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2019年8月26日 (月)

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親子で楽しむ かんたんプラモデル
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『我々は如何にして美少女のパンツをプラモの金型に彫りこんできたか』以来の著書、ようやく発売となりました。
親子向けどころか児童書にしよう、というコンセプトは編集者が立てました。その軌道修正によって、中身を子供向けにしたりはしてません。あいかわらず、「プラモデルを素組みすることの醍醐味!」を、豊富な写真とリリックな文章で伝えています。
本のテイストとしては、編集者と「こんな本にしたいよね!」と持ち寄った参考資料が、たまたま同じ料理の本でした。なので、料理の本のように手をいっぱい入れて、温かみのある写真を撮っています。

月刊モデルグラフィックス 2019年10月号
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組まず語り症候群 第82回
今回は、ペガサスホビー製の「クレーター」展示台を取り上げています。


本日も、「NHKから国民を守る党」の話題。
僕は党首の立花孝志を知る前からNHKには爆発的な不満を持っていたので、世界で僕1人だけになっても不払いは続けます。納得できる理由があるなら、僕は一億円でも百億円でも払いますよ。集金人に何度もウソをつかれ、嘲笑われて脅されて、どうしてお金を払わないといけない? 納得できる説明を、何度となくNHKに求めてきました。何年たっても、騙して脅してまで僕に受信料を払わせる理由を、ただの一言も聞かせてもらえていません。
どうしても僕から金を取りたくば、殺して奪っていけとさえ思う。

もし集金人がウソをつかない誠実な人だったら、NHKとは、こんな関係にはなってなかったと思う。テレビを捨てたりもしなかった。
また同時に、自尊心の持ち方、権利意識についても、真剣に考えなかっただろう。NHKにいいように卑しめられたから、僕は自分が何者なのか考えるようになった。……原則的に、僕たちは「長いものには巻かれろ」「自分の意見など持っても無駄」と、義務教育で叩き込まれて育った。なので、個人が意志をこめて自分自身を大事にするための勝算の薄い戦いを、ほとんどの人たちはバカにする。


Twitterの反応を見ていると、なかなか面白い。
N国党への嫌悪をあからさまにしている人は、正義感の強い人が多いと感じる。右も左も関係なく、生真面目なタイプが多いのではなかろうか。
(このブログに言いたいだけ意見を書いて、自分のTwitterアカウントは先回りブロックして反論不可能にしたものくるさん()は、臆病者かつ卑怯者だと思うけど……)
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「ああ、なるほど」と納得した言葉にも出会った。
デュープスだ。意味を調べてみると、思い当たる。優れた表現者なのに、自分から物事を調べず、左翼的な発言を迂闊にしてしまう人は、僕の知り合いにもいる(というか、反原発運動に参加していたころの僕がデュープスだった)。
二言目には「アベが悪い」と言う人は、それで気が晴れるなら構わない。「すべては在日外国人の陰謀だ」と同じぐらい、その人にとっては精神安定効果があるのだろう。

駅前図書館まで、盲目の人に肩を貸して、送って行ったことがある。その方は、「この通りは歩道が狭くて、危ないでしょう?」と指摘する。確かに、その通りだ。「これは、今の市長が悪いんですよ。余計な建物にばかりお金を使ってるから」「もっと言うと、アベってのは最悪だよねえ」などと愉快そうに話すので、聞いていて不快にはならなかった。「在日韓国人が悪い」などと言われたら、ちょっと複雑な気持ちだったろう。
左翼思想まで行かず、やや反権力的なスタンスのほうが健全ではないか?程度に、僕は思っている。ただ、すべてアベ政権が悪い、あの件が解決しても今度はこの件が問題だ、日本は狂ってる、日本は滅びると不満と憎悪をエネルギーにかつかつ生きている人は、破滅的で少しも共感できない。海外に移住して優越感を持っているはずなのに、日本国内にアレコレと問題点を見つけては口出ししてくる人も、結局は自分の人生が楽しくない、その根本原因を解決できてないんだろう。
デュープスも、手っ取り早いところに諸悪の根源を設定して、本来、自分が対峙すべき心の問題から逃げてるんだと思う。そういう手近なところに、N国党はスッポリと収まるのかも知れない。デュープスは例外なくN国党を嫌悪して、結局は理不尽な利権組織であるNHKの片棒を担いでしまっているよね。
貴方にとってNHKが必要で、貴方がNHKを信じているなら、今後とも黙々と受信料を払いつづけて、組織を支えてあければいいんじゃない? 俺は嫌だがな。


