗練するのだと思う。
人通りの途絶えた夜中近くの駅前へ出て、TSUTAYAで映画を選ぶ自由さは、なんと素敵なことだろう。店内には、まだ何人かの客がいる。こういう時間は、たいてい一人の客ばかりだ。平日の夜中から映画を観ようとする人たちには、どんな理由があるのかな、と想像してしまう。
『腑抜けども~』の舞台は携帯の電波さえ届かない田舎だったけど、だからこそ人間の“濃さ”が際立つ。逆に、都会は一人あたりに与えられた面積が少ないから、その分、「窓」としてのフィクションが必要なのかもしれない。

そういえば、宣伝会社から『ギャラクティカ』のTシャツを送っていただいた。
080529_10350001_2この地味なデザインが、作品のすべてを表している。無駄な自己主張がない。それが『ギャラクティカ』の魅力だ。