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2020年7月25日 (土)

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「ベターマン」では、“身動きのとれないキャラクター”が世界の秘密を握っている?【懐かしアニメ回顧録第68回】(
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割といつも気にしている、「自由に動き回れない人物に感情移入してしまう」現象について書いています。

このコラムでは第1話についてだけ書きましたが、超人モノというか超常現象アニメ『ベターマン』は面白いです。1999年ごろは、まだまだ『エヴァ』ブームの余熱が冷めていなくて、作家性・企画性の強い自由奔放なアニメが、それなりの予算とスケジュールでつくられていた時代。90年代はシャープな線のシンプルなキャラが多くて、枚数が少なくてもそれなりに動きが映えるところもいい。
「スペシャルコンセプター」「造形師」など、今ひとつ役割の分からないスタッフもいて、豊かな時代だったと思う。06年ごろからソフトの売り上げが落ちて、失敗しないよう慎重な企画が増えてしまった。
90年代後半については、今後どんどん取材して、ゆっくりと検証したい。


さいきん観た映画は、DVDレンタルではパトリス・ルコント監督『列車に乗った男』、大学時代に授業で観た『宗方姉妹』など。
しかし、若松孝二監督が低予算で自主的に撮った『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』、アマゾンプライムで見はじめたら、あまりの迫力に度肝を抜かれた。
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男優・女優ともルックスの整った人を揃えており、「ハイ、ここは悲壮なシーンですよ」「ほら、このシーンは残酷でしょう?」と認識しやすい音楽の入れ方をしているのだが、どこかでフッと撮影現場の荒々しさ、俳優の生身が覗いてしまう瞬間があった。訓練されているはずの機動隊員が、雪原でずっこけたりするのだが、それがリアリティにつながっているのだ。
一方で、山荘で人質になる管理人の奥さんを奥貫薫が演じており、無用なお色気を発散しているのが気になる……これでは、普通の商業映画じゃないかと思う。
しかし、だからこそ、同じようにルックス重視で抜擢されたにキャストに違いない坂井真紀の演じる赤軍メンバーが、自分で顔を殴るよう強要され、ボコボコに腫れ上がった自分の顔面を鏡で見て慟哭するシーンの凄みが出る。

ルックスが武器であるはずの女優が連合赤軍のメンバーを演じるのは、映画を社会にスムースに流通させて、より多くの観客とコミュニケーションするための方便でしかない。「皆さんご存知の坂井真紀さんが出演してますよ、これはただの演技ですよ」と、商品的なインターフェースを整えるわけだ。
ところが、坂井の演じる役は「化粧をしている」「髪を伸ばしている」「オシャレをしている」と責められ、「二度と男に色目をつかえないよう、目もちゃんと殴れ」と命じられて、まぶたが腫れるぐらい顔が変形してしまう。
劇の内部において、女優という職業を、売りであるはずの顔面を、文字どおり「潰して」いるのだ。坂井の泣き方が痛切で、このシーンには戦慄した。


坂井の演じるメンバーを「オシャレを捨てられない」と責め立てる永田洋子に、ちゃんと男性の恋人がいるのには驚いた。
自分と同時代を生きていた若者たちが政治的理由から仲間殺しをした連合赤軍事件の異常性に興味がわいて、この映画を観たわけだが……なんだか、Twitterでのハッシュタグによる稚拙な政権批判、ツイフェミと呼ばれている人たちの男性への憎悪ツイート、同性への「男に媚びてる」などの批判ツイートを想起してしまう。ようするに彼らは、理不尽に暴力的なんだよ。

よく知っているはずの人が、唐突に「検察庁法改正案に抗議します」なんてハッシュタグを使いだした時は、怖かった。政治的だからではなく、その唐突感、理不尽さが。
赤軍派は「総括」などという誤魔化しの、いかにも政治っぽい頭の良さそうな難解な用語で、日常のさまつな苛立ちを解消しようとした。あの時代の「革命」がいま、「反アベ」に入れ替わったに過ぎないのではないか? 安倍総理はそのうち辞めるか死ぬかするだろうけど、そうしたらまた別の何かにブチ切れるんでしょ?

日常がつまらない、人生がうまくいかない。家庭環境に問題があった、学校でいじめられていた……結局、ネットに臓物のようにブチまけた罵詈雑言、不平不満は自分が直面してきた私的な問題が発生源だ。どうすれば楽しくなるのか、幸せになれるのか、それはやっぱり自分で工夫しなければ良くならない。自分の内部から目をそむけているから、暴走する政治が悪い、男たちの性的消費が悪い等、解決しようのない漠然とした理由を外部から接木していくハメに陥る。
彼らは、よく「ヘルジャパン」だの「日本、地獄かよ」と不満を口にするが、あなたの人生、あなたの直面している現実がつまらないのであって、自らの問題を先送りにしている膠着状態が「地獄」なんじゃないの?
ツイフェミの人、男性嫌悪の人が例外なく「反アベ」なのは偶然ではないし、ましてや彼らが正しいからでもない。慢性的なイライラを他人や社会や属性のせいにしたがり、自らは決して努力も工夫もしない性格傾向に過ぎない。

解放されて自由に生きている人間は、ああまで次から次へと怒りや憎しみの原因を探してこられないよね。そうでしょ?

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