自分こそが愚かではないのか、無知ではないのか、間違っているのではないかと疑いたくない人が、こんなに多いとは思わなかった。
「新日本婦人の会」の人たち、彼女たちの意識の根底にあるのは「私たちを批判する者は、政治的な敵対者である」という断罪だった。Aに賛同しないなら、反A派に違いない、という危険な考え方。そう断じないと正気を保てない人たちの集まりが、新日本婦人の会なんじゃないか。
だとしたら、気の毒だ。組織力に甘えきった驕った態度には腹が立つけど、日本婦人の会は本気で憎めない。

結局は人生を楽しいと感じられるかどうか、自分を愛せるかどうかの問題なのだろう。
『かんたんプラモデル』だって、どうせ子供たちが読むなら、君たちの指先の仕事はどんな楽をしても構わないし、すべての作業にちゃんと意味があるよ、無駄じゃないよと伝えたかった。「プラモデルって難しいよ、アレとコレを覚えて、がんばって自分の個性を出して」と教えたがる人は、自分の人生をまずは楽しくする必要がある。

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2019年8月19日 (月)

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「雲のむこう、約束の場所」――“垂直”と“水平”が織りなす新海誠のユートピア【懐かしアニメ回顧録第57回】
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今、ほとんどの人が映画をストーリーでしか捉えられていないので、構図にテーマが組み込まれていることに気づいている人は、かなりお得な見方をしていると思う。プロによる映画評論も、質的には「ストーリー批評」の域を出ておらず、だから「ストーリーの結末」が「ネタバレ」しないように……といった閉塞状況に陥っている。
「感動した」「泣いた」なんて感想は検証しようがないけど、画面の中に垂直のものと水平のものが交差している……という話なら、第三者による再検証が可能で、そこから建設的な評価が始まるものと僕は信じている。


「NHKから国民を守る党」は話題性が高いので、ブログに書いたら何かしら反発は来るだろうな……と思ったら、ものくる(@monocuru)さんという人から書き込みがあった()。このやりとりの後、俺はTwitter上でブロックされてしまったけど、メアドとIPアドレス検索したら、数分でこの人に行き当たった。本名も教えてくれたけど、ふだん匿名の人がいきなり本名を名乗っても、何の信用にもならない。
僕の発言や活動にわずかでも説得力があるとしたら、名前・顔・職業などを継続的に明らかにしてリスクを払っているから。ものくるさんは、ブロックされる前にアカウントを見たらコスプレイヤーの撮影をしている人のようで、ようは趣味アカウントだよね。それは楽しみでやってる活動だろうから、別に責めないし追求もしないよ。だけど匿名で趣味の活動しか公開してないってことは、それだけ発言の信用度も低く見られる。まして、僕はものくるさんを初めて認識するのに、相手は挨拶も自己紹介も一切ナシだしね。

ものくるさんは「僕自身匿名であってもそういったリプはダメージになります。ましてや廣田さんは実名でリスクを負いながら意見を発信されているのですから」と理解を示した風の書き込みをしているけど、名前と収入が直結している人の立場を、そんなにも簡単に分かったフリをして、飽くまで対等に立とうとするから、さらに信用を失うんだよ。
立場の違う相手に「ハイハイ、分かってますよ」「あなたの気持ちは理解できますよ」などと浅はかにリアクションする弊害のほうが、僕はものくるさんの言う「正しい意見を黙らせようとする」ことなんかより、根が深く傷も深いと思うよ。ここで俺が「分かってもらえて嬉しいです」なんておためごかしを言ったら、そこから後はウソをつき続けるしかなくなる。(そもそも、俺の意見が必ず正しいなんて、あなたそんな簡単に言って大丈夫なの? 俺が絶対に性犯罪者ではないと証明できるんですか? ……話の流れが見えない方は、前回記事のコメント欄を読んでください。) 


