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2022年7月31日 (日)

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こんな時代だから、若い子たちががんばれるアニメにしたかった! 劇場版『Gのレコンギスタ』完結に向けて、富野由悠季監督の言葉を聞く【アニメ業界ウォッチング第90回】
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富野さんにはもう何度インタビューしているか分からないけど、だからこそ、ナアナアにならないように気をつけたいと思った。
このインタビューの時は機嫌がよくて、僕が『G-レコⅣ』のここが良かったと褒めるたび、「うんうん、あそこはね……」と反応がスムースだったので、だからこそ緊張感を記事に出さないといけない。実際には中盤にあった『キングゲイナー』のやりとりを、記事の最初に持ってきたのは、「つかみ」でもあるけど、ちょっとピリッとした空気を出したかったからです。

こんな感じに、インタビュアーは聞くだけでなくて、持ち帰った素材を構成して演出しています。
だから、自分が可愛いインタビュアーは、さもインタビューイと仲がよい感じに、自分が頭のいい感じに構成します。僕は、「このインタビュアーはバカじゃないの?」「コイツわかってないな」と思われた方が、記事としてはメリハリがつくと思います。嘘をつかずに優れた記事を書いたほうが読む人が喜んでくれて、もっと大きな視点で自分を肯定できる。

なので、インタビュアーがしっかり主体性を持っていないと、単に「著名人やクリエイターと会って話せた自分が可愛い」自慰行為のようなだらしない記事になってしまう。あるいは、「だってインタビューイがそう話したんだから、そのまま書くしかなかった」という他責的な仕事になってしまう(社会の半分ぐらいの人は、そういう仕事のしかたをしていると思います)。
「主体性がある」というのは、自分の主張をくどくど書くことではなく、必然性のある構成を考えること。偉そうに粉飾しないで、読者さんにとって分かりやすい記事にすること。それがインタビュアーの主張ですよ。


最近観た映画は、『最強のふたり』、『愛は霧のかなたに』、『それでも夜は明ける』。どれも二回目。
特に『それでも夜は明ける』は、ひとつひとつのシークエンスはよく覚えていたのだが、今回はその端正な撮り方に唸らされた。
たとえば、主人公が白人の労働監督官を殴って、縛り首にされかけるシーン。まず、木にかけられたロープが画面を斜めに切りさくように位置している。次に、この構図。
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主人公はつま先で必死に立ってないと首がしまってしまうので、じりじりと苦しそうに動きつづけている。このカットは、やけに長いな……と思っていたら、後ろの小屋から同じ黒人の奴隷たちが出てくる。彼らが苦しんでいる主人公を助けるのかと言うと、主人公を無視して仕事にとりかかるだけ。ただ静かな、いつもの風景なのである。
まさか、このまま見殺しなのかと思っていると、この構図のまま画面左側から女性が足早にフレームインしてきて、主人公に水を飲ませる。水を飲むところで、ようやくアップになる。

……が、構図はより痛烈になる。苦しむ主人公の肩越しに、親子で楽しそうに遊んでいる黒人たちが見えるのだ。
この長い時間は、主人公の吊るされていた時間でもあるが、黒人たちが奴隷として苦しんでいた歴史的な長さでもある。なので、構図も「奴隷が苦しむことが日常である」比喩的な意味をまとう。
奴隷の才能に理解のある白人の家主が馬でかけつけ、ようやく主人公を吊るしているロープを切る……バタッと地面に倒れた主人公は映さず、アクションカットで屋敷の床で倒れている絵につなげている。ここで安堵した主人公のアップでなく、前シーンから続く構図なのは「状況は何も変わっていない」ことを表わしている。単なるシーン転換のテクニックとは言い切れない。

こうした発見に満ちた啓発的な映画は、実は20本に一本ぐらいしかない。
しかし、上に書いたことは僕にとって新しい発見ではない。優れた映画は、すべてこれぐらいの演出効果を持っているからだ。なので、どうすれば驚くべき映画と出会えるだろうか、それとも劇映画が僕の人生に果たす役割は終わったのかも……と考えている。


また、19世紀の奴隷制度を描いた『それでも夜は明ける』に惹きつけられるのは、強者が理不尽な暴力で弱者をもてあそぶ、いつの世にも通底する真理を描いているからだろう。
僕は色が生白くて不格好で、おどおどしているいじめられっ子の癖に、40年ぐらいかけて自己実現できた。でも、だから妬まれる。仕事上で脅されたことも、数知れない。それを不公平だ被害者だと嘆くぐらいなら、僕は対策を考える。母が父に殺されるという異常な状況でさえ、僕は感情ではなく実務で切り抜けることが出来た。一週間後の自分の心を平穏にするため、今日は何をすべきか考える。
多数派のなかで安穏と生きてきた人は、戦略を立てられない。草食動物には、狩りをすることは出来ない。残酷なようだが、それが理不尽に嘲笑されてきた僕の答えである。

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