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2019年4月 8日 (月)

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そういえば観ていなかったなあ……と、レンタルで黒澤明の『デルス・ウザーラ』。
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前作が『どですかでん』、次作が『影武者』であることを考えると、このあたりから馬脚が乱れはじめたんだろうと、納得がいく。 

ロシアの探検家チームが、先住民のデルス・ウザーラという男に出会う。デルスはスピリチュアルな考え方をしていて、たとえば「火が怒ると山火事が起きる」なんて御伽話をする。デルスは焚き火の前に座って、カメラのほうを向いている。デルスの向かい側にはロシア人たちが背中を向けて座っていて、彼の話をバカにするように笑っている。ところが、デルスの背後には、画面左右を覆いつくすように大河が流れている。この構図だけで、デルスの他愛のない発言に、古代からの壮大な時間が備わって説得力が出る。「構図で語る」、これが黒澤明の真骨頂だったと思う。
しかし、この映画で「構図で語る」ショットは、数えるほどだ。苛酷なロケだっただろうから、思ったように撮れなかったのかも知れない。


5日(金)は、「ラフ∞展」のために神田へ。
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この写真は、購入した図録を撮影したもの。撮影OKのエリアは今回の展示のために描かれた新作ばかりで、過去に描かれた正真正銘の「ラフ絵」は撮影禁止だった。言うまでもなく、それら本物の「ラフ絵」こそが見どころであって、目の前で見ないと意味がないからだ。
この展示会では線の荒さがよく分かるように、原寸の何十倍にもラフ絵を拡大している。中には、原画が紛失してカラーコピーしか残っていないものもある。その場合は、「カラーコピーこそがオリジナル」という扱いだ。スキャンしたりコピーしたら、絵画としての価値が落ちるって? アニメーションの現場では、原画はトレースされるし、動画はスキャンしたりセルに転写するのが当たり前だ。
現場の中から、アニメーターやデザイナーの引いた線の美しさを抽出しようと思ったら、それは何も小さな動画用紙である必要はない。

「紙にエンピツで描かれた原画だけが本物」なんて言い出したら、印刷して製本される画集なんてインクの染みでしかない。その盲目的なオリジナル信仰が、展覧会へ行くたびに僕を白けさせてきた。小さな原画を、何十人もが満員電車のような状況で覗きこむ……だったら画集を買うからいいよ、とため息が出てしまう。
今回の展示会は、小さなスケッチを恐れることなく、うんと大きく引き伸ばして、間近でプロの引いた線を見ることが出来る。画集では到底、不可能なサイズで。
アニメ絵、キャラ絵って簡素化されて油絵なんかに比べると情報量が乏しい=価値が低いって見なされてるだろうけど、迷ったり決意したり、はたまた修正したり……の無数の線の重なり、これは記号化できない。完成した一本の線にはない、格別のカッコよさがある。
そのカッコよさを見抜いて、ふさわしい展示のスタイルを選択した。くどくどしたキャラクターの説明やら作品解説やらがないところも、クールだった。


ガンプラと歩んだ40年、ガンダムの生みの親・富野由悠季が語る「“おもちゃ屋スポンサーは敵”という被害妄想」

強化合体メカのGアーマーの玩具のおかげで番組が延命されたことを知る人には、あちこち首をひねらざるを得ない記事。MSVは大勢の小学生が買っていたし、『めぐりあい宇宙』と『Zガンダム』の間は空白なんかじゃなくて、富野監督は新しいコンセプトを毎年考えなおして市場に投入して、クローバーは倒産するまで従来の合金玩具をアップデートしようと試行錯誤していたし、バンダイも悪戦苦闘していた。そのエキサイティングな日々は、僕がイベント()で敷衍するから良いとしても、ロボット玩具が売れるように苦心して作品づくりをしていた富野監督は、もう玩具を売らなくて良い立場になったから、こういう話が出来るんだよな……と複雑な気分。

たとえば、バンダイ周辺で最新の『仮面ライダー』を売ろうとしている人たちは、こんな気楽な発言はできない。僕が取材したかぎりでは、彼らは緊張感をもって、しかも楽しみながら仕事をしている。マンネリは、彼らの敵だから。
キャラクター・ビジネスの最前線はライダーやプリキュアであって、ロボット・キャラクターに対してリアルだ何だと言っているのは、40代以上の「大人」だけ。今の子供たちは、空想キャラクターともっと別の関わり方をしている。そのニーズを探ってキャラクター・ビジネスの戦列に参加するのは、並大抵の努力ではできない。玩具を売るのはもう富野監督の役割じゃないので、彼にキャラクター・ビジネスの話を聞いても、昔話しか出てこない。

僕はもう、気をつかいながら富野監督に話を合わせるような歳でも立場でもないです。ガンダム40周年だからって、それはビジネスとして関わっている人たちが「おめでとう」なら分かる。いちばん昔話を嫌って「現状にカウンターを打て!」 それが僕の知っている富野監督だった。
『G-レコ』を10歳の子供に観てほしいなら、そういうビジネス・スキームを組んでもらいたい。それが本当の戦いであって、信者のようなインタビュアー(僕だってその一人だった)を前に自慢話している富野監督はカッコ悪い。『G-レコ』の劇場版は、僕個人の趣味としては楽しみ。だけど、マーケティングも戦略もない空想のキャラクター・ビジネス論からは、もはや学ぶべきものはない。うんと甘く言うと、ようやく富野さんは純粋な映像作家になれたのかも知れない。
富野監督の死に物狂いの戦いが始まるのは『ガンダム』以降だと思うので、僕は「おめでとう」なんて気持ちになれない。

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