N国党の話題からはズレてしまったけど、あれほど無名でキワモノだった(今でもキワモノだと僕は思ってるけど)N国党がここまで話題になっていることのメリットは、僕ら有権者のバケの皮を剥がしてくれたことだろう。だって、2012年ごろの立花孝志代表が心を病んでいたころの発言までスクショで発掘し、「精神分裂病」と責め立ててる人までいるんだよ? どこをどう掘れば、そこまでドス黒い悪意が沸いてくるんだよ?
「N国党に投票した人に罪がある」どころか、「投票した連中の住所を公開してほしい」なんて人までいる。ユーゴスラビアのように、隣人同士が殺しあうような日が来るのかも知れない。NHKの集金人が家で大声を出したり、住民にキスしたり、子供を泣かせたりすることを見逃してきた人が、そうした蛮行に我慢できなくなった被害者たちを「晒せ」と迫る。人間は本能を理性で押さえつけているので、僕は別に驚きはしないよ。NHKが存在し、いまだ圧倒的多数の支持を受けていることが、理不尽の象徴だと思っている。NHKが『ガンダム』や『プリキュア』や『このセカ』を扱うことも含めてね。
一点の曇りなく清く正しいことなんてない。どんな事でも、少しずつ汚れている。

僕はNHKに、ウソをついてドアを開けさせる集金人、「個人情報を近所にバラす」と脅してくる集金人は何なのか、と電話や手紙で何度となく質問を繰り返した。NHKは一言も答えず、ただ「法的手段に訴える」と、脅迫めいた文面の請求書を送ってくるだけだ。
もし立花さんが消えたとしても、俺はひとりでNHKと戦う。負けつづけの自分の人生を、これ以上、屈辱と劣等感で汚したくないんだ……。

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2019年8月15日 (木)

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EX大衆 2019年9月号
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●ドラゴンクエストの文化史
『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』にかこつけて、我が国のハイ・ファンタジー浸透の系譜(文学・映画・ゲーム・漫画の歴史)を、年表にまとめました。『ユア・ストーリー』自体は試写で見て、編集者と意見が分かれました。彼は怒っていたけど、僕は山崎貴監督の映画ごときに腹を立てるのは時間がもったいない、という考え方。メタ・フィクション的なラストは、『ホーリー・マウンテン』をはじめ、珍しいものではない。いろんな種類の映画を見ておけば、驚くことはない。
【プラモデガタリ】で述べてきたように、映画の進歩は1980年代前後で停止しているのだと思う。だから今、80年代にヒットした映画の続編が次々と製作されていてる。90年代以降、世界の映画が抜本的な変化を迎えられなかった証拠ではないだろうか。


NHKから国民を守る党が、有権者をバカにしたマツコ・デラックスの出待ちをしたため、一気に話題をさらってしまった。無論、否定的な意見が大多数。立花孝志党首の狙いどおりと思う。
「国会議員は仕事しろ」という方、あなたの投票した議員は毎月いくら貰って、今日何をしているのだろう? 答えられないと思う。立花議員は、赤裸々にYouTubeで公開している。議員報酬、YouTubeの広告収入、誰にいくら払った、今度はこれに金を使う……など。
国会議員は議会で難しいことを言うか、あとは居眠りしているだけ……というイメージの人が多いのではないだろうか。N国党は政見放送も「ふざけている」と叩かれたが、真面目に難しいことを淡々と喋るのが政見放送だ、難解なのが政治家の仕事だという思い込みがある。どうも皆さん、政治を自分の生活と遠くに置いて、なるべく関わり合いを持ちたくないようだ。

あと、立花議員のふるまいを「狂っている」という声も多かった。
そこまで自分を正常と信じている人の多さに、僕は驚かされた。「常識からすると」「普通の感覚では」と前置きする人もいた。自分を「普通」と考える、その無責任さが恐ろしくないのだろうか。
「日本はここまで狂っているのか」と言うなら、その「日本」の中にあなた自身も含まれているだろうに、どうして高みから評論家のような欺瞞的な態度をとれるのだろう? 当事者意識不在のまま死ぬほうが、俺は恐ろしいわ。


僕は立花議員がN国党を旗揚げする何年か前から注目していたが、それは僕自身がNHKの集金人に恫喝を受けていたからだ。
集金人とのやりとりの一部始終をカメラに収め、堂々とYouTubeにアップしているのが、立花さんだった。それまでニコニコと話していたのに、相手がウソをついた途端、ガラリと口調を変えて凄むさまはヤクザそのものなのだが、何に対してどう怒って、どうすれば納得するのか、見事にスジを通していた。ケンカのしかたが抜群に上手い。警察も呼んで証人として使うし、裁判も山ほどやって、いつも勝つとは限らない。負けたときも、正直に「負けた」と話している。
ズルをして勝ったり、負けたのに勝ったフリをしても空しいだけだと彼は知り抜いている。

