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2019年3月10日 (日)

■アゼルバイジャン旅行記-2■

■3/2-1 笑顔
廃墟のようなボロいホテルには似つかわしくない、どこか病弱そうな美しい人だった。笑顔ひとつ見せずに、部屋まで案内してくれる。
部屋からはベランダ(下図)に出られて、階段で下に下りられるけど、外からこの階段を使って部屋に入ってくることは出来ません……など、どうでもいいことを英語で、無表情にポツポツと説明する。いや、こんなベランダ(なのか?)を通ろうとは思わないでしょう……。
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最後に「外出するとき、貴重品は身に着けてください」と(これまた言わなくてもいいような注意事項)説明してくれたのだが、聞き取れずに「すみません」と返すと、その人は「ああ、もうまったく…」といった感じで苦笑して、もういちど頭から説明するのであった。凍りついたような表情が、一瞬だけ緩んだ。
そうした、本人が想定してないのに出てしまう小さな笑顔や、思いがけないリアクション。それが「美しい」ということなのだ。

何だか、その人のそばを離れて市街へ出るのが惜しいような気持ちになってしまったのだが、まだ午後3時なので、厚手のジャケットに着替えて外へ出た。
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こんな心寂しい通りに建っているホテルなのだ。そして、僕が出かけるとき、色白美人さんは目もあわせず無言のままだった。英語も通じないようなバカは、相手にしたくないのだろうか。

■3/2-2 カスピ海
とにかくカスピ海を見たくて、グーグルMAPで確認しながら歩きはじめると、大通りに面した公園がある。この公園を目印にすれば、ホテルへ帰るのに迷うことはないだろう。
などと考えて、公園沿いのケバブ屋をのぞいていたら、お兄さんに握手を求められ「まあ、中に入っていけよ」と、焼く前の肉を見せられ、かなり強引に注文を迫られた。
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こういう小さなお店ではカードは使えないのだが、たいした値段ではなかったはずだ。何度か「ビールある?」と聞いたけど、スルーされてしまった。

バクーの旧市街付近は、車がひっきりなしに行き交っていて、信号は少ない。通りの向こうに渡るには、地下歩道を使う。
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この向こう側が、海沿いの公園になっている。
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トイレはチップ制で、掃除のおばさんが手を突き出してくる。コインがないので、1マナト札を渡してしまった。
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初めて見たカスピ海は、かすかに潮の香りがした。塩水湖とのことなので、気のせいかも知れないが。
とにかく風が強くて寒いので、走るようにして公園をグルッと回る。巨大なチェスを動かして遊んでいるオジサンたちがいた。
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ホテルへ帰って、小さな扉の横にある壊れかけたブザーを鳴らす。すると、あの美人さんが顔を出して、「あっ…」とため息をつくような、ほんのかすかな無言の笑顔を見せた。
この人は、決して僕をバカにしてるわけではないのだ。やっぱり、表情は心の入り口なのだと思う。かたくなに笑わない人は、心の中が乾いているのではないだろうか。

巨大スーパーマーケット“SPAR”があったので、ビール(ロング缶しか売っていない)とポテトチップを買った。晩飯は、先ほどのケバブってことにしておこう。
旅先ではいつもそうするように、20時には床に入るのだが、階下の話し声が深夜に響いて、目が覚めてしまった。

■3/3-1 市場
翌朝は、観光名所であるゴブスタンの遺跡を見に行く。
早朝、あれこれブログを検索して、ルートを探った。195番のバスに乗れば、確実に行けるそうだ。
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このバス停は乗り換え客が多くて、ちょっとした市場のようになっている。活気があって、とてもいい雰囲気。(これこそがアゼルバイジャンの魅力なのだと、数日後に実感させられる。)
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ホテルの朝食が、ややお粗末だった(客が僕ひとりのようなので、ちょっと出し惜しみしたのかも知れない)ため、パン屋で菓子パンのようなものを買う。「これひとつ」と言えば、街頭の店でも英語など使わずに買える。
しかし、猛烈な寒さの中、いくら待っても195番のバスは来ないのであった。40分ぐらい待ったと思う。もう、寒さに耐えるのも限界だ。

■3/3-2 ゴブスタン
そうこうするうち、タクシーの客引きが来た。
ゴブスタン遺跡へのルートについては、誰もはっきり「これで間違いない」と明言していない。それぐらい難解なのだ。バス停から遺跡の入り口まで4キロだけなのにