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2023年2月18日 (土)

■ヨルダン旅行記-3■

■ペトラ-2
さて、ホテルで一休みしてから、ペトラ遺跡へ行ってみることにした。明日、タクシー運転手のオヤジの提案どおりに全て見て回ればいいので、今日は3日通し券を購入して、ちょっと様子見だ。
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しかし、入り口をはいってすぐのところで「馬に乗らないか?」と声をかけてくる商人たちがいて、まずは彼らが雰囲気をぶち壊しにしている。「インディ・ジョーンズ体験ができるぞ!」などと幼稚な誘い方をされると、かえって覚めてしまう。
この人たちは公式に雇われており、追加料金を取られたりはしないらしい。でも、本当にしつこい。商売のしかたが逆だよ、黙って待っていれば客のほうから声をかけそうなものなのに。
翌日に分かったことだが、ほとんどの観光客は歩いて一時間ほどの場所にあるエル・ハズネという遺跡だけ見て、そこで引き返してしまうのだ。
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この写真は翌日に撮ったものだが、何百人という観光客が同じように遺跡の前でポーズをとって写真を撮り合っていて、げんなりした。場所は中東でも、システムが西欧化されている。自由なはずなのに、みんな同じような行動をとる。嬉しくないのに、嬉しそうな顔だけを写真に残して現実を直視しない。まるで、満員電車だった。
どんな秘境も遺跡も、システムによって平均化されてしまう。そのことが、僕を白けさせた。

■ペトラビール-1
遺跡入り口付近には、個人経営の小さな商店が櫛比しており、飲み物やポテトチップスなどを売っている。
さて、ビールでも買って帰ろうかとすると、ノンアルコールビールしかない。「これはノンアルコールだよね?」と言うと、ある店の青年が声をひそめて「あなたが言っているのは、ペトラビールなどのアルコール度数が10%ぐらいある本物のこと? だったら、俺の車にある」「ペトラビールあるの?」「あるよ、だからここで待ってて。一本10ディナールだ」「高くない?」「え? ペトラビールは10ディナールだよ」と、ちょっとイライラしている様子なので、2本分20ディナールを渡した。

「5分待って」と言ったのに15分ほど経過して、青年は店の裏手の階段からジャンパーをふくらませて戻ってきた。そして、隠れるようにペトラビールのロング缶を僕に渡すのだが「早くバッグにしまって!」と早口で言うのであった。
アカバでは大量に酒屋があったのに、なぜ本物のビールを売るのにそんなに怯える? 実は、すぐ近くのThe Cave Barという大きなバーでは本物のビールを公然と売っているのである。その関係かも知れない。
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ともあれ、ホテルの窓から夕陽に染まっていく山腹の町を眺めながら、夕飲みすることができた。

■ペトラ-3
翌朝7時半、ホテルの朝食。食堂は素晴らしい眺めで、テラス席もある。
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不器用そうな青年が、注文通りにオムレツを焼いて持ってきてくれる。ピータもあるが、イギリスっぽいパンもある。中東と欧米の折衷のような料理が揃っていた。コーヒーも、欧米風だ。

さて、朝10時より少し遅れて、運転手のオヤジが到着した。「5分しか遅れてないよな?」と、時計を示した。こういうところ、本当に抜け目がない。そして、かなり荒々しい道を登って、ペトラ遺跡の裏側へ着いた。
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オヤジが事務所に寄って、「遺跡の入場チケットと5ディナール」と言った。5ディナールはオヤジの取り分ではなく、トラックの乗車運賃なのだ。しかし、オヤジに「明日帰ることにしたから、バス・ステーションまで送ってくれない?」と話してみたら「よし分かった。でも、今日は5時間も歩くわけだから疲れるだろう? 帰り、ホテルまで送ってやるから電話しろよ。その分も含めて、いま10ディナールくれ」と、今回も自分だけは損しないシステムで前払いさせるのだ。
10ディナール程度なら、まあいいかな……と思わせるのだが、実は言葉たくみに運賃を重複して先取りしている。賢い。
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このトラックは違法でも何でもないのだが、利用する人は多くはない。トラックではなく、徒歩で裏側からペトラ遺跡を下ろうという人も何人かいた。
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ところが、トラックを降りてから岩山を歩くのが、かなり怖い。東京から砂漠を歩けそうなシューズを持ってきておいて良かった。
風も凄いので、足を滑らせたら谷底に落ちかねない。何も考えず、歩くことだけに集中した。こういう緊張をしたのは、久々のことだ。コートをホテルに置いてきてしまったので、鼻水が出る。
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一時間ほど歩いただろうか、ようやく最深部の遺跡、エド・ディルに出た。あとは山道を下るだけなのだが、かなり不規則で急な階段、坂がえんえんと続く。降りるだけでも大変なので、登ってくる人たちは苦しそうだ。これはタクシー運転手のオヤジが正解を言っていたわけで、彼が助言してくれなかったら、僕は途中で引き返していただろう。

■ペトラ-4
ところが、一本道に点々と残された遺跡を眺めながら歩いて、「あと半分ぐらいかな?」というあたりで軍隊や消防が通行止めをしていた。
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特殊車両が何往復もして、人々をピストン輸送している。消防車が、高所へ放水している。昨年末、激しい洪水があったそうで、似たような災害が起きたのだろう。
通行止めされている向こう側には、普通に観光客がいる。バカバカしくなって、他の人たちにならってロバの歩く急斜面を登って、観光ルートに戻った。
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正直に言って、どれも似た感じの遺跡なので、やや飽きてくる。脇道にまで登って細かいところまで見たい、という気持ちにはなれなかった。3日通し券を買ったが、今日これだけ見て歩ければ十分だ。
なので、さっさとホテルへ帰って夕飲みしたかった。

■ペトラビール-2
さて、今日はペトラ遺跡を出てすぐのところにあるThe Cave Barでビールを仕入れてみよう。
Googleマップでの口コミで、ビールをテイクアウトできることは確認ずみなので「ペトラビールを4本、持ち帰りたい」とアラビア語で表示させると、「ペトラは切らしている。アムステルしかないな」と、本当に麻薬の取引みたいな雰囲気。しかし、ここはホテルに隣接した有名なバーである。テラス席でビールを飲んでいる人もいる。
アムステルビールはアルコール度数が低いので今ひとつだが、難なくカードで買えた。
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ところが、店には適当なビニール袋がなかったようで、いかにも違法なブツのような凄い包み方になってしまった。
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そして、3泊の予定を2泊に切り上げてアカバで一泊することにした。なぜなら、夕方のバスでアカバへ戻って、そこから一時間かけて砂漠のワディ・ラムのキャンプへ移動するのは危険すぎると気づいたからだ。その頃には、もう辺りは真っ暗だろうし、ビジターセンターからキャンプへの移動手段も明らかではない。
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この読みは、的中した。ペトラ→アカバへのバスは、ワディ・ラムのビジターセンターへ寄ったのだが、その時間にはセンターは閉まっている。レストランも土産物屋も閉まっていて、トイレぐらいしか開いてない。ひと気もなく、この環境でキャンプへ行くなど無理だろう。
安心のリゾート地・アカバの新しく予約したホテルへ向かった。ただし、翌日から泊まるキャンプではビールを売っている場所などないとの情報を得ていたので、2日分のビールだけ、アカバに沢山ある酒屋の一軒で仕入れておいた。これをスーツケースで運べば、砂漠でも飲める。
翌朝はバスでワディ・ラムへ向かうのだが、砂漠のキャンプまで行くのが一苦労であった。

(つづく)

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