■0423■
先週月曜から三泊四日、神戸~福岡へ撮影と打ち合わせに出かけていた。
最終日は快晴で少しだけ時間があったので、中洲の川に面したテラス席で、ペールエールを一杯やった。これで800円ちょっとなんだから、飲まない理由はない。二日目は仕事しているチームと飲み会だったのだが、その前後は神戸でソロで一杯、福岡市でもソロで一杯。さらに毎晩、ホテルへクラフトビール2本ずつを買って帰って、よくもまあ二日酔いにならず、朝から打ち合わせに出られたものだと思う。
これは、神戸で食べたアボカドの天ぷら。あっさりしていて、他の料理を引き立ててくれる。最後の皿はアスパラの肉巻き串なので、赤ワインを合わせた。こういう組み合わせが出来たとき、自分は勘がよくてセンスあるとも思うのだが、店の選択からして間違う場合もある。たまに読みが外れるから、探したり選んだりする楽しみが生まれるのだ。
上の写真の鶏バルは、器も盛りつけもカッコよかった。他にも、モーニングのために喫茶店をハシゴしたり、仕事の合い間に一人で遊んでいた。
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いま関わっている仕事のチームは、誰ひとり高圧的な人間はおらず、何か月も気持ちよく仕事できている。
一方で、僕は彼らに甘えている、許してもらっているという自覚がある。彼らの中にいると、我がままで乱暴な癖にいじけやすくて悲観的な、自分の核になっている未熟さ・脆弱さが露呈してしまう。17歳ぐらいの頃から、その核は変わっていないようだ。
いつものように一人でいるとき、僕は鷹揚で自信に満ちた中年になり切ることが出来る。だから、孤独ほど高価で贅沢なものはない。
静かな喫茶店に腰を落ち着け、ゆっくりと読書にふける。これから何をテーマに考えようか、いくらでも思索を巡らせることが出来る。行ってみたい海外のこと、仕事にできそうなこと……。店の人に丁寧に接することで、自尊心を高めることだって出来る。
しかし、人の中に暮らしていたら、自分の短気さに苛立って、とても考えを深めることなど出来なかっただろう。焦って、怒鳴ってばかりいただろう。だから、僕は組織に入れない。組織もまた、僕のような半端者を排除することで結束するのだと思う。
他人には期待しない、甘えない、ほどほどの距離を保つ……そうすれば、傷つかずにすむ。
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最近、寝る前にはVTuberのおしゃべりを聞くようになったが、ホストクラブに通う破滅的な女性たち(ホームレス含む)の動画も、よく見ている。
彼女たちは何百万、何千万とホストにつぎ込んで、現金で60万円ぐらい持ち歩いていたりする。その堂々とした、誰にも遠慮しない欲望の解放のさせ方は、見ていて気持ちがいい。どんな人間でもちょっとずつ病んでいるので、彼女たちに「真面目に働いて結婚しろ」などと旧世代のオジサンたちが説教するのは完全な筋違いだ。あなただって病んでるじゃないか、と言ってやりたい。
男性のホームレスでも、Twitterで「欲しいものリスト」を公開して食料を送ってもらったり、中にはPayPayでお金を送ってもらっている人までいる。別にアイドルでもインフルエンサーでもない、憧れるような存在でもないのに、不思議と求心力を発揮する。“推し”という感覚に近いのかも知れない。赤の他人から恵んでもらうことは、一種の才能だろう。
SNSを介した新しい生き方に、既存の社会福祉は追いついていない。生活保護は、しょせんは「労働して税金を納める」という旧態依然のシステムに、働く能力のない人々を再回収する仕組みでしかないからだ。
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最近観た映画は、たぶん2回目か3回目の『ピアノ・レッスン』。
この手の愛欲・情欲を描いた映画でよく思うのは、どうして正常位で挿入するだけの退屈なセックスばかりなのだろう?ということ(しかも、男性は早漏気味で行為は2~3分で終わる)。
現実に暮らしている人々は、もっと変態的な行為をしているはずなのに、リアリティがない……というより、監督に描きたい欲望が欠けている点で、すでに面白くないのだ。セックスを、品位のある崇高な行為として様式化してしまっている。
それはさておいて、この映画にはラストシーンが2つある。
浮気がばれて夫に指を切断された主人公が、海へ捨てられるピアノと心中するようにして、海中へ没するシーン。綺麗な終わり方なのに、なんと彼女は船に乗っていた男たちに救出され、切られた指には義指を付けて、浮気相手の男性と平和に暮らしている……という『ブレードランナー』の初期バージョンのように、都合のいいハッピーエンドが付け足してある。
しかし、付け足しのように見えるハッピーエンドのほうが死の間際の夢であるかのように、映画は再び海中に没したピアノを映して終わる。「本当は」主人公はピアノと心中して死んだのかも知れない。「本当」も「夢」も、俳優や風景を撮影した化学フィルムという意味で同一のレイヤーに位置している……その皮相な構造こそが映画の限界であり、面白みでもある。
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