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スーパーマンたちが10代の姿に!何度でも“聴きたくなる”「ジャスティス・リーグxRWBY」豪華声優が参加した吹替版の魅力とは?(■)
ムービーウォーカーに掲載されたコラムです。
自分には、もうこういう短いスパンの仕事は来ないだろうと思っていたら、編集者さんが『RWBY』の日本語版に詳しいライターということで探し当ててくれました。
版権元からの要請を上手くさばいて、こちらへの要求と修正を最低限に抑えてくれて、こんな有能な編集者がいたのか……と、短い納期ながら気持ちよく仕事できました。
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『RWBY Volume.1』の日本語吹き替え版の試写会に呼んでもらったのは、もう8年ぐらい前。
最初は類型的な美少女キャラを並べただけのコミカルなアクション物かと思っていたら、最後のエピソードで、慄然とした。それまでチーム論、リーダー論がストーリーを牽引してはいたけれど、最後はチーム内での人種差別の話だった。
被差別人種のブレイクと、上流階級の令嬢ワイスが対立する。最後に、ワイスは「これからはチームメイトに相談なさい」とブレイクに告げる。ちゃんとチーム論に回収している。しかし、このエピソードではゲスト的にロボット少女のペニーが登場して明らかに異質な存在として扱われるので、人種対立や差別といったテーマは解決するどころか、むしろ深まっているのだ。
テーマだけの問題ではない。
行方をくらませたブレイクを探して歩くメンバーたち。高慢な態度の中にも迷いを見せるワイスの芝居は、モーションキャプチャーを使って細かな芝居を拾っている(「無実なら逃げないはずですわ」と、つまらなそうに呟くところ)。
コミカルな動きの多いアニメなので、さり気ない日常芝居が良いアクセントになる。
ペニーが大活躍した後、すでに仲間のもとへ戻ったブレイク、ペニー(一人だけあぐらをかいているのが可愛い)らのところへ、ワイスが黙って歩いてくる。このラストシーンでワイスとブレイクは和解するのだが、まず停車しているパトカーの絵にかぶせて警察無線がノイズっぽく入り、ワイスの足がフレームインすると同時に、静かなピアノ曲が始まる。
ド派手で子供じみたアクションで始まったのに、情感豊かにひっそりと幕を閉じる大人のセンス。その深い余韻に陶然として、誰とも話したくなくて、ひとりでワーナーの試写室から遠い駅まで歩いた。少し泣きながら帰った記憶がある。「こんな良いものがまだ世の中にあったのか」という驚き、喜びだった。
それ以降、『RWBY』に関ることはすべて僕の個人的体験であり、いかようにも書くことが出来る。
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仕事で、先月末から何度か横須賀美術館へ通っている。泊まりで行っても午前中は時間が自由なので、横須賀中央駅の西側の山を登ってみた。
山に向かう道なので、商店の向こうは空だけだ。日曜だからなのか、ほとんどの商店が店を閉めている。
その静寂の中、DIYのお店が歩道に花をいっぱい並べていた。自分は脳内麻薬物質が過多だと思うのだが、その光景だけでも天国のように美しく、山の上にある横須賀市自然・人文博物館までの道のりが楽しくて仕方なかった。
将来の収入など、いろいろ不安なはずなのに、世界の存在を感じているだけで嬉しい。今日、曇り空の早稲田通りを歩いたけど、風が涼しくて気持ちよかった。雨の日も晴れの日も、ぜんぶ愛おしい。
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最近観た映画は、『ブレイクアウト 行き止まりの挽歌』『さらば映画の友よ インディアンサマー』をプライムビデオで。
原田眞人監督の『さらば映画の友よ』は、二回目かも知れない。観客ほったらかしの支離滅裂な内容だが、『ピアニストを撃て』のような爽快感はない。この10年後が『ガンヘッド』である。
『ブレイクアウト』は、ひさびさに目が釘付けになるほど集中して観られた。ロッポニカという変なブランド名になって、「邦画ってダセえなあ」と当時は失笑していたものだが、いざ見てみると、日活の底力を感じさせる娯楽作だった。
クライマックスは二転三転しすぎるが、パトカーが三台も潰れる派手なカーチェイスがあったりして、ちっとも飽きさせない。車が納屋に突っ込むシーンでは、納屋の中にもカメラを置いて撮っている。
何より感心させられるのは、シーンをまたいで霧雨が降りしきっていること。雨がやむと、地面がしっとり濡れている。当たり前のようだが、時間をかけて計画しないと、こういう撮影はできない。霧雨が、絶望的な逃避行の情感を醸しだしている。何となく晴れ、何となく曇りではダメなのだ。
藤竜也の顔に傷ができて、それが少しずつ治っていく……こういう描写も、技術と段取り、スタッフワークの賜物である(ちなみに、特殊メイクは原口智生さん)。村川透監督のキャリアを、甘く見ていたようだ。ロッポニカ作品=低予算という思い込みもあった。
こと実写映画に関しては、僕の興味は「現場の記録」からどれぐらい離れているか、「現場の記録」から一歩も出ていなくても、それはそれで映画の在りようではないのか……と、その辺りに滞留しつつある。
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