そして、路上で怒鳴りあうほど犬猿の仲だった相手が、病気か事故で死んだらしいとの報を聞くと、立花さんは間違っても「ザマアミロ」などとは言わない。「また俺のこと怒鳴りにきてくれよ……」と言いながら、泣きそうになっていた。演技ではなかったが、効果を考えてアップしたのだと思う。クサい演技などたちどころにバレると、彼は知っている。だから、間違えると誤魔化さずに謝る。
そうした戦略の上手さに、僕は惚れ惚れする。


いまTwitterを見たら、「N国党は自民党の別働隊」だそうで、僕は『陰陽師』に出てきた「こちらの心の動揺は 向こうの動力源となる」という言葉を想起してしまう。今になって、みんな慌てている。一週間もすれば、落ち着くところに落ち着くだろう。
N国党を「ナチスドイツのようだ」というお決まりの比喩もあれば、「オウム真理教をこえる危険な組織」と断定しているアカウントもあった。そんなに危険なんだったら、あなた自身が警察に危険性を訴えるなり、訴訟でも告発でもすればいいでしょ? なんでそんな他人事なんだろう? 「ヤバイぞ危険だぞ」って、しょせんポーズだけなんだよね? だから、いつも負けるんだよ。いつも何かのせいにして、自己実現できないままなんだよ。

期末テストの前、「直前まで教科書やノートを見ながら焦る」芝居が中学時代、よく流行っていた。
「ヤバイぞテスト赤点だぞ」って焦ったポーズをとっていないと、教室にいられない雰囲気。言うまでもないが、たかが数分間教科書を見ていたって、テストの結果なんて変わらない。だから僕は、何も机に出さずにジッとテスト開始を待っていた。すると、「余裕だねー」と、これまたお決まりの台詞が飛んでくる。「もう諦めてます」と、僕は心にもないことを言わねばならない。
ああいう芝居じみた世界は、もうご免なんだ。仕事でも「徹夜しちゃいました」、「時間がない」、コミケ前に「原稿やれ」とかさ。「不甲斐ない自分を演じる癖」が、義務教育時代から抜けておらず、その無責任な態度が政治を空疎なものにしている。

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2019年8月11日 (日)

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■J GROUND EX No.5 発売中
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フジミ模型さんのプラモデル「1/72 陸上自衛隊 99式自走155mm榴弾砲」の開発プロセスを取材し、企画~テストショットに至るまで4ページに構成しました。もちろん、素組みのキットも塗装せず、堂々とカラーページに掲載しています。イカロス出版さんの本では、「J Wings」に続いて、プラモデルを素組みする記事を掲載しました!


最近観た映画は『大脱走』(二回目)、『ジンジャーとフレッド』、『天井桟敷の人々』、『三つ数えろ』など。
しかし、コラムを書くためにNetflixでアニメを見ていたら、かなりエグいエロ動画……というか、小汚い邦画の宣伝が流れたので、ギョッとした。タイトルは『全裸監督』。なんだ、セックスだとかのぞきだとか盗聴だとか、この汚い映画だかドラマは! どうにも気になって見はじめたが最後、Netflixオリジナルドラマ『全裸監督』()全8話のトリコ仕掛けの明け暮れとなってしまった。
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村西とおる、黒木香……80年代当時は、大学の友だちが噂していた程度で、僕はAVはもうちょっと純情路線というか、秋元ともみのように純愛的なセックスを愛好する偽善者だった。セックスと笑いを組み合わせるのが、好きじゃなかった。
『全裸監督』は村西とおると黒木香が、やや異常な境遇、でもかろうじて一般人だった状態から、ちょっとずつエロの世界、AVの世界に輝かしい人生を見い出していく過程をカットバックして描き、最後は昭和天皇崩御で幕を閉じる。

