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2019年5月 6日 (月)

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過酷な物語を抽象化する“童話”としての「機動戦士Vガンダム」【懐かしアニメ回顧録第54回】(
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僕は1999年のガンダム20周年前後にライターデビューしたので、当時整備された宇宙世紀年表の「史実」にもとづいて、モビルスーツの全高設定だの出力だの武装だの、あとはリアルだの富野節だの上っ面だけの決まり文句を叩き売りしてきました。
でも言っちゃ悪いけど、模型雑誌っていまだに同じこと書いてますよね。それか、ロボット戦の部分を無視してドラマだけ語るか、どちらかだと思います。

富野由悠季監督は一作ごとに作品のコンセプトを変えているはずですが、しかし、ほとんど上手くっていません。
玩具を売りたいのであれば、第1話で味方のロボットを出さなければ失格です。ドラマを優先した結果、主役ロボを出せなくなった? それは作劇が下手くそであるか、玩具を売るビジネスをバカにしているからです。まず、そこを冷静に見つめないと、本質的な評価はできないと思います。
それでは、当時のスポンサーがどこで、本当に玩具やプラモデルを売らないと番組が成り立たないのか? ちゃんと確認したことがありますか? 評価する側も「あれは玩具会社の都合で……」と出鱈目なごまかしをしていないか、十分に気をつける必要があります。さもなくば、僕たちの洞察力はアップデートできず、「懐かしい~!」と叫ぶたびに脳細胞がどんどん死んでいくだけです。

「富野さんや安彦さんが間違ったことを言うはずがない」という思い込み、僕には全体主義のように見えてゾッとします。
せめてリアルタイムに『ガンダム』を経験してない世代は、オジサン世代の陶酔ぶりを疑いの目で見てください。懐メロと化した『ガンダム』は、醜悪なだけです。


最近、レンタルで見た映画は『ワイルド・スピード』、『勝手にふるえてろ』、『フルメタル・ジャケット』、『トパーズ』、『引き裂かれたカーテン』、『ベン・ハー』。
誰もが『ワイルド・スピード』がもっとも新しい製作年度なのだから、映画の形式としても新しいと認識しているだろう。レストランでの会話シーンを見てみると、立って歩いているモブたち(顔は切れている)をドリー移動でナメて、画面外から主要人物たちの会話を入れる。そのままドリー移動していくと、人物が座って会話している(顔がフレームに入っている)……と、『カサブランカ』の頃と変わらない演出をしている。
だから、映画の形式なんてそうそう簡単に新しくならないんだって……。被写体が派手ならば映画も派手になるというほど、甘いものではない。

反面、『引き裂かれたカーテン』の中盤、農家でのアクション・シーンの迫力はどうだろう?
Highlight
主人公は西側の諜報部員で、お目付け役の男に正体を見破られてしまう。主人公は男に首を絞められ、農家の女は包丁で男の胸を刺し、さらにスコップで足を殴打し、ついにはオーブンの中に頭を突っ込ませて殺す。
短いショットを激しくカットバックさせ、じりじりと男はオーブンに近づいていく。ついに頭をオーブンに突っ込まれた男は絶命するわけだが、死ぬまでが長い。しかも真上から撮っているので、顔は見えずに男の痙攣した手だけがずーっと、ヒクヒク動いている。じれったい。
そして、男が動かなくなると、今度は首を絞められていた主人公と男を引きずっていた女が、ゼイゼイと息を荒くして、その場にへたりこんでいる。何十というカットを短くカットバックさせたあとの、長い長いロングショット。フッテージだけ見ると、確かに古臭い。特殊メイクはチャチだし、撮影も綺麗ではない。
でも、映画は被写体で決まるわけではない。どう撮って、どう繋ぐか。それだけが、映画を支配するんだよ。


でも、ヒッチコックはまだ分かりやすい方であって、ハリウッドが超大作ばかり連発していた50年代後期の『ベン・ハー』は、さすがに間伸びした構図なんじゃない?と油断していると、これがまた引き込まれる。壮大な英雄譚で、『スター・ウォーズ』EP1~3は、これがやりたかったんだな。
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たとえば上のカット。ガレー船で奴隷として酷使されるベン・ハーは、戦争で船が破壊された隙に脱出し、ついでに艦隊の司令官を助ける。助けるというか、復讐の意味で殺さず、生き恥をさらさせるわけだ。
ところが、友軍の船に拾われた司令官は自分に差し出された水を飲まず、奴隷であるベン・ハーに先に渡す。これだけの演技で、彼の心のうちが分かるよね。
ベン・ハーは水を飲み、器を司令官に戻す。すると、司令官は同じ器から水を飲むわけだ。ひとつの器から、奴隷と司令官が水を分け合う。もう、ほんのこれだけで2人の関係が激変したことが分かる。こんなシンプルで雄弁なカット、なかなかお目にかかれない。

だけど、ここまで平板な構図でいいの? カッティングの工夫もないのに、どうして俺はこんなに感動してるんだろう? その理由を考えつづけようとすると、図書館に行って映画の専門書を漁ることになる。だって、ネットには「泣いた」と「ネタバレ」しか書いてないもん。

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