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2021年10月 1日 (金)

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「特装機兵ドルバック」の1/100ボナパルト・タルカスを組み立てて、ドスコイ系ロボの究極進化形を確認しよう!【80年代B級アニメプラモ博物誌】第14回
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海洋堂・宮脇修一センムの履歴書|フィギュアに尽くした50余年。いま「敗北感しかない」と語る理由
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株式会社はてなさんの依頼で、インタビューしました。
“造形についてまるで素人のアニメの版権を持つ会社、つまりライセンサーの担当者が「目の位置を2ミリ下げてください~」なんて監修をするようになってしまった。”
“ほとんどのフィギュア・メーカーが「ライセンサー様、監修をお願いします、修正してください」と頭を下げている。”
案の定、ここの記述に、注目が集まっています。


最近観た映画は、アッバス・キアロスタミ監督『桜桃の味』。とても異様な映画だった。
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映画の大半は、上のように車内のカットに終始する。自殺志願の男が、自分が睡眠薬を飲んで穴の中に横たわった後、死亡を確認して埋めてくれる相手を探している。なぜ男が自殺したいのかは、一切語られない。
男は二人の若者に声をかけるが、二人とも断って、車を降りる。男は行くあてもなく、工事現場に座って、ダンプカーが砂利を捨てて穴を埋めるのを見ている……が、シーンが変わると、また車の中だ。会話の途中である。どうやら、男は三人目の相手に声をかけて、自殺の話を持ちかけているらしい。
三人目の相手は、老人である。だが、会話が途中から始まっているため、この老人がどういう人物なのかは、すぐには分からない。

車は、砂漠の中を進む。老人が「こっちの道なら、わしは知っている。こっちの道のほうが景色がいい」と要望したからだ。
カメラは、ロングで走る車を撮っている。画面外から、老人の語りが聞こえる。「自殺なんて、つまらんものだよ」「もう一度、星空を見たいと思わないか」「また泉の水を飲みたいとは思わないか」と、彼の話は陳腐で凡庸な内容だ。画面も砂漠ばかりだ。しかし、老人の朴訥な語り口が、不思議と胸にしみる。

老人は「さっき言っただろう、わしは自然史博物館で働いているんだ」と、立ち去っていく。下のような、印象的な構図だ。
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老人を見送った男は、車で移動する。カメラは車内の男をフィックスで撮っている――まるで、この映画そのものが感情をなくしてしまったかのようだ。
しかし、車の外から「写真を撮ってください」とアベックの女性が頼んできたり、かと思うと「死にたいのか!」と怒声が聞こえる。車の外の世界は、生き生きとしている。男は無表情にハンドルを切り、車から駆け出していく。彼は、どこへ向かって走り出したのだろう?
上の博物館の門が、このままの構図で、ふたたび映る。男は、あの老人にもう一度会おうとしている! そのことが、端的な構図で分かる。一切の台詞、一切の演技、一切の感情描写を排しても、構図によって彼の心の変化が伝わってくる。あの老人の語りに感動したのは、僕だけではなかった。映画の中の彼も、心を動かされたのだ。映画のこちら側と向こう側が繋がった。

この機能的な効果が、映画を観る意味だと思う。
ちなみに、オチは「はあ?」と首をかしげる難解なもので、ネタバレとか何とかいう概念がいかに無意味か分かる。映画は、プロセスを体験するものであって、ネタがどうとかいう性質のものじゃない。

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