■マルタ旅行記-10(完)■
■11/8-1 聖アンジェロ砦、13ユーロ
ヴァレッタのホテルをチェックアウトするとき、レセプションの男性が笑顔で握手を求めてきた。彼は、いっさい挨拶を返してくれなかった女性の旦那さんらしい。この男性は、他の客と話しているときでも首をひょいと伸ばして「ハロー!」と挨拶してくれた。それだけで、機嫌よく出かけることができるわけです。
9時ごろに空港に着いて、「Luggege Deposit Service」と書いたメモを見せて「どこですか?」と聞くと、インフォメーションで受け付けてくれるという。しかし、手続きにはけっこう時間がかかるので、早めに戻ったほうがよさそう。料金は荷物を受け取るときに払う。
10時に2番バスに乗り、ヴィットリオーザの街へ向かう。10時35分、Birgu Centre下車。バス停すぐのところに海事博物館がある。
今はとりあえず、岬の突端にある聖アンジェロ砦へ向かう。
なんでこうやってスタスタと目的地が決まるかというと、主要な観光地の地図を日本で印刷して持ってきてあり、ホテルでどこをどう回るか考えてあるから。だけど、目的地を決めると迷う。何も決めてないつもりでも、日本に戻って元の生活に戻ろうという大きな目的はあるわけだから、いずれどこかで迷うのではないだろうか。
そして、聖アンジェロ砦で13ユーロの入場チケットを買う。三箇所の施設に入れますよ、と地図を渡される。そのうちひとつが、バス停すぐの場所にあった海事博物館であった。
聖アンジェロ砦はパネルと映像を使った、お決まりの展示だったが、マルタ島の複雑な歴史をビジュアルで理解できた。
ヨーロッパとアフリカに挟まれていたため、何度もあちこちに占領されてきたのだ。「イタリアのちょっと先にある小さな島」程度の認識は、覆されていく。
■11/8-2 遊覧ボート、湾内を回る
11時37分、ヨットハーバー近くのカフェでビール。昼ビーは旅行の醍醐味。
1.5ユーロ、良心的な価格。しかし、よく聞きとれず、「えっ、4.5ユーロ?」と聞き返したら、ダニー・デビート風の店のオヤジさんが「オーマイガッ!」と肩をすくめたので笑ってしまった。
さて、ヨットハーバー近くに遊覧ボートの乗り場があった。ヴァレッタまで2ユーロ、湾内を回ると8ユーロだという。じゃあ、湾内を回るほうで、と言ったら、他に希望者がいない。やむなく、片道でヴァレッタで降りる客たちと同乗することになった。
小さな船なので、荷物を真ん中に置くように言われる。向かいに座っていた陽気なおじさんが「写真撮ってあげるよ!」 三枚ほど撮ってくれる。
「君、泳げる?」「いえ、泳げないです」「大丈夫、溺れたら助けてあげるから。代金は2ユーロでいいよ!」と、気持ちよく笑う。いーなあ。こういう歳のとり方をしたい。
他の人たちはヴィクトリアで下船するのだが、さっきのおじさんは「君は降りないの?」と声をかけてくれる。僕は湾内一周なので、このままボートを操舵するお兄さんと2人きりだ。お兄さんは、明らかにめんどくさそうで終始無言。やや気まずいムードとなる。
降りるとき、料金8ユーロだと思って10ユーロ札を渡すと「16ユーロだよ?」とお兄さんに言われた。ひとりで乗ったから倍額なのだろうか。なぜか「15ユーロにしとくよ」と、1ユーロ余分に返してくれた。それでも、スリーマで乗った大型フェリー90分5都市巡りツアーの11ユーロより、4ユーロも高い。ボラれましたね。
さて、せっかく三箇所を回れるチケットを持っているのだから、海事博物館を目指す。しかし、戦争博物館なら目立つのですぐ分かるが、海事博物館の場所を見失ってしまった。戦争博物館の受付のお姉さんに場所を聞いたが、関係ない橋を渡ってしまったりして無駄に歩き、結局はバスに乗って最初のバス停で降り、海事博物館に入場。大小の船舶のエンジンなどが展示してあったが、ゆっくり過ごしたいので、サッと回って出てきてしまう。
どうも「博物館」という施設とは相性が合わない。僕がアホなだけかも知れないが。
■11/8-3 純度の高い「他者」「よそ者」
海事博物館を出て、バス停の見える広場のカフェへ。14時ぐらいだ。ここならすぐバスに乗れるし、何より静かで落ち着いている。
ビール2本とハンバーガーで、12.50ユーロ。
忙しくあちこちを回った旅だったが、海外にいる間、僕は純度の高い「他者」「よそ者」になりきれる。それぞれの社会の端っこに引っかかりながら、「あそこへ行きたい」「ビールを飲みたい」「船に乗りたい」自分を肯定し、目的のための手段を考えることができる。
その具体的な「手段」の段階で、壮大に道に迷って無駄に歩いたりするわけだが、そこで人に助けられる。そのとき“初めて”人と出会い、他人との関係を結びなおしているような気すらしてくる。
■11/8-4
16時、ヴァレッタを経由してマルタ国際空港に到着。出発の4時間前。
荷物の預かり代は16ユーロだったが、なぜか現金しか使えない。しかも、インフォメーションにいた女性たちは紙幣ではなく硬貨でお釣りを渡そうとあちこち奔走しはじめた。紙幣でいいのに、なぜ硬貨にしたがるのか、こちらにはさっぱりだ。
「ちょっと待っててくださいね♪」と何度かニッコリと笑いかけられるが、おじさんには愛想笑いとかお追従笑いが分かってしまう。
だけど、責めはしない。「オーケー♪」と、笑って返すのが礼儀というものだ。
(おわり)
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