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2019年10月 6日 (日)

■1006■

レンタルで『マディソン郡の橋』、ルイ・マル『鬼火』。
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『マディソン郡~』は、当時言われていたように陳腐な昼メロなのだが、最後には泣いてしまった。僕だって、映画を観て泣く。というか、たいていの映画で泣いている。ただ、「泣いた」ことをもって映画の評価に代える、「私の情動が最優先なので、それ以上は語りたくない」「ネタバレになるので言語化しない」という態度には、背筋が寒くなる。「泣いた、泣いた」で、どんどんバカになっていく。
「泣いた」と「ネタバレ」は、「誰かにとって不快な表現は法律で禁じろ」式の、思考の手抜きに直結している。「犯人が憎いから、裁判抜きで死刑にしろ」……情動を最優先すると、結局はそこへ漂着する。


クリント・イーストウッドとメリル・ストリープが互いを誉めながら惹かれあっていく様子には、鼻白む思いがするのだが、ほぼラスト近く、2人が再会するシーンで一気に惹きこまれた。
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イーストウッドはトラックから降りて、雨の中、ストリープの方へ歩いてくる。しかし、ストリープは旦那と買い物に来ているため、自分たち夫婦のトラックの助手席から動けない。
彼女の脳天を打ちのめすように、雷の音が大きく響き、不意にカットが切り替わると、それは旦那がストリープの横に乗り込んでくるアクションの途中である。
イーストウッドはトラックに戻り、夫婦のトラックのすぐ前を走る。ストリープは今すぐにもドアを開けて、イーストウッドのところへ行きたい。ところが、旦那やイーストウッドは自分の感情で動いているのに、ストリープは旦那の横から動くことが出来ず、ただ、イーストウッドの去りゆくトラックを凝視しているだけだ。

つまり、「自分の意志で動けず、ただ事態を見ているしかない」登場人物に、「ただ映画を観ているしかない」観客は感情移入せざるを得ない。登場人物に共感させるには、演劇や小説とは異なる映画独自の手法・メカニズムが必要になってくるのだ、と意識しておいてほしい。
「泣きました!」ですませていると、どんどんバカになっていく。「浮気は許せないので、この映画の登場人物には感情移入できません」とかさ。劇の外と中をゴッチャにした倫理観も、バカの兆候だと思うんだよな。


先日、知り合って日の浅い人に「NHKから国民を守る党に投票したし、立花孝志を支持している」と言ったら、「ええーっ」と呆れられた。彼は「俺は左翼といってもいいような人間ですよ」とも言っていたが、僕だって今後、共産党やれいわ新撰組に入れるかも知れない。
それで彼とケンカになったわけではなく、脱原発デモや秘密保護法に反対する活動をしていた自分が、単に「右傾化」しただけかも……と、立ち止まって考えるキッカケになった。

立花さんは揚げ足をとられる言動が多すぎるので、さすがに少し気をつけてもらいたいが、忘れられない動画が、いくつかある。
そのひとつは、6月の臨時総会のもの()。9分あたりから、能力の低いボランティアの人の仕事を奪いたくない、失敗しても構わない単純作業をあえて作る……という話をしている。「伊藤くん」という人の話をしているうち、ちょっと涙声になって、後から「伊藤くんを見ていると、自分の辛かった時を思い出す」と、ちょっと言い訳のようなことを言っている。
「頭の悪い民族は虐殺しよう」なんてことを、自分の理想や野望としてストレートに、ダイレクトに語るような、そんな便利な分かりやすい人間ではないよ。彼の中にも、俺の中にも、神と悪魔がいる。俺の父親は殺人犯だし、「決して人を殺さない」人間なんて、この世にいない。人を生かしうる人間は、同時に人を殺しうる。


国会議員や政党の偉い人たちが、立花さんの元発言を精査しないで、単なる「ええカッコしい」で「人道的に許しがたい」とか何とか、耳障りのいい綺麗事を紋切り口調で並べていることの方が、俺は恐ろしい。そうやって議論や考察、検証、思考が空洞化していくんだよ。どんな映画を観ても「泣いた」「ネタバレだから詳しくは言えない」、それと同じこと。しょせん、言葉にするほどの事じゃないんだろ? 信念もなければ、自分が何にどう感動したのかも探ろうともしない、「お気持ち」がすべて。この20年ぐらいの日本人、ずーっと「お気持ち」主体だよね。

日常の中に、どうにも解決できないモヤモヤがあって、そこに「アベ政権」あたりをポコッと当てはめているだけじゃないの? 
仲間と当たり障りのないデモをやって「増税されちゃったけど、次こそがんばろう」「まだ次があるよ、次が」……その人の生き方が、ぜんぶ露呈しているよね。本気じゃないんだよ。本気だったら、右翼であるか左翼であるかなんて関係なく、互いに認め合えるはずじゃないだろうか。

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