ドラマとしては、かなりドタバタ。やや盛りすぎて戯画化された部分もないではないが、80年代風俗の再現は、たとえば遠景にチラリと映る東京タワーの塗装が現在と違うとか、かつて歌舞伎町で流れていた「1時間800円!」のテレクラのエンドレス宣伝に至るまで徹底している。さまざまな看板や貼り紙にあふれた町並みは一部、CGだと思う。それぐらい金はかかっている。80年代だから、『プロジェクトA子』や『新くりいむレモン』のポスターも出てくる。

僕が泣けたのは、1話かぎりで消えてしまう借金まみれのAV女優が歩く、朝の歌舞伎町。カラスまでフレームの中にピタリと収まっている。あちこちで、どんよりと頭を垂れているキャバ嬢や酔っ払い。あの泥まみれの朝の風景を、僕は肌身におぼえている。
そう、この汚れた世界の中に、僕らは自分自身を見い出す。僕らはキレイでも高尚でもない、一皮むけば下半身の奴隷である。自分のドロドロした欲望を認めたとき、僕らはこの温かく湿った世界に受け入れられ、果てしなく肯定される。


このドラマは、意図的に飯を食べるシーンを多く挿入している。ライバルのAVメーカーの社長も、いつも厚切りのステーキを食べている。
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やがて黒木香としてデビューする女子大生が訪ねてきた時、村西は「とにかく、みんなと一緒にメシを食べろ。腹ごしらえだ」と、輪の中に彼女を導く。それだけでジーンとしてしまう。
そのまま、黒木は村西に抱きとめられ、生まれて初めて解放される。すさまじいセックスが展開されるが、その背後で、村西のスタッフたちは無言で照明やカメラを手にする。彼らにとっては、生のセックスと創作は渾然一体、分けられないものになっているのだ。

また、黒木の母親役の小雪と村西役の山田孝之が顔をあわせたとき、そこには怪獣映画でゴジラとキングギドラが相まみえたかのような、強烈な熱気が立ち込める。このドラマには、役者と役者が作品を飲み込んでしまうような瞬間が、あちこちにある。それは本能と本能の対決と言っても過言ではない。
あれだけのクソみたいな自主規制で作品から抹消されたピエール瀧が、レンタルビデオ屋の店長を生き生きと演じているのも痛快だ。このドラマにはコカインではなくシャブが出てくるが全くお構いなし、まあとにかく、そんな空虚な地上波テレビ的な常識だの倫理だの踏み越えた向こうに広がる真実の戦場、真実の楽園を追い求めるドラマなのだ。
これは芸術家たちのドラマだ。死んだように人の命令だけ聞いてるテレビ屋たち、プライドばかり気にしている正義ヅラの俳優たちはすっこんでろ、そういう世界だ。


あいちトリエンナーレで、これが正しい表現だ、いや表現の自由にも限度があるなど、政治家たちも交えてくだらない論争が展開されている。
お前ら、芸術をなんか頭の上にふわふわと漂う高尚な抽象的な理想だとでも思ってるだろう? 自分の股間に聞いてみろ。もっとゲスいもの、俗悪で低俗で恥ずかしくみっともなく、他人に見られたくないもの、だけど自分は見たいもの、そのエゲつない欲望が「芸術」に最も近いように、今の僕には思える。
なので、文化人や政治家の言葉は右であれ左であれ、少しも僕の胸に響かない。表現の自由もへったくれも、人間は見たければ見てしまう、そういう救いがたい生き物だ。

『全裸監督』は、村西とおるがビニ本の世界に目覚めるシーケンスから輝きはじめる。熱烈に女優をディレクションする村西、オナニーしながら「ああ、イクイク、行きましょう!」と、彼の参謀になる男が言う。「作りたいものを作るんです!」
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この一言に、深夜の僕は震えるほど感動した。もう怖いものなんてない、そう信じられた。

日本は、本当に貧しくなった。経済的に、そして精神的に。攻撃をおそれて、過剰防衛するようになった。あらゆる表現が、自主規制状態に甘んじている。当たり障りのないノスタルジー、薄甘いヒューマニズム、笑って泣ける健全なドラマがエンターテイメントだと勘違いされている。
しかつめらしい、真面目ぶった臆病者の日本を裏側から力づくでブチ抜くような作品が出て来たことを、僕は心から祝福する。そして捨て身のセックスシーンの数々に、遠慮会釈なく勃起させていただいた。この国は、まだまだやれるはずだ。

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2019年8月 4日 (日)

