« ■0501■ | トップページ | ■0508■ »

2021年5月 5日 (水)

■0506■

NHKオンデマンドで、『福島モノローグ』を見た。しつこいようだが、またしても松村直登さんのドキュメンタリーである。
Dscn8844
今回は動物のエサやりだけでなく、畑をつくったりキノコから高濃度セシウムが検出されたり、いくつかトピックがある。
初日の出を見にいって、意外と人が多いのに気がつくのは、本当に『ヨコハマ買い出し紀行』そっくり。SFの世界。だけど、初日の出のエピソードはNHK側が仕込んだのではないかと思っている。ちょっと白々しい。

それはさておき、出かける前の松村さんは沸かしたお湯で顔を洗い、丁寧に髭をそる。そういえば、一人でメシを食べているときも、食べ方が綺麗だ。同じような作業服ばかり着ているが、決して汚れてはいない。
身なりが、生き方を語っている。ダメな人は、服がダブダブでヨレヨレ。どんな質素な服であろうと、きちんと着ていることが大事なのだろう。そんな些細なところに、人生観が出る。


あと、人との距離感がすべて均一に保たれている。カッコつけようとか見栄をはろうとか、心の隅にすらない。
Dscn8844_20210505203401
取材スタッフに「おい、大丈夫か」と声をかけるので、取材する側はつい包容力のある松村さんに甘えてしまう。会話する相手の甘えと油断が露呈してしまう。完成された人間は、何もせずとも相手のペースを引き出してしまうのだ。
我が強くて、「俺が、俺が」と主張してしまう人間ほど、無為な相手の無意識におびえ、勝手に自滅していく。松村さんは無意識過剰なので、誰とも均質かつ自由な関係を保っている。焦ったり怒ったりするのは、いつも相手の側なのだ。


そして、両親が残した畑にダイコンやトウモロコシを植える。
Dscn8844_20210505204201
どうも、それらの野菜は食料として自給自足するために育てはじめたようだ。穫れたダイコンは、予想より小さかった。「いちばん陽のあたってほしい季節に、あそこの木がぜんぶ日光を遮った」「だから、こっち側には夏野菜を植えて、向こうに冬野菜を植えようと思う」、さらに空いたスペースがあるので「あっちもトラクターで耕うんして、秋野菜を植える」「だけど、畑として使えるようになるのは何度か耕して、1~2年ぐらい先」。

そういう合理的な予定を、笑いをまじえながら語る。この冷静な計画性も、松村さんの武器のひとつだろう。僕が61歳になったら、1~2年先のことなんて計画できるだろうか? 期待どおりに野菜が育たなかったことに怒り、すべて止めてしまいそうだ。


余談だが、松村さんの食事シーンを注意深く見ていくと、ちゃんと酒の容器がある。検索したら、芋焼酎だった。他にも日本酒の一升瓶、缶ビールの空き缶。やっぱり、飲むんだなあ。富岡町に新しく出来たスーパーで買ったのだろうか?

富岡町は原発作業者、東電関係者の住宅が増えていて、スーパーも出来た。だけど、帰還した住民はわずかだという。
60代をどう過ごそうかなあ、と考えている。今のようにレストランのテラス席でビールを飲み、美術館や喫茶店でゆっくりして……これは数年もすればルーティン化して飽きるだろう。仕事は、あとひとつぐらいジャンルを開拓すれば、年齢相応の仕事を獲得できると思う(そのための50代だ)。でも、何もない場所で、寂しい気持ちを糧にしながら、のんびり一人で生きていくのが最優先のテーマなので……これから、どうしようかなあ。

|

« ■0501■ | トップページ | ■0508■ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ■0501■ | トップページ | ■0508■ »