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中華料理屋への注文内容をえんえんと繰り返す「機動警察パトレイバー ON TELEVISION」の“話芸”的な面白さ【懐かしアニメ回顧録第74回】(■)
日曜日にアップされ、非常に好評だった記事です。
ある程度みんなが知っていて、深すぎず浅すぎない分析なら、個人のコラムでも読んでもらえる。なおかつ、「そうそう!」と賛同してもらえることもウェブでは大事だと思いました。
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先日、三か月かけてようやく持続化給付金が入った。
ホッとしたのも束の間、今度はマンションの契約更新時期。更新料は払えるからいいとして、民放改正にともない、連帯保証人の直筆と実印が必要だという。
今の保証人は(お金持ちの知り合いや友達に「契約条件がハードすぎる」と断られた後)、叔父さんにお願いした。母の弟さんなので、10年前ですでに70歳をこえていた。母の死について、僕に同情的だったのは母の弟さんと妹さんなのみ。どちらも、80歳をこえているはずだ。普段、まったく連絡をとりあわないので、生死すら分からない。
もっとも、不動産管理会社も「そういう方が増えているので、保証会社を通す方法もありますよ」とのことで、その料金は家賃の半分程度だという。だったら、もうそれでいいよ。高齢の叔父さんに、ご本人にまったくメリットのない契約書を書けなんて頼めないよ……。
35歳ぐらいからはどこにも借金してないし、家賃を滞納したことなど一度もない。そういう実績は、まったく何の保障にもならず、親戚という“生贄”が必要なんだよなあ、今の社会。
本当に、「多様な生き方」なんてものが実現できてるんだろうか? あいかわらず「大卒で就職、定年まで働く」という高度成長期の人生設計がベースになっているんじゃないの?
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コロナで職を失った人がいるという。将来の見通しが見えず、自殺した人もいるという。
僕の場合はコロナとはおそらく関係なく、フリーランスによくある農閑期というか、三年に一度ぐらいガクンと貯金が減ってしまう時期が訪れたにすぎない。3月に確定申告して還付金が出れば、何とかつなぎが出来て、5月ぐらいにはまとまった報酬が入る……という読みがある。そのやりくりが、フリーランスの面白さでもある。
それでも、今回は綱渡りだった。家賃は毎月の連載で十分にまかなえるのだが、その他の出費を10万以下におさえるのが難しい。
……にも関わらずだよ?
あいかわらず、海辺へ出かけては、夕陽を眺めながらレストランで飲酒だ。
いや、スーパーやコンビニで安酒も買うけれど、こういう場所と時間を失ったら、僕は生きていく意味がないと思っている。
20代後半、家賃を強引に分割払いにしながら、三食100円のやきそばのみで生きのびていた経験からすると、「ただぎりぎり生きていく」ことは精神を摩耗させる。「あれ? 家賃ならちゃんと払いましたよ?」などと、ウソをつきながら逃げのびねばならないわけだから。
もちろん、美術館にも行くわけです(SUICAに何千円もチャージするのは避けて、そのつど切符を買っていたけど)。
(目黒区美術館、『視ることの楽しみ』展、木材から金属から紙から絵の具から、古今東西のありとあらゆるマテリアルを同一規格のケースに配置した異様に凝った展示! これが無料で見られるのは凄いよ。)
あのね、借金してでも美術館に行くべきだと思っているの。さらに言うと、その借金は踏み倒していい。
自分が何を欲しいのか心の底から熟考して、その欲望に忠実に生きるべき。さもなくば、後悔の人生しか待っていない。「美術館に行ったり夕陽を見ながらビールなんて贅沢だ、そんな時間があったらアルバイトしなきゃ」と本気で思っている人、アルバイトするのが楽しいならそうすればいい。楽しくないなら、それはウソの人生だ。
そして、己の欲望を解放できず「必ず~せねばならない」と屈折した思いを抱えている人は、さまざまに利用される。「現政権が悪い」「性表現が悪い」……、すべて屈折した正義感や義務感につけこまれているに過ぎない。
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給付金が出た翌日、スタジオでプラモデルの撮影があり、帰りにしみじみと編集者と語り合った。「俺、自殺願望はないけど湾岸地域でホームレスやろうかって考えてた……」。
山谷でなくて東京の湾岸地域でホームレスするとしたら、それは僕にとって「一種の贅沢」なんだよ。この寒さに耐えながら外で暮らすような体力はないので、夢物語ではあるけど……。
三鷹市は市民税を滞納すると、口座を凍結して、無理矢理に生活保護を受けさせる。どうしてかというと、何でもいいから仕事をしてもらって、納税させるためですよ。
僕は「ライターなんてやめてもらって、警備員・清掃員・介護士のどれかを選んで」と、市役所に言われた。それでは、税金を払うための家畜、『マトリックス』で電気をとるために夢を見させられている人間にすぎない。
だったら、ホームレスのほうが、まだ意志と工夫に満ちた生き方のはずだ。
だから、「生活保護を受けてください」というのは「社会に適合してください」「税金を払って社会を維持してください」という意味。さて、どうしたい? 好きなことだけをやりながら生きていく、嫌なことを一切、絶対にやらないのはどうすればいい? どこまでも逃げつづけていいんだよ。自由なら、その手の中にある。あと必要なものは自分の欲望に向き合う勇気と、自由を活用する創意だろう。
「あなたは、あなたが妥協したものになる。 」 ジャニス・ジョプリン
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