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“「自分のことを最高に嫌って憎んでいる人間」が国家権力を握ったとしてもそれでもなお最低限守られるべき権利ことを「人権」と言うのです。”
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僕のイベント (上の画像は友人のべっちん氏が撮ってくれたもの)に関連して、先日の新婦人の会・国分寺支部さんから寄せられたツイート“「招待を騙ったお呼び出し」をして、行けば写真撮って、実際邪魔してもいないのに「これがノコノコイベント妨害にやってきたおばちゃんたちです」って晒す計画の釣りなんじゃないか”()……もう一度、ゆっくり反芻してみたけど、やっぱり婦人の会は妄想を動員してまで「抑圧され、傷ついているのは私たちの方」という構図をつくり上げ、僕を抑圧者に仕立て上げたい、その方が有利だし気分もいいって本能的に察知してるよねえ……。

そして、新日本婦人の会は8/1にコメントを発表していた。
“戦車掲載の絵本『はたらくくるま』増刷中止、「自衛隊展示中止」への嫌がらせと攻撃について” 

“兵庫県本部のツイートには、改憲と排外主義の極右勢力からのコメントがSNSを通して大量に送りつけられ”……いやだから、そうやって批判相手の属性を自分勝手に決めつけるから、ただの批判が歪んだ政治色を帯びて対立が激化してしまうんだと思うよ?
“顔写真の無断撮影などの事態が続いています。”……そうなの? 誰がどこで撮影したんだろうか。それで、僕も「写真を撮って~晒す計画」などと疑われてしまったのだろうか?

とにかく、自分への批判相手を一種類だと決めつけるのは、たとえばネトウヨの人たちが異なる意見をすべて「反日勢力」「在日」「特ア」と括ってラクをしているのと同じになってしまいますよ?
他にも悪手じゃないかと感ずるところ、事実無根ではないかと疑わしいところもあるんだけど、批判したら一発で僕も「改憲と排外主義の極右勢力」に組み込まれてしまうのだろう。そこが怖い。僕の中には左翼的な部分と右翼的な部分が、矛盾しながら混在していると思う。しかし、彼女らを批判した途端、「極右勢力」などと思想的に都合よく均されてしまう……。それを僕は、何よりの抑圧と感じている。きっと僕は、「極右勢力」と認定されないために、思ってもないことを口にして中立であることを強調するか、安易なネトウヨ的言動に染まるか、選択を強いられることになろう。単なるレッテル貼りのせいで。 


別に、共産党の関連団体でも安倍政権打倒でも、なんでもいい。世の中、なるべく色んな考えが共存すべきと思うから。ただ、「私にそのような印象を持つな」「私のことは、このように思え」と相手に命ずるのは、社会的に未熟な証拠だ。
(……というか、なぜ新日本婦人の会に危険さを感じるのかというと、自分たちへの反対意見をすべて攻撃と受け取る、病的なまでの潔癖さだよね。彼女たちは「自衛隊を解体しよう」と、長期的・具体的・合理的な方策を立てているわけではない。書籍や催事に自衛隊を見つけたら、即殲滅。サーチ&デストロイ。目の前から消し去って満足、という姿勢が怖い。「まだまだ自分たちも未熟かも知れない」「間違っているかも知れない」といった冷静さ、「原則はあるにはあるが、まあ今回は例外としましょう」といった余裕がない。冗談が通じない。僕の心証だけど、いつも頭に血がのぼっているネトウヨと変わらない。極右と極左は、イコールなんだろう。
潔癖で神経質で、頑迷固陋ゆえに生きづらいタイプの人たちが互助会のように集まって、おそらくは「ちょっと待ってください」と異論をはさむ人を排除してきたんではないか……という気がする。)


僕はイベントやったり商業本を出している以上、多少のリスクを抱いている。来月出る『親子で楽しむ かんたんプラモデル』()には、戦車や戦艦のプラモデルもいっぱい掲載されているので、増刷中止になると著者は赤字のままなので、困るわけです。
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悪いけどね、自分から発信せずに流れてくる情報をいいの悪いのツイートするだけの人は、気が楽でしょうよ。
僕は、本が増刷されねば赤字で、生活がかかってるんです。

