■0818■
いつの間にか再オープンしていた、国立新美術館へ「古典×現代2020」を観に行ってきた。
鎌倉~江戸時代につくられた仏像や刀、版画などと、現代アートの中に共通性を見い出して、同じスペースに展示している。
尾形乾山のつくった花模様の陶器のうえに、ミナペルホルン展で知った皆川明のパッチワーク作品が、天井から吊ってある。視線を天井へ動かすと、なるほど色と柄とが、きれいに呼応している。それを、和やかな、ゆとりのある配置のしたかで見せている。……陶器は近づいて見る。パッチワークは、後ろに下がって見る。こうして空間を自分で演出していく、眺める時間も自分で調整していく。それが、美術館の面白さだ。
映画館のように、受動的ではいられない。観客は、能動的に自分だけの時間と空間を、作品とのあいだに構成せざるを得ない。順路こそ決まっているが、この作品は五分以内に見ろ、このように感じろといった決まりはない。説明文など、すべて読み飛ばしてもいいのだ。
■
わけても感銘に打たれたのは、二対の仏像を暗闇の中に置いて、周囲に小さなライトをゆっくりと上下させてコントラストと質感をじっくり見せる田根剛によるインスタレーションだ。
(撮影禁止なので、画像は■より引用)
暗闇から声明が響いているので、まるでお寺の中へ迷い込んだような、敬虔な気持ちにさせられる。
上下するライトは、見る角度によってガラスケースへ二重三重に反射して、さまざまな表情を見せる。観客は、仏像の表面を刻々と流れる光のテクスチャーに魅了され、歩きながら様々な角度から眺めることになる。ライトの動くパターンは3分でワンセットと注記されているが、しかし、どれだけ眺めているかは観客が決める。
その奔放さが、美術館の醍醐味だ。
(同館で、なんかアニメ漫画都市トーキョーなんとかの展覧会もやっていたのだが、僕はああいうのは、しばらく見たくない……。なんというか、オタク系のコンテンツは自己の内面で完結させたいので、「ほっといてくれ」という気持ちになってしまうのだ。)
■
編集者から教えてもらったのだが、今度は何? Amazonプライムの解約運動ってハッシュタグで、Twitterが盛り上がったの?
なんか、三浦瑠麗という政治学者がCMに出演しているのが気に入らないので、Amazonプライムをみんなで解約するんだって。
“こんなヤバい奴を広告塔にするなんて普通はまず有り得ない。どういうルートで安倍応援団のコイツに大手CM出演の話が舞い込んだか解明されるべき。政治が絡んでるはず。”(■)
で、何? このハッシュタグをつけてツイートするとAmazonが倒産でもするんですか? 安倍政権が倒れるんですか? 何人解約すると、具体的に何がどう好転するの? 何も考えてないでしょ?
こうやって、実効性の測れない、責任の伴わない、簡単で手軽な「運動」だけは熱心にやるんですよ。だから俺は、彼らをバカにしてしまうの。安倍政権を倒したいなら、どういう手続きが必要なのか、ちゃんと調べて出来ることをやらないと。
こんなTwitterなんて民間のSNSサービスで、目的も結果も分からない文字列をスマホに打ち込んでハイ終わり……って。あんたら、安倍総理が憎い、降ろしたいんじゃないの? 俺が反アベの人たちを嫌いなのは、「しょせん本気じゃない」から。「誰か、私たちの意向を汲んで何とかしてくれ」って他力本願でしょ、違うの?
■
『となりのトトロ』で、小学生女子のサツキが働かされてばかりいるのは女性差別……と言っている人が多いようだけど、たまたま地上波テレビで放送したから『トトロ』に難癖つけてるだけだよね? 単に「テレビつけたらやってた」ってだけでしょ? なんでそんなに受動的なんだよ。
こういう人たちって、自分から面白いものを探したり、有益な物を手にするための苦労をしない。ただ、Twitterのタイムラインや地上波テレビをぼーっと眺めて、気に入らないものに脊髄反射しているだけ。カラッポなんですよ。その人の中身というか、歩んできた人生がスカスカなの。
吾妻ひでおさんのエッセイを読んでいたら、格闘漫画『ホーリーランド』を絶賛していたので、Kindleで読んだ。
いじめられて不登校になった少年が、ボクシングの技術を独学で習得して、自分を排除してきたヤンキーたちを秒速で打ち倒していく。彼の戦う理由は「抵抗しないと、自分の居場所がなくなるから」。彼は抵抗するために、誰もしない努力を重ねて、技術を獲得した。抵抗するために、震えながら敵に向かっていく……。
その「抵抗」が、軽いんですよ。反アベとかフェミっぽい人たちは。不満だけは人一倍だけど、どうすれば不満を解消できるのか、何も工夫していない。自分の弱点と向き合ってない。
逆に俺は、自分なりのルートを見つけ、自分の強みを生かした「抵抗」をしている人なら、反アベでもフェミでも好感をいだくと思う。
まがりなりにもインタビューを試みた太田啓子弁護士。彼女の主張には納得しかねるけど、論敵の反撃をあらかじめ封じる斬りこみ方、反論を上手く利用する手腕には感服した。くやしいけど、「じゃあ、太田さんの好きにおやんなさい」と黙るしかない。「言っても無駄」という状況をつくったほうの勝ちなのよ。
石川優実さんもそう。言っている内容は「?」と思うけど、あの戦いかたは独創的だよ。自分が絶対有利な方向へ、卑怯だろうが詭弁だろうが持っていくじゃん。それで本人が楽しければ、最初の主張から遠ざかろうが運動が挫折しようが、すでに勝ちなんですよ。人間は悩むためではなく、幸せになるために生きてるんで。
理不尽な酷い目にあえばあうほど、工夫して勇気を出して自分だけの独特の「抵抗」を試みなければ、負け犬の人生しか待ってない。それだけの話です。
■
『ホーリーランド』で格闘技の面白さに目覚めたので、みんなの嫌いなAmazonプライムで『燃えよドラゴン』をレンタルして観た。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント