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2023年3月 9日 (木)

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最近観た映画は『バニシング・ポイント』、『007スペクター』、『風の吹くまま』。すべてプライムビデオ。
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『風の吹くまま』はイランのアッバス・キアロスタミ監督の作品で、以前にまとめて何本か観たはずなのだが、中東へ旅したあとだと興味が深くなる。
この映画では、画面外から人物の会話が聞こえていても、話し手にべったり張りついて撮るようなことはしない。彼らの乗った自動車やバイクなどは、あっという間に道の向こうへ遠ざかってしまい、映画には風の音、農家の軒先を歩くニワトリなどが残る。その“隙間”には、技巧ではつくりだせない思想がある。

人間を追いすぎない、同情もしすぎない。映画のラスト近く、墓穴を掘る職人が生き埋めになってしまうが、彼の顔は一度も映らない。主人公が取材しにきた病気の老婆も、台詞には何度も出てくるのにとうとう最後まで顔は出てこなかった。
ストーリー、あらすじからは決して読み取れない隙間が、カメラの置いた位置から生じている。カメラは置き去りになる。すべてを見せてくれるわけではない。きっちり計算された構図・カッティングでは、ストーリーの裏側をすり抜けるような、この感覚は構築できない。


みぞおちと脇腹が軽くうずくので、3日ほど酒をやめてみた。聞くところによると、過度の飲酒による急性膵炎は激痛だという。死ぬのは怖くないけど、痛いのは怖い。
ほぼ毎日、喫茶店へ出かけて新しいお店も開拓できた。
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ヨルダン旅行で30万ほど使ってしまい、手痛い出費だし貯金残高も減っているというのに、あいかわらず平時昼間から何に追われるでもなく、のほほんと暮らしている。喫茶店まで散歩して、寝たいときに寝ている。
使えるお金の額は、実は30代からたいして変わっていない。となると、人生や暮らしに対する認識が変わったのだとしか思えない。焦らなくなったし、我慢もしなくなった。30代前半は、いつも焦っていた。
そのころ、毎日の我慢と節約でお金がたまったのかと言うと、どんどん貧乏になっていった。


僕の強みは、あきらめたものの数が多いことかも知れない。
SNSをやっていると、「どうしてアイツだけ得して、私は損ばかりなのだろう?」という負のエネルギーの熱量を感じる。僕は絵に挫折したし、映画作家にもなれなかったけど、成功した誰かに嫉妬しない。媚びたりもしない。
「あきらめた」から余裕が生まれて楽になれた、という実感はある。

あと、女性だけでなく同性から愛されたり称賛されなくても、ぜんぜん平気になった。これも大きい。自分の存在には少しばかり価値があって、それに見合った報酬は得ているのだから、毎日ぶらぶら暮らせるのは、まあ当然じゃない?と胸を張っている。
「アイツだけズルをしている!」と嫉妬ぶかい人は、そのバランス感覚がない。下手に「だって人間は平等だろ?」などと信じているから、劣等感に苦しむことになる。苦しいなら、その頑迷な思い込みを手放せばいいのに、執着して我慢して報われようとする。僕の30代までが、まさにそうだった。
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母の死は、荒療治だった。あの日から、社会で平凡に生きている人たちに期待しなくなった。以前は、ちゃんと就職して結婚している人たちに後ろめたい気持ちがあったんじゃないだろうか。彼らの人生も楽しいのかも知れないが、自分の人生だって無限に自由で楽しいんだと気がついた。


ダメな人というのは、すぐそこに幸運があるのに気づかず通りすぎてしまう。スマホ歩きしている人のポケットからは、お金がざらざらこぼれ落ちているように、僕には見える。
嫉妬ぶかくて怒りっぽい人は、そのマイナスの感情によって、自分の心がざっくりえぐられている痛みに気がつかない。鈍感なんだよ。痛みに鈍感で我慢ばかりしているから、自分の心の底からの欲望にも気がつかない。何が欲しいのかどうしたいのか、自分で分かっていない。だから焦るわけだ。

僕は自分がどうしたいのか分かっているから、こんな少ない稼ぎでも旅行に行けた。
本当は30代の頃でも行けたんだろうけど、自分の心に対して探求心が足りていなかった。他人の価値観、どこかの誰かが「いい」と思うもので心を埋めようとしていた。自分がそうだったから、仕事していてもウソを言っている人、強がっていても自信のない人はすぐ見ぬける。でも、彼らをどうこうしたい欲求はないので、そのまま放っておく。自分がどういう気持ちになりたいか、それが最優先なので他人に干渉しない。
そういう、こだわらないスタンスを手に入れた、気がつけた時点で勝ちなのだと思う。お金でも権力でもなく、自由がもっとも高価だった。

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