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2019年7月 3日 (水)

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情景作家・山田卓司、昭和~平成~令和をつらぬく“時代を見つめる視点”を語る【ホビー業界インサイド第48回】
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静岡ホビーショウのタミヤさんのブースで、中学どころか小学校のころに初めて名前を覚えたプロモデラー、山田卓司さんとお会いした。初めて会ったとは思えないほど、山田さんはくだけた口調で雑談をたっぷりしてくださり、放課後の部室のような雰囲気のインタビューとなった。
中~高校時代の語彙は、タミヤニュースとホビージャパンによって収集された。人は否応なく、集められた語彙によって世界観を構築する。山田さんと初対面の気がしなかったのは、どこかで世界観が共通しているせいなのだろう。


月末の【プラモデガタリ】のテーマが「自衛隊」なので()、昭和の角川映画、80年代のアニメばかり毎日2本ずつ借りて見ていた。レンタル屋になくて、配信にしかない作品も増えてきた。
是枝裕和監督の『万引き家族』、これは有料配信オンリーで、DVDレンタルの方が安いので借りてきた。
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耳障りの悪いタイトルだが、是枝監督の過去作『誰も知らない』の路線。ネグレクトと虐待から子供を救い上げ、善行の結果として擬似家族が構成される。その擬似家族という設定が、あまりにもフィクショナルなのだが、題材のリアリティなどどうでもいい。題材を、映画というメカニックでいかにして切り取って、2時間の四角いフレームの中に配置しなおすか。映画の値打ちは、そこにしかない。
なので、僕は題材はわりと何でもいい。男女の恋模様を、アクション映画のようにダイナミックに撮ることだって出来るだろう。それが映画の機能、メカニズムなのだ。


この映画の中で、(一家の「母親」役である)安藤サクラを、真正面から捉えたシーンがある。
ひとつは、よその家の5歳児を誘拐同然で家においていることを、クリーニング屋の同僚に見抜かれるシーンだ。小津安二郎のように、真正面での切り返しがつづく。このシーンは、太陽光が真横から入っていて、人物に強い木漏れ日が当たっている。まるで決闘シーンのようなカッコいい撮り方をしていて、「こんなのどうやって撮ったんだ?」と、声が出てしまった。
このシーンで、安藤サクラは「(子供のことを)喋ったら殺す」と、同僚に言う。同僚は、安藤の真横スレスレを、背中を見せながらすれ違って、その場を後にする。まるでヤクザ映画のように、「肩で風切る」ってやつだ。安藤が肩にかけたタオルを、シュッと勢いよく抜いたところで、このシーンは終わり。

ようするに、撮り方ひとつで会話シーンを決闘のように見せてしまう、それが映画の機能なのだ。魔法でもなければ「思い」なんて無責任なものでもない。


もうひとつ、安藤サクラを真正面から撮ったのは、後半の取調室のシーンだ。
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公式のスチールでは、そのシーンは押さえられていないので、本編を見て欲しい。
取調室のシーンは三つあって、それぞれ照明も違えばカメラアングルも違えば、たとえば二回目のシーンでは安藤にカメラが寄っていくようカメラワークが加えられている。

誰もが驚愕するのは、三つめの取調べシーンだろう。池脇千鶴の演ずる警察官との“対決”シーンだ。
安藤も池脇も、真正面からのみ撮られている。池脇に問い詰められた安藤は、泣いているのに髪を直すフリをして、涙をぬぐう。
このカットは、アンバー調の落ち着いた色調になっている。クリーニング屋の裏での対決シーンのような、ぎらついた質感ではない。だが、真正面からのアングルなので、否応なく、2人の女優はぶつかって見える。対決しているように見えるのは、映画の持つ冷徹なメカニズムが機能しているせいであり、そこに安藤が複雑な表情と吐息のようなセリフを吹き込むことで、ようやく「思い」が伝わる。そういうものだと思う。


豪華キャストである。松岡茉優の実家のシーンで、彼女の妹がちょっとだけ顔を出す。いかにもこれから売り出します、次は準主役で使いますといったキラキラした雰囲気のアイドルのような子役を使っている……と思って調べたら、すでに主役で一本撮っていた。
映画に金がかかっている、とはこういうことだ。低予算の映画なら、身内でキャストを揃えるしかない。それゆえのリアリティが出ることは、自主映画を見れば分かる。海外で賞をとれる是枝監督の作品には、金をかけざるを得ない。『万引き家族』だって、フジテレビが出資している。前述したような、粘り強さの必要なカットを撮れるようにはなった。しかし、もはや是枝監督に、切実な貧困は撮れない。

(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro. 

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