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2019年7月21日 (日)

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GEOでレンタルしてきた『わが谷は緑なりき』。大学の授業でウトウトしながら見たはずだが、それは『怒りの葡萄』であった。
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しかし、いずれの作品も『駅馬車』のジョン・フォード監督作である。1941年にして、非常に高度な撮影だ。幾重にも重なった煙は、実際には黒や灰色ではなく、モノクロフィルムで映えるような色を選んだのではないだろうか(赤をモノクロで撮ると血には見えないと『サイコ』のメイキングで言っていた)。逆光の中、雨だけがシャープに撮れているのは、照明効果のおかげなのだろうか?
僕はやはり、モノクロ映画時代に映画という表現形式が、技術的に完成したと認識せざるを得ない。ここ2~3年の、僕の新しい発見だ。


終盤近く、「あっ」と声が出そうになったシーンがある。
舞台である炭鉱町で事故が起きる。主人公の少年は、大人たちと一緒に地下の坑道へ降りて、父の姿を探す(坑道のセットも、素晴らしくよく出来ている)。しかし、大怪我をした父は息絶えてしまう。
カットが変わると、女たちが男たちの帰りを待っている。エレベーターの滑車が回り、男たちが坑道から上がってくる。一段目のエレベーターには疲弊した男たちがガックリと肩を落として、座り込んでいる。エレベーターのメカニカルなディテール。まるで絵画のように、ピタリと静止した男たち。
続いて、エレベーターの二段目がフレームにINする。そこには、父の亡骸を抱いた少年が座っている。彼の兄が、両手を広げて二人を見下ろしている。やはり、彼らは微動だにしない。ただ下から上へ移動するだけのエレベーターの単調な動きが、本来なら動いて感情表現するはずの人間たちの凝固したポーズを、異様に浮かび上がらせる。その方が、理不尽な悲しみの大きさが伝わってくるのだ。

こんな高度な演出が、今の映画にあるのだろうか? 時が一方向に進むと思ったら大間違いで、僕には40~50年代の映画のほうが刺激的だ。


本日は、参議院選挙日。
山田太郎さんも立候補しておられるので、昨日はたくさんのツイートが回ってきた。2014年、GMOメディアのブログにフィギュアを載せていた方たちが「児童ポルノを掲載している」として強制削除された件で、僕は抗議署名を集めた()。その際、国会議員だった山田太郎さんの秘書さん(AFEE:エンターテイメント表現の自由の会の坂井崇俊代表)から連絡があり、「一緒に抗議に行きましょう」と打診された。国会議員が一企業に抗議に行くと威圧感があるので、個人と同行したほうが都合がいいとの理由だった。僕は電話でアポをとるのが苦手なので、渡りに船と坂井さんにお願いした。
なので、僕と山田さん、坂井さんが一緒にGMOメディアに抗議に行ったのは間違いない。しかし、僕はこの日まで山田さんとも坂井さんとも会ったことがなく、署名は誰にも相談せず、ひとりで集めた。

昨日、山田さんの支援者の方が署名を「提出抗議してくれたのが山田太郎氏」として、記事のリンクを貼ってツイートしてらした。
しかも、削除されたフィギュアは「児童ポルノ」ではなく「猥褻物」にされたと書かれており、一千以上もRTされただけでなく、「Amazonでアダルト物とされていたフィギュアが一般向けに訂正されたのも山田さんの功績だったのか」といった意味の、明らかな事実誤認の返信までつけられていた。
さすがにこれは看過できないので、訂正のツイートを僕から行った。当時撮られた写真も、AFEEのアカウントに残っていた。その写真で署名簿を手渡しているのは坂井さんであって、僕はいちばん後ろで手を添えている程度だ(画像引用元)。
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繰り返すが、僕はこの日まで山田さんとも坂井さんとも会ったことがなく、署名は誰にも相談せず、ひとりで集めた。というか、僕はいつでもそうしている。


上の画像がネット配信で流れたとき、「その後ろにいる人は何なの?」と、視聴者からコメントされた。
「あれっ、そうなっちゃうのか」と思ったよ。僕は無名のライター、もう一方は国会議員。山田さんが僕をないがしろにしたことは多分ないけど、周囲からは「あれは山田さんの功績」として定着してしまう。意図的に、「山田さん当選のため、この無名ライターには我慢してもらおう」と支援者の人たちが考えるのも無理はない。まあ、大変無礼な話ではあるが。
だけど、この抗議署名で僕を評価してくれた人たちは「フィギュア趣味の当事者である個人が声をあげたことが大きい」と言ってくださった。その「名もない個人が声を上げた」という部分は、政治文脈では邪魔なんだと思う(念のため言うと、山田さんご自身が僕を邪魔と思っているわけではない……と思うが、支援者が都合よく解釈してしまうことは今回、非常によく分かった)。

当該ツイートは削除され、ご本人は「事実を書いただけだが、選挙日になったので削除した」といったツイートしてらしたが、そのツイートも今では無くなっている。
「表現規制反対」というと、いつも同じメンバーが顔を揃える。僕もイベントで皆さんに出演していただいたし、僕のほうがゲストやインタビューで呼ばれることもあった。しかし、新しい人、それこそ「無名の個人」がいつまでも出てこないことに、閉塞感をおぼえる。
一極集中させず、個人それぞれが自分の趣味や仕事の領域で、自尊心のために戦う……それが、僕の理想だ。普段から大声で「表現規制に反対します」なんて言わなくても、自分の領域が侵犯されたら、勇気と誇りをもって戦う。そのために頑健な自尊心を育むことが何より大事なはずで、政治家に「何とかしてください」では世界は変わらない。
なので僕は、徒手空拳でどこまで何がやれるのか、試してみたい。今回のように、自分の行動を「なかったこと」にされないためにも。

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