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2023年3月23日 (木)

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昨日水曜日は、三鷹美術ギャラリーの合田佐和子展へ。
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都内の美術館へ行くような時間はなく、手近にすませたいという気持ちもあったが、『帰る途もつもりもない』というタイトルに心惹かれた。天井の低い商業ビルのワンフロアだが、展示数は多かったし、レイアウトにメリハリがあって資料性も高かった。

「時間がない」と言いながら、陽気にうかれて玉川上水を歩き、井の頭公園の休憩所で飲んでしまった。
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平日昼間だというのに、飲んでいる人が多い。日本酒だビールだと盛り上がっているテーブルもあった。こういう何もない自分のコントロール可能な余白がないと、いずれは精神的に追い詰められていく気がする。
逆に、クラフトビールを外で飲み歩くと、明らかに金銭的なマイナスが大きいので、そういうのも精神的によくない。自分で選べるそこそこの贅沢、そのバランス感覚が大事。「節約、節約」とケチっていてお金が溜まったことなど、過去に一度もない。


どうしてこんな事を書いたのかというと、YouTubeでホームレスの人に密着取材した番組をよく見ているからだ。
単に先のことを考えず、無計画にホームレスになってしまった人が多い。犯罪に手を染めた人、精神病で社会に適応できない人もいる。中には、素晴らしい才能を持ったまま年をとって、埋もれている人もいる。そういう人は人間嫌いだと言うわりに、なぜか余裕があって飄々としており、笑顔が多い。
しかし、何よりゾッとさせられたのは、実家に住んでいながらクレジットカードの限度額いっぱいに贅沢してしまい、家を出てきてしまった人。高価なブランド品を買ったわけではなく、たんに好きな物を食べていたらそうなった……というのが生々しい。

そんなだらしのない人でも、浪費して贅沢している間は幸せだったんじゃないかと想像すると、幸せって何だろうと考えてしまう。正社員で就職して結婚して月給をもらい、社会にしっかり組み込まれていることが幸せなのだろうか? 社会から少々はずれているほうが豊かさや幸せに近づいているように、僕には思える。


兄のことは、いずれゆっくり書きたいと思うのだが、昨年だったかアパートの外で死んでいたと警察から電話があった。
彼はまず80万円の借金をつくり、それから実家に戻ったり出ていったりして、やがて生活保護で暮らしたり精神病院に入院したりしていたそうだが、僕はとにかく彼と関わらないように留意した。市役所から遺体の引き取りなども頼まれたが、すべて断った。
頭の悪い人は、「家族だから」「血を分けた兄弟だから」など薄っぺらい社会通念にとらわれて、ダメ人間と関わりを持ってしまうのだろう。父親が母親を刺殺するという血の経験を経た僕は、家族といえども情けなど見せたら自分も不幸に引き込まれると学んでいる。

心を自分のコントロール下に置いておくこと。自分が穏やかで、機嫌よく過ごせるにはどうすればいいのか、落ち着いて考えること。するとやっぱり、喫茶店でゆっくり読書したり美術館へ足を運んだり……という孤独な暮らしになる。
幸せとは大豪邸に住むことではなく、「心穏やかに過ごすこと」だとあらためて思う。とらわれないこと、自由であること。
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季節それぞれの美しさを知っていること。凄惨な出来事や邪悪な人々と同じぐらい、素晴らしい価値がこの世にはあり、その限りなく良いものを、これからでも作ることが可能なのだと分かっていること。


最近観た映画は、アンソニー・ホプキンスの演技が素晴らしい『ファーザー』。
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舞台劇の映画化で台詞が多いが、カット割りは単なる切り返しではない。映画の中で起きていることは、アンソニー・ホプキンス演じる老人の実体験、事実として捉えられている。予想外の出来事に驚愕する老人に寄り添うようにアップで撮り、みず知らぬ他人は引きで順光で撮り、距離を保つ。
たいしたプロットではない。でも、だからこそ丁寧に撮ってあることが分かる。どんなに仕事が立てこんでいても、寝る前のちょっとの時間に映画を見ることは必要だし、喫茶店へ行けるゆとりも大事。

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