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2020年12月19日 (土)

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EX大衆 2021年1月号 発売中
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特集「マリオとゲームの35年史」内で、「小田部羊一氏がマリオに宿した想像力」という1ページ記事を書きました。
たまたま、小田部さんのインタビュー集を読んでいる時に来た依頼なので、その本からも証言を引用しています。


今週は、珍しくギッシリと仕事して夜中まで原稿に向き合っていたので、昨日の金曜日だけは美術館へ。
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天王洲アイルから徒歩数分、寺田倉庫がオープンしたばかりの美術館「WHAT」。美術館は建物の一階と二階、併設されたビルに建築模型の倉庫があり、そこは時間を指定しての完全予約制。時間の少し前に集合して、1時間限定で自由見学。
建築模型ミュージアムは撮影禁止だったが、「おお……」と感嘆の声がもれてしまうほど魅了された。それは、アイデアを他人に伝えるためのメソッド、知恵と工夫の展示であった。


建築倉庫を見る前にWHATの企画展「—INSIDE THE COLLECTOR’S VAULT, VOL.1—解き放たれたコレクション展」を見ていた。スペースは決して広くはないのだが、十分な見ごたえがあった。
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まずは、空間の使い方が贅沢である。天井の空調やパイプがむき出しなのもいい。
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先月、どこかの美術館で見かけて気になっていた、岡崎乾二郎さんの作品があった。正直、上の大型の作品は今ひとつで、小さなカンバスに絵の具を盛り上げた作品のほうがいい。表面の立体感で見せる作風なので、こればかりは目の前で直に、視覚(的な触覚)を駆使せねば意味がないのだ。
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これらの作品も同様、マチエールを楽しむ作品だ。写真では、色と形の情報しか残らない。適当に塗りつけたかに見える絵の具の中に、シャープな線や意図的な具象が見つかるので、それがカッコいいのだ。そのロジックを見つけるには、巨大な作品に顔を近づけて、地図でも見るように目をこらすしかない。
パッと見た瞬間だけを捉える写真では、自分で首を振って視線を動かす能動性は喚起されない。

さて、WHATでは2種類の展示があり、より狭いスペースでは「謳う建築」展が催されていた。
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大きなパネルで、空間を仕切っていく。単調でも窮屈でもなく、ジクザグに気ままに歩けるようなランダムな仕切り方。手だれのデザイナーが設計した展示だ。
真っ白なパネルに、住宅に関連する詩が印刷されている。プロジェクターで、住宅に暮らす人たちを映す。パネルは文字や映像を見せる素材なのだ。なんと美しい展示だろう。設計図や住宅の模型は数も少なくサイズも小さく、むしろオマケだ。
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薄い紙に文字を印刷して、重なるようにピンで止めたり……床にも、ランダムに言葉を散らすように印刷してみたり……使われてる言葉とか詩は、ちょっと恥ずかしい。だけど、発想がよい。コンセプトを楽しむ、それが一番の贅沢だと思う。
すっかり満たされた気持ちで、さてお台場のガンダムベース東京まで一駅だから歩けるだろう……と思ったのだが、実は歩いていくには遠回りして一時間半もかかることが分かった。なので、東京テレポートまで電車に乗った。


買い物を終わらせると、15時半ぐらい。早すぎる冬の夕陽がいい具合なので、では駅前にあったはずのカフェでビールでも飲もうかと思ったら、閉店であった。
しかし、駅まで行くとチームラボの展示がヴィーナスフォートで行われていると分かった。
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クリスマスツリーを思わせる「呼応する生命の樹」、まったく無料で見られるし触れる。「触ると色が変わる」のは所沢市の「どんぐりの森の呼応する生命」と同じだが、あいかわらず触れても色が変わらない(笑)。しかし、少しずつ変化していく色を見ているだけで、十分に楽しめた。
チームラボの作品が、このように公の場にあったり、もっというと職場がこういう空間であったなら、さぞかし創造的な仕事ができるはずだ。それが成熟した社会だろう。

すっかり満たされた気持ちになったが……夕陽がもったいない。せっかく、青海埠頭の近くなのに。なので、近くのローソンで缶ビールを買って、海と夕陽を眺めながら飲んだ。酒で酔うのではなく、きれいな風景やいい気分に酔っているから、酒をブースターに使うのだ。
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「永遠を感じたい」と、いつも思っている。近所の玉川上水を散歩していると、一秒が一秒でなくなるような瞬間が、実際にある。時間は均一ではない。別の言い方をすれば、時間が流れていることを忘れられる、与えられたゲームのルールを意識ひとつで無効化することが、人生の目標なのかも知れない。その一発逆転のために、美術や娯楽があるのではないだろうか。


最近、ちょっと嫌だったこと。

●いつも寄る都心の喫茶店で、長髪のカッコいいお兄さんが椅子に深く座らず、狭い店内の通路を半分ぐらい占有していた。何度も往復しなくてはならない店員さんは、窮屈そうに身をよじっていた。
お兄さんは紫色の毛皮(!)を背もたれにかけて、友人たちと映画の話に興じていた。「どんなストーリーなの?」「そのカットが……」などと突っ込んだ話をしていたので、業界人なのかも知れない。凶暴そうな人ではなかったので、一言注意すれば、椅子を引いてくれたかも……。

●三鷹北口のTSUTAYAの階段を下りていたら、後ろから降りてきたオタクっぽい青年が追い越しざまに「トントンだ! トントン!!」と怒鳴った。おそらく「トントン」は階段を下りている擬音だと思うが、イケメン系の傲慢な嫌がらせとは別の不気味さがあった。 
以前にも、デパートのドアを開けて相手が出てくるのを待って道を譲ったら、オタクっぽい人が「そうだ、俺が出てくるまでそうして待ってろー」と小声で言ったので、びっくりしたことがある。「イケメンだから」「オタクだから」ってことではなくて、天敵のない環境でぬくぬく育つと、ああなるんだと思う……。

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