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2023年6月11日 (日)

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金曜日、アーティゾン美術館「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」。
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鍵岡リグレ アンヌの幅6メートルの大作、これを見るために来たようなものだと納得できた。展示の最後のほうにあった作品だが、すべてをかっさらうぐらいの鮮烈さがあった。
美術館という場所は、文脈や意味を喪失させるために、いわばラリるために行くので、言葉による感想は空しい。また、僕には論評できるほどの知識もない。しかし、3フロアを使った壮大な展示を見られて良かった。


美術館の帰りに丸ビルへ寄ると、7階のオープンエアのテラス席が大幅に改築されていた。
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分かりづらいのだが、簡素な椅子と机だけのエリアは何も買わなくても入れるが、ソファのある豪奢なつくりのエリアは店舗の飲み物さえ買えば出入り自由だと後で分かった。
とりあえず、COEDO 毬花が1000円なのは人件費などを考慮しても高いと思い、東京クラフト(エール)にした。それでも、750円する。お店のお姉さんは「東京クラフトビールですね」と言っていたが、メニューには「東京クラフトエール」と書いてある。メニューを書いた人が、あまりビールに興味なかったんだろうな。クラフトビールと称して東京クラフトしか置いてないと、かえってガッカリする。前に来たときは生ビール(銘柄不明)だったのだが、どうせプラコップだし、それで十分なんだよね。

こういう気持ちになりたくなければ、いろいろ調べて試して、改善していくしかない。自分の好みのシチュエーションを微調整していく。だって、井の頭公園の休憩所では「キリンかアサヒ」「缶か瓶」、その二択だけで十分に楽しいもの。
人生が面白くない人って、こういう、ささやかな好みの部分で妥協している。あるいは、べつに好きでもないものを雑に「好き」と思い込んでいる。つまり、向上心が低い。


翌日、どんより曇っていたが、わざわざ開店時間にあわせて三鷹北口の喫茶店へ行く。二人ほど客が待っていたが、窓際に座れた。
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メニューのクロックムッシュの上から、テープで「アンチョビバタートースト(ピクルス付き)」と貼られていたので、迷わずそれにした。
しかし、「ピクルス付き」で分かるように、完全にワインのつまみであった。でも、それでいいんだよ。確かめずに知ったふりをするよりは、試して失敗したほうが気がすむ。
そのために少し高いメニューを頼むのは、ちっとも惜しいとは思わない。ここで下らない後悔を残すぐらいなら、僕はお金を使う。

窓際の席から道行く人たちを眺めていると、日曜日でデートなのかお洒落な人が多い気がする。たまに、オジサンでも洒落た格好の人がいるので油断できない。ぽつぽつとした人通りを見下ろしていると、この世への愛おしさのような感情が湧いてくる。
……何も後悔はない、自分はよく頑張った。仕事も遊びも、欲張ることができた。いろんな国へ行ったし、何人かの女性にも愛された。1年で20万円もとられる税金のことを考えると重たい気分になるはずなのだが、時にはずる賢く図太く、自分は無理やりにでも乗り切ってきたのだろうと思う。
最初から何もなかったような、そもそも生きてすらいないのだから死ぬわけがない……といった不思議な安心感がある(母の死が大きかったのだな、やはり。死ぬことは母と同じ体験をするわけだから、べつに怖くない)。生まれたくて生まれてきたわけでもなければ、日本政府と契約したわけでもない。最初から何もないのだから、怖いものも無いはず。


最近観た映画は『十八歳、海へ』と『ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録』。後者は何度目だろうか、私財を投げうって終わりのない撮影に挑むコッポラを見ていると勇気が出てくる。ただ、この当時のコッポラは家族と潤沢な報酬に恵まれており、べつに狂ってはいなかったと思う。

ここのところ横須賀への出張が多いので、ホテルのベッドに寝転がって缶ビールを飲みつつ、つげ義春原作『散歩の日々』のドラマもよく視聴している。この作品を原作漫画で知ったときは20代終わりごろの90年代、貧乏アルバイト時代。その苦しい時期に出会った漫画や音楽には、ひときわ思い入れがある。

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