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2019年9月13日 (金)

■0913■

国立新美術館へ、『話しているのは誰? 現代美術に潜む文学』へ。
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現代美術家6人のグループ展で、写真からインスタレーションから映像から、いろいろ見られて1,000円は安い。
原爆や沖縄の基地問題をテーマにしているけど、入場時に渡される解説書を読まないと、なんだかサッパリ分からないと思う。でも、僕は自分の「感性」なんてものだけを頼りにする方が、よっぽど怖い。解説書も含めて作品なのだ、と考えた方が絶対に得だ。プラスになる。

山城知佳子さんの作品は、30分ほどの短編映画。といっても、これといってストーリーがあるわけではなく、沖縄で絵画を制作する様子をドキュメンタリー調に撮ったり、琉球語で行われる寸劇を撮ったりしている。
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上の画像はワンシーンだけど、アスペクト比が変でしょ? スタンダードより横幅が狭い、IMAXに近いんじゃないの? だけど美術館の一角を暗幕で仕切っているだけなので、スクリーンは小さい。その代わり、スクリーンの横に大きな樽が転がしてあって、上映と上映の間には天井からスポットライトを床に当てて、馬の走る音を流したりして、ムードを高めている。
こういう、空間丸ごとを使って「上映する場」を作るのであれば、3Dでも4DXでもいいんじゃない? もちろんIMAXデジタルでも。


だけど、新美術館はサンドイッチもおいしいし、何より空間の使い方がいい。窓から見える樹の配置、ガラスや木材の配分。椅子の傾き、配置、すべてが優れている。すべてが創作的。「勉強になる」というか。
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乃木坂駅から直通で来られて、帰るときは美術館の中をつっきって、そんなに暑くもないので六本木駅へ抜ける。
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大袈裟かも知れないが、サンドイッチやコーヒー、六本木の裏側を歩く道、人々、それらも含めた巨大な空間、歩いている時間までもが「作品」という気がする。……そう考えたほうが、将来、ひとつの価値観として実を結んでくれそう。正直に言うと、映画館へ行って「帰りの道まで作品の一部だ」と感じたことは、一度もない。
まあ、上野の美術館も意味なく有名俳優を使って客寄せしたり、ひどいもんだけどね。新美術館は別格と思っている。来月も、きっと行くよ。


トイレを我慢させられる映画館よりは、寝転んで家で観られるレンタルDVDの方が、僕には向いている。最近観たのは、クリント・イーストウッド監督の『恐怖のメロディ』、ウィリアム・ワイラー監督の『ローマの休日』。
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『ローマの休日』は大学の授業で観たはずなんだが、今回のほうが良かった。
Twitterでも指摘したが、アン王女が宮殿を脱け出す時、三輪トラックの荷台に忍び込む。トラックが走り出して、ローマの庶民的な風景が見えると、笑顔になった王女のまわりで、積まれているビンや鍋などの金物がガラガラと音を立てる。その音が、王女の喜びを表現している。拍手のようにも、笑い声のようにも聞こえる。
そうやって小道具を使ったり、構図を使って何とかして登場人物の「内面」とか「気持ち」を物理的に表現するのが、僕は映画だと思う。セリフで「嬉しい」と言わせれば喜びが伝わるのだろうか? それでは、表現になってない。


ところがね、アン王女とグレゴリー・ペックの記者とが別れるでしょ?
孤独なペックのところに新聞社の上司とカメラマンが来て、約束の特ダネ記事はどうした?と詰め寄る。上司を帰したあと、ペックは2人の思い出を記録してくれたカメラマンに「もう特ダネ記事なんて書く気はない」と告げる。カメラマンは「でも、写真はいい出来だよ」と、2人で王女の写真を見はじめる。
このシーン、不思議と胸がしめつけられた。なぜだろう?と、考えた。2人は「この時は、本当に驚いたなあ」「この写真にタイトルをつけるとしたら……」と盛り上がる。劇映画というフィクションの中に、さらに写真という虚構を設けることで、シーンの実在感を強調している……いや、逆に「あのシーンもこのシーンも、映画なんてぜんぶ作り事だ」と確認しているようにも見える。だから切ないのだろうか?

演出としては、演劇でも成り立つ凡庸なものなんだけど……。分からない。
上に書いた荷台でビンや金物が鳴るシーンは、この映画の中で「映画」が機能している数少ないシーンだ。あとは、通俗的な「ドラマ」であるに過ぎないと思う。だけど僕は、グレゴリー・ペックが写真を見るシーンで、背後から盲点を突かれた気持ちになった。

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