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2020年7月20日 (月)

■0720■

500円の“アートフィギュア”が、僕たちの価値意識を革新するかもしれない――株式会社SO-TAのカプセルトイ【ホビー業界インサイド第61回】
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造形作家のムラマツアユミさんのツイートから株式会社SO-TAさんを知って、すぐに取材を申し込み、段取りはとてもスムースでした。最初の返事がもたつくと、たいてい後味の悪い取材になりますが、SO-TAさんは打てば響くような返事でした。メールの返事が早いだけで、信用に値します。

インタビュー記事って、インタビューイの話したことをそのままベタ起こしのように書いていると勘違いしている人が、いまだに多いです。
彼らは、インタビュー記事には、インタビュアーの意志なんて入ってないと思いたがる。実際には、何を聞きたいか、聞けた話にどう価値を見つけて、読んだ人にどんな気持ちになってもらいたいか、インタビュアーがすべてを意図して編集・構成しているのです。
「インタビューイが話したとおり、そのまま書きました」だったら、動画を撮って未編集で流せばいいのです。自分に主体性のない人ほど、他人の仕事もしょせん意図も意志もないものと見下して、ニヒリズムの中に安住したがるものです。


ヒッチコック監督の『舞台恐怖症』を、DVDレンタルで観た。冒頭30分、ひとつの殺人事件が回想にさらに回想を重ねて、バトンリレーのように人から人へ広がっていく描写はエキサイティングだった。
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大女優が夫を殺したことに始まり、それが愛人へと伝わり、その愛人から名もない新人の舞台女優へと主役の座がスライドしていく。新人女優は、大胆な推理力をもった父親を心強い相談相手にして、事件の真相へと迫ることになる。そこまでが、ざっと30分なのだ。

見どころは、大女優の頼みを聞いて、愛人が殺人現場へ服をとりに行くシーンだろう。
カメラは、まず床に落ちた暖炉の火かき棒を映す。それは、大女優と殺された夫との争いの痕跡だ。カメラは愛人の視線をたどるように、ゆっくりとPANする。すると、クローゼットの前に、不自然な格好で倒れている夫がいる。夫の死体が、クローゼットの扉を邪魔しているのだ。では、どうやってクローゼットを開けて、服を取り出せばいいのか?
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カメラは、クローゼットを開こうとする愛人の上半身だけを撮る。愛人は、扉を開けようとするが、足元へ目を落とす。そう、そこに死体が転がって扉をふさいでいることを、僕たちは直前のカットで知らされている。だが、カメラは扉をふさいでいる死体を映さない。「死体を邪魔に思っている愛人の上半身」だけを映しつづける。じれったい。そして、僕たちの感じるじれったさが、クローゼットを開こうと必死な愛人の感じているじれったさとシンクロしていくのだ。

何をフレームに入れて、何をフレームから排除するか? 観客は何を知っていて、何を知らされていないか? 認識を、図像によってコントロールするゲームが映画なのだと思う。


“言論人といえば弱者に寄り添うもので、アーティストといえば差別を告発するもので、正義といえば加害者を絶対に許さないことで、連帯といえばRTとハッシュタグで実現するものになってしまった世界においては、ぼくの居場所はまったくない。この状況は10年ぐらいで変わるのかな。変わって欲しいなあ。”

そう、アーティストといえば判で押したように反体制、スタイル、ポーズとして反戦・反差別。自分が反対しているものの本質と対峙することなく、詮ずるところ、自分だけは清廉潔白な立場をキープしたい。

アーティストにかぎらず、クラスで孤立することなく平均点をとり、これといって劣等感や焦りを感じてこなかった凡人が、何か政治的な発言をプラスオンしようとすると、わかりやすい反体制・反権力の物語を鵜呑みにすることになる。
彼らは苦悩した経験がないから、浅いところで「分かりました」「私も同じこと考えてました」と理解したがる。何を見ても「カッコいいですね、これ欲しいです!」「すげー感動しました! もう、ボロ泣きです!」と、簡単に感情表現したがる。手痛い失敗をしてきた人間は慎重に、自分の感情すら疑ってかかるものだ。
幼稚な人間ほど、「傷ついた」と言えば、すべてが正当化されると思っている。


Twitterは、もはやトレンドが1~2日で移り変わる世界になってしまって、昨日は「いらないおじさん」であった()。
僕の根底には“自虐”があるので、「いらないおじさん」と言われるとドキッとしてしまう。コロナで自粛警察やってる我の強いおじさん達は、人間としてのレベルは低いけど、本人は醜悪なまでの強烈な自己肯定感に満ちていてるから、うらやましくもある。
(レジ袋が有料となり、袋が必要かどうか聞かれて、大声で「いらない!」と怒鳴るおじさん……同性から見ても、うんざりする。)

ただ、僕は人間として堕落したまま、向上心もなく生きていくことをイメージできない。無理なく好きなことだけやれる安穏とした人生を手に入れたが、緊張感を失うことが怖い。

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