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2020年3月17日 (火)

■0317■

「xxxHOLiC」は構図によって、秩序と混沌、神秘と通俗を描き分ける【懐かしアニメ回顧録第64回】
アニメや映画を「構図の使い方」という視点から評価している人は、とても少ない。もし構図やカッティングを“分かる”人がいたら、それはチャンスです。その審美眼は、お金になります。

EX大衆 2020年4月号 発売中
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●俺たちが好きなガンプラ
6ページ記事です。シャア専用ザクを素組みする記事は自分でラフを書いたけど、あとのページは文字ばかりになってしまいました。
模型誌に蹴られた企画が元になってはいるけど、もう少しグラフィカルに構成したかった。最終ページでは、山田卓司さんのコメントをいただきました。


最近、レンタルで見た映画は『マルホランド・ドライブ』20年ぶりに再見、『LION/ライオン 〜25年目のただいま』、『風とライオン』。

最初に『マルホランド・ドライブ』を見たとき、まだ30代だった。当時は漠然と、これが最先端の映画と感じていた。
いや、いま見ても次々と変な人物が出てくるし、異常なシチュエーションが相次ぐし、何より美女がエロいことをしてくれるので、まったく飽きない。だけどそれは、テレビドラマ的な面白さであって、「映画が機能している」わけじゃないのだと分かる。
ネタバレネタバレ言われるようになったのは、謎解きが主流のテレビドラマが流行ってから。謎解きがメインであって、劇的葛藤がない。

それに比べて、『風とライオン』はどうだろう?
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上の、剣をスラリと抜くカット。カメラが右にPANして、これから首を落とされる部下たち4人をナメてから、ショーン・コネリーの右手の動きをとらえる。シュルッと剣を抜くと、その抜いた動きにカメラが追従して、やや左に戻る。
全編、人物のアクションにカメラが追従していく。それが、この映画の思想なんだ。人物の生命活動がまずあって、カメラは人物たちに振りまわれされる。だから、すごくエネルギッシュだ。人物とカメラの関係が、劇的必然として機能している。
『マルホランド・ドライブ』には、見世物的な娯楽性がある。だけど、それは映画でなくて連続テレビドラマでいいじゃない?と思ってしまう。


アニメ作品の取材は、本当に減らせるだけ減らしているつもり。取材先と信用関係が築けそうな場合なら、こちらも前向きになれる。
ところが、僕の書いた原稿に修正が入り、一回目は技術的な知識についての追記だったので、もちろん納得した。本日、なぜかさらなる直しが入り、面白いエピソードが切られていた。おそらく、「こんなこと書いたら関係者に失礼だ」って程度のことで、何か強い意志があったわけではないだろうと思う。
アニメ作品は、「身内のスタッフに悪いから」レベルのことで、よく直しが入る。模型雑誌だって、いつも書いてもらっているモデラーさんが気を悪くするから程度の、ムラ社会みたいなルールで、こちらが意志を曲げさせられる。だから、発展しない。自分たちで相互監視して首を絞めて、「売れない、売れない」と嘆いている。
僕みたいな個人にだったら、いくら我慢をさせても平気なのは、リスクが低いから。恥を知らないんだよ。

そして、組織の内側から僕の記事に難癖をつておいて、「廣田が問題を起こした」と何年でも言いつづける。その担当者はサラリーマンだから、名前を隠したまま組織に守られている。
どういうことか、分かるだろうか? 個人の尊厳を踏みにじる社会が、活気づくわけがないでしょ? 
景気が悪くなってから、ずーっとみんな守りに入っている。
組織に隠れられる人は組織に甘えて、リスクを冒さない。2004年にイラク人質事件が起きたとき、「自己責任」という言葉が流行った。誰もが少しずつ自尊心を減らし、権威に頼りはじめた。自分だけは仲間ハズレになるまいと、他人に過剰に気をつかい、結果的にギスギスした社会になった(漫画やアニメのキャラクターをめぐる表現規制論争も、住みづらい世の中の端的な例だろう)。

どうして昔のアニメが元気いっぱいで、破天荒で、怖いもの知らずだったか、考えてみたことがあるだろうか?
いつの間にか、他ならぬアニメファン自身が「この表現はアウト」「セーフ」と判定するようになってしまった。肝心なことは「ネタバレ」で口にするのが禁忌になってしまった。
そんな停滞の中で希望を捨てないためには、具体的に企画を立てて行動して、本質的な仕事を実現させるぐらいしかないでしょ? 虚無的になっている暇なんて、僕にはないんだよ。

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