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2022年9月22日 (木)

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21日水曜日は、ひさびさに上野の国立科学博物館へ行った。
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企画展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」、腹が立つほど知的でセンスのある展示だった。これは、よい勉強になった。

地球館は以前にじっくり見たので、日本館だけ見て、道なりに歩いて東京藝術大学美術館へ向かった。
ところが、入り口には満員電車のような行列ができていて、ゲンナリして早めの谷中散歩に切り替えた。まだ昼過ぎだ。
目当てにしていたカヤバ珈琲が、これまた店外に行列が出来るほどの混み方なので、もちろんスルーして先へ行く。
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すると、台湾デザートの店「愛玉子」がある。
このお店、30年前の極貧アルバイト時代、一度だけ来たことがある。「フロムエー」しか定期購読している雑誌がなかったのだが、その中で谷中~千駄木の特集がカラーで組まれており、なけなしの電車賃を払って、無理やり下町散歩したのであった。本当に情報源がフロムエーしかなく、切り抜いてスクラップしていた。

その当時は、浅はかなレトロ趣味ぐらいしか自分の心の支えがなかった。
確か年収150万円ぐらいだったのでは……いや、確定申告に行った記憶もない。何とかして将来は映画監督……は無理にしても、もう何でもいいから「物語をつくる仕事がいい」と苦しまぎれの無いものねだりをして、そういう時はお金の使い方も分かっていないから、毎月の家賃を捻出するのが塗炭の苦しみであった。

今でも年収300万円を切る時があるから、収入は当時と変わっていないのだが、別人のような振る舞いだと思う。いつも金のなかった20代は、酒といえば酒屋の一番安い焼酎を買ってきて、お湯で割って、マズイのに我慢して飲んでいた。
そうやって、自分から「いかにも貧乏な暮らし」を求めて節約したつもりが、さらに困窮してしまう。現状に不満があるのに、改善しようとしないのである。勝手に自分でブレーキを踏んでおいて、「損をした」と苛立っている。


「愛玉子」のすぐ近く、地図で場所を確認してあった「谷中ビアホール」へ行く。古民家を改造したお洒落な店だが、せっかくのテラス席も目の前が住宅街である。しかし、天気はそこそこ良い。
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大きく分けて二種類のクラフトビールがあり、苦みやコクの違いを選べる。Mサイズがそこそこ大きいので、二杯目はSサイズにした。枝豆は、バターで炒めたもの。安くても、凝ったおつまみ。
店内には、高貴な雰囲気のお姉さん二人組が、思い出話にふけっていた。どうやら、僕よりも年上らしい。連休の谷間とはいえ、こんな昼過ぎからグラスを傾けられるなんて、これが勝利の味だと、つくづく思う。


さて、8月の散歩のときには閉まっていた朝倉彫塑館へ行くつもりが、すっかり道に迷ってしまった。
すると、適当に歩いていた裏道に、『伝説巨神イデオン』の看板が並んでいた。樋口雄一さんのFacebookの投稿で「イデオン放映40周年記念展 メカニックデザイナー樋口雄一と8人の造形作家たち」が始まったのは知っていたが、「場所は東京のどっかでしょ」という程度の認識だった。
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この写真は、先に会場に来ていた玩具業界の方が撮ってくださった。
樋口さんは【模型言論プラモデガタリ】で初めてお会いして、そのあと何度か取材でお会いしたが、ちゃんと覚えていてくれた。
「この辺り、ギャラリーが多いんだよね。月曜日に行くと、どこも休みで。友達と2人で“勉強不足だったね”なんて笑ったもんだよ」と、若いころの話をしてくださった。樋口さんは、今も若い。軽やかなんだよね、話し方や表情が。そういえば、湖川友謙さんとは一年以上会っていない。
しかし、本当にただ道に迷っただけなのに、「何か面白いもの」と求めて歩いていると、こんな偶然もあるんだな。樋口さんもギャラリーに来るつもりはなくて、帰り道だからたまたま寄ってみただけだと言う。


そして、朝倉彫塑館へ。この美術館、樋口さんがちゃんと知っているところがカッコいい。
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入場料たったの500円で、古い日本家屋の中庭をゆったりと回廊から見て歩いて、さらには屋上から東京の空を望む。
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館内はほとんど撮影禁止だが、この空ぐらいはいいと思う。ここから谷中銀座へすぐ出られる、その距離感もいい。こんなに静かなのに。
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帰りは、目当てにしていた昼飲みできる店が二軒とも閉まっていたため、この前も来た中華料理屋へ。
午後4時なら、ぜんぜん空いている。店内には70~80年代の洋楽が流れ、気取らない家庭的な雰囲気。窓際の席に座れたので、喧騒からはほど遠い商店街の雰囲気を、ちょっとだけ感じることが出来た。客はネットで情報を見て来たらしい女性、店の人と同業らしい男性……みんな、すごく落ち着いている。
この店から日暮里駅の小さな入口までの坂道がまた、しっとりした寂しい雰囲気で良いんだよね。

この時間であれば、東京まで足を伸ばして、丸の内のビルのテラス席へ行っても良かったのだが、帰りは曇ってきた。なので、餃子でビールが正解だったのだ。なんという、充実した半日……これが、僕の休日だ。


最後に、やはりマスクの話題を。
科学博物館は受付で「マスク、50円で販売しますよ」と言われたが、いつもの困った顔で「いや、マスク付けられないんです」と言うと、「マスクを着けられません」「事情があります」などと書かれたカードを首からかけるよう指示された。一度、館内で「マスクは?」と呼び止められたので、カードを見せた。
朝倉彫塑館は受付では何も言われず、4人ぐらいいる監視員の一人が「マスクは……」と話しかけてきた程度。「つけられません」と答えると、「すみません」と逆に謝られた。


最近見た映画は、オーソン・ウェルズ監督『上海から来た女』、ギレルモ・デル・トロ監督『ナイトメア・アリー』。

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