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「機動警察パトレイバー アーリーデイズ」で、立ち食いそばを食べていたのは誰と誰?【懐かしアニメ回顧録第72回】(■)
『二課の一番長い日』に出てくる立ち食いそばについて、考察しました。無駄を削ぎ落とした、理知的な脚本だと改めて感心しました。
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木曜日は、パナソニック汐留美術館へ。
『分離派建築会100年展 建築は芸術か?』、興味のない人にクリエイターの仕事を理解させるには、切り口が必要と思った。いくつかのセクションを貫くように、壁一面に横長の壁新聞のようなものが貼ってあった。その壁新聞と各セクションの内容が時系列的にマッチしていれば、理解の一助になるはずだ。
金曜日は、予約してあった原美術館へ。企画展は『光―呼吸 時をすくう5人』。
前回は真夏に行ったので、迷ったあげくに汗だくになってしまったが、今回は、閑静な住宅街の中をまっすぐに来ることが出来た。
二階の常設展示の中に、宮島達男さんの作品があった。千葉市美術館まで、個展を観に行ったほど気に入っている作家だ。前回、原美術館に来たときは名前すら意識に上らなかった。あちこちの美術館を見てまわったお陰で、気がつくことが出来た。
さて、展示はどうだったか。
前回の『メルセデス・ベンツ アート・スコープ 2018-2020』は、空いていたうえに、外光と一体化した作品、音声のみの作品などバラエティに富んでいた。今回は、平面の作品がメインだ。
上の画像は公式サイト(■)より、展示室Ⅰの作品。窓から射しこむ自然の光と、室内から強く照射した人工の光とを競わせている。壁の絵はメインではなく、光の媒介物にすぎない。
この美術館は、建物が主体なのだと改めて思う。展示室Ⅱの広々とした、生物の体内のような有機的な広がりには全身が痺れるような快感をおぼえる。いちばん奥に小さな窓があるところもいい。今回の展示では、その小さなエリアで自動ピアノが演奏していた。もしかすると、その自動ピアノと建物との関係が、今回いちばん感動したポイントかも知れない。
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さて、原美術館を出て大崎駅まで戻ってくると、陽気がいいのでビールを飲みたい。しかし、駅周辺の施設にはテラス席が見当たらない。
地元の武蔵境駅まで戻れば、テラス席でビールを飲めるカフェがある。だけど、そこは自宅から歩いていつでも行ける。そんな安易な飲み方は避けたい。
大崎からはりんかい線が出ているので、お台場あたりで飲めるのではないか? とにかく、地元に戻れば確実に飲めるんだけど、それは消極的に思えた。
検討の結果、東京テレポートで下車してみた。
ヴィーナスフォートはあいかわらず閑散としていて、まるで商売する気がない。もちろん、テラス席でビールを飲ませる気のきいた店など見当たらない。
そこで、ちょっと離れたダイバーシティ東京まで歩くのだが、駅のすぐ近くに、テラス席常備の小さなカフェがあるのに気がついた。しかし、そこで手軽に済ませるのも、またちょっと癪なんだよね。探さないと気がすまない。
ダイバーシティの二階テラスを歩いて、建物前の広場も回ってアルコールを置いてないことを確認すると、ようやく「まあ、先ほどの店で妥協しとくか」と心が決まる。なんとしてでも、屋外でビールを飲みたいわけだから。
すると、使い捨てカップに注がれた、たったこれだけのビールと、ちょっと暖めてもらった適当なサンドが、格別の美味さとなる。
いわば、歩いて探して無駄足をふんだ過程が、味に貢献している。最初に見つけた時点で、「この店でいいや」と衝動的に飲んでいたら、こんな美味い酒にはならなかった。歩いて疲れて、「まあ、いいか」と一息つくと、11月の枯れたような午後の陽光がかけがえのないものに感じられる。店のお姉さんたちも、優しかった。
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また別の日、吉祥寺まで散歩した午後、老舗喫茶の「ロゼ」でトーストを食べた帰り、井の頭公園の休み所「松月」に寄った。
頼むのは瓶ビールと決まっているが、ツマミは一考したい。そろそろ寒いので、450円の枝豆は避けたい。何か暖かい物……とメニューをめくると、おでんが600円だ。ビールが500円だから計1000円を超えてしまう。
しかも、松月は本格的な食堂ではない。枝豆もウィンナーの盛り合わせも、冷凍食品をチンしたか軽く茹でた程度。おでんも同じだろう。
しかし、いかがだろうか? 中身は確かにスーパーのパックであろうが、ミニ土鍋付き! とり皿にカラシ。れんげも付いている。完全お一人様仕様だ。暮れてゆく井の頭公園の外れ、一気に充実感が増す。玉子の位置など、具のレイアウトもいい。レイアウトも含めて「味」、時間帯やロケーションも含めて「味」である。
ここでもし、「やっぱり1000円以下に抑えたいな」と冷たい枝豆を頼んでいたら、後悔しか残らなかっただろう。トライ&エラーを繰り返して、日常の小さな幸せを獲得していく。この日使ったお金は、喫茶ロゼでの飲食代も含めて2千円以下。2万円使ったら幸福感も10倍かというと、そんなことはない。
しばらくすると、僕一人しかいなかった松月に中年の男性客が現れて缶ビール、つづいて焼酎のロックを頼んでいた。
アテは何を選んだのか分からないが、彼には彼だけの卓上の小さなパラダイスがあるのだろう。午後深い、夕闇に沈んでいく松月の店内。男たちの孤島のパラダイスが二つ、かすかに灯をともしていた。
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この数日のあいだに観た映画は、山下敦弘監督『リアリズムの宿』。
原作漫画2本のプロットを部分的に拝借し、途中の女性が出てくるエピソードは完全なオリジナル。コスプレのような服装と髪型で「ほら原作そのままでしょ? 原作ファンの皆さん、責めないでくださいね」と言わんばかりの漫画原作映画に比べれば、どんなに稚拙でも監督が自分のフィールドに引っ張りこんでワガママをやった作品のほうが、圧倒的に好感はいだける。
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話題は変わるが、最近のTwitterは「ツイフェミ」の皆さんの痛々しさがエンタメのレベルに達している。
ドラマだろうと漫画だろうと、どんな創作物も自分の女性性を傷つけ搾取しに来ているという主張に、統合失調症の「集団ストーカーに狙われている」「電波でコントロールされている」などの妄想を思い出してしまったが、すでに「糖質(統失)」と「フェミ」を結びつけている人は、沢山いる。
フェミニスト兼ヴィーガンの方が「鬱病」と「パニック病」(おそらくパニック発作のこと)で苦しんだ……というツイートをしていて、そりゃまあ確かにそうだろうな……と、ちょっと憐れみを感じる。俺もパニック発作だけど、精神安定剤でかなり助かってるよ。嫌なこと、苦しいこととは戦わずに逃げろ。
あと、彼氏ができたけどフェミニストとしての言動は「洗いざらい話した」とか(普通は隠すものらしいな)、たまにパートナーが「ミソ的(女性嫌悪的)な発言」をする……といった悩みを抱えているフェミニストもおり、まあ頑張って幸せになれよ、としか。誰も邪魔しないよ。幸せになって、カッカして広告や創作物に噛みつかなくてすむようになると、すべて円満だよねえ……としか思えないね。
本当に自信がある人は心おだやかだから、知らない相手に向かって「お前」「こいつ」なんて言わない。真に強ければ強いほど、礼儀正しく振る舞うものだよ。無闇に強がったり、誰彼かまわず敵視してマウントとりたがるのは、負け犬だから。
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