それと、戦車や戦闘機や戦艦のスケールモデル全般が今後、批判のターゲットにされる可能性も十分にありえますよね? その時、模型業界はどう対応する? 僕の中に「兵器に幼稚なフェティシズムを感じること」に対する疑念も、ないではない。そういう意味では、実は新日本婦人の会の人たちの異常なまでの潔癖さ、兵器への嫌悪感は参考になるはずだ。
そのように考えねば、僕の人生は焼け野原になってしまう。

「あいちトリエンナーレ2019」についても触れたかったが、次の機会にしよう。

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2019年8月 3日 (土)

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【模型言論プラモデガタリ】第7回、「キャラクター化する自衛隊!」は、大盛況のうちに無事終了した。お客さんの数はいつもの半分程度だったが、その分、客席とのやりとりが緊密で、まさかと思うような濃い情報が飛び交って、熱いトークになった。
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この写真は、第2部から登壇していただいた編集者の吉祥寺怪人さんが、舞台袖から撮ったもの。
フジミ模型の井上聡常務の自衛隊車両への取材ぶりに、元自衛官のかざりさんが「ヘンタイ…」と呟くなど、ゲスト同士の親密さも良かった。かざりさんは賑やかしのアイドルってわけではなく、受け答えが柔軟で嘘がなく、芯のしっかりした女性だった。フェミニンな黒いブラウスで来場して、観客のために迷彩Tシャツに着替えたプロ意識もいい。とにかく、みっちりと充実した時間だった。


ただ、僕は開演前、めずらしく不安定な精神状態だった。
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自衛隊の戦車や装甲車を掲載した絵本『はじめてのはたらくくるま』に抗議して、増刷中止に追い込んだ新日本婦人の会、この団体の兵庫県本部が大丸須磨店というデパートでの自衛隊展示イベントに中止を申し入れたそうで、 阿佐ヶ谷ロフトAにも支部だか本部だかが乗り込んでくるんではないか? だったら宣伝に使ってやれ……と、「圧力かけないでくださいね」と、しつこくツイートしてみたのである。
「ドリンクを一杯おごるから、自衛隊への偏見はやめてください」とか。別に俺のツイートは削除してないから、検索して探してみて。

で、新日本婦人の会・国分寺支部から「ドリンク一杯で考えを変えるわけがない」「便乗して宣伝しないように」と返信が来て、まあそりゃあ怒られるよね。
「子供の来る大丸須磨店のお祭と、同好の趣味のイベントとは別」だそうで、ごもっとも。別に抗議も何もしないそうなので、「貴団体のお考えが分かって、よかったです」と、俺はそういう場合は礼儀は尽くすんですよ。
もし仮に、婦人の会の方たちが来場したら、もちろん約束どおりドリンクをおごって、何か文句があるなら時間をつくって話を聞くつもりではあったわけです。誰に対しても、俺はそうしてきましたよ。フィギュアを児童ポルノ呼ばわりしたGMOメディア、中学生球児たちの集団セクハラ事件のリトルシニア野球協会、あとJR東日本に痴漢防止のための防犯カメラ設置要請だとか、愛宕警察署だとか、原発事故後に基準値をこえる汚染米を販売した米屋など、ひとりで抗議に行ってきたですよ。俺は反体制的な、うざったいサヨク的な人間なのですよ。
だけど、先方も叩けば痛い生身の人間だから、お立場を考慮し、お気持ちは十分に伺う。相手も同じ人間だと思って、接してきたつもりですよ。


しかし、新日本婦人の会、20万人もの巨大組織、彼女たちの一存で本や催しが脅かされる社会環境は、少なくとも「平和」とは言いがたいわけですよね。
にもかかわらず、彼女たちのHP(本部やら支部やらが無数にあるので全容は把握しづらいけど)を読むと、必ず「平和」って書いてある。「憲法改悪反対」とか「憲法9条を守ろう」とか「子供たちのために」だとかさ。その茫洋とした主張のために、災害救助などで人々に尽くしてくれる自衛隊を悪者にしていいのだろうか?
だから僕は、「個人や企業が恐縮・萎縮するような事態は、自由や平和とは程遠い」と書いたし、「あなた方の独善ぶりには、体が震えるほどの嫌悪を感じます」と東京都本部に宛ててツイートしたら()、あっさりブロックですよ。民間企業に抗議はするくせして、外野からの批判には耳を貸さない人たちなんですよ。

かてて加えて、イベントが終わったタイミングで、国分寺支部が怒りの返信をツイートしてきた()。
“「招待を騙ったお呼び出し」をして、行けば写真撮って、実際邪魔してもいないのに「これがノコノコイベント妨害にやってきたおばちゃんたちです」って晒す計画の釣りなんじゃないか”……で、脅かされていたのは私たちですって。つくづく自分に甘い、厚顔な人たちだよねえ……。
そもそも俺は、女性の写真を撮って晒したりなんかしないよ。そうやって会ってもいない相手を「最悪の敵」と認定するから、戦争が起きるんですよ。

で、俺はイベントを邪魔されたわけではないので、「今日も暑いですねー」とか何とか、関係ない返信で交わしたんです。そこでケンカにしない。
でもね……。「この男は写真を撮って晒すような危険な相手だ、私たちが被害者だ」って、その空想ロジックを進めると、冤罪が起きかねないですよ? 表現規制反対の活動をしていた数年前も、ほとんどやりとりのない女性から「どうせ何を話しても平行線ですから」とブロックされ、後から「あの男こそ性犯罪者だ」ってツイートされたことがあって、あの時の不安感に近い。彼女たちは、とにかくまずは手近に敵をつくって、なんというか、「怒りの欲求」を満たす。「怒る」って気持ちいいんだよ。簡単に正義を手に出来るから。
いわば僕は、彼女たちの「怒る」という娯楽のネタにされたわけですね。「私たちの写真を撮って晒す計画」を立てた、ゲスいクズ男としてのイメージを付与されて。


“アベを許さない人たちって本気なのかどうなのかわかんないんだよ。アベ許グッズまとってチンドン屋したり、安倍の写真にチョビ髭の落書きしたり、なんか…楽しんでるようにしか見えないんだよな…。”
僕の好きなアカウント、「春は馬車に乗って」さんのツイート。新婦人の会の人たちも、憲法9条のTシャツ着た写真をアップしてるけど、そのTシャツは具体的にどういう効果があるの? そのTシャツで安倍政権の改憲を阻止できるんですか? アンタラ、遊びで平和憲法とか言ってるの? 遊びで絵本やイベンなどの商業活動を圧迫してるわけ?
反原発デモに参加していたころ、ズラリと並んだ機動隊員の胸に黄色い花をさしているお婆さんがいて、「アンタ何やってんの?」と首をひねった。いやいや、僕らは原発をどうにか停めたいはずでしょ? タイベックを着て廃炉作業に従事するぐらい本気じゃないの? その小さな黄色い花が、どう原発と関係あるの?
いつもそうなんですよ。コンビニから18禁本が消えて、なんでツイッターで勝利宣言してるの? あなた方、青少年への悪影響を論拠にしてなかったっけ? 18禁本の流通が減って、性犯罪が減ったんですか? 調べてすらいないでしょ? 

だから、婦人の会の人たちは安倍政権と戦ってるゴッコ、改憲阻止ゴッコ、9条を守るゴッコを楽しんでいる。権力と戦うゴッコとして出版や催しに数で圧力をかけて気持ちよくなって「私たちが正しかったー!」と勝利宣言する、そういう娯楽グループなんだよ。
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上の写真は、陸上自衛隊・小平駐屯地の納涼祭にて、装甲機動車に子供を乗せて記念写真を撮るサービス。お母さんたちが子供を連れて、行列ができるほど大人気なの。絵本をいくら重版中止にしても、まったく意味ないでしょ? だって、一般の親子連れが、本物の自衛隊車両に触れてるんだもの。
あなた方、日本の右傾化、軍国化を許さないんじゃないの? なんで、あちこちで行われている駐屯地祭を中止にしないの? ようは本気じゃないんでしょ? かわいいTシャツ作って「平和憲法を守ってます!」って政治ゴッコがやりたいだけだよね。

……それでも俺は、20万人もいる新婦人の会の人たちが何を考えているのか、理解したい。犯罪者のように扱われはしたけど、どうしてそこまで敵が必要なのか、分かりたい。ネトウヨみたいな人たちも、彼らの嫌う在日外国人もカウンター界隈も、それぞれの価値観で、心安らかに楽しく過ごせるのが良い世の中でしょ? もう、あなたも僕も、さんざん苦しんできた。もう敵は必要ないはずだ、違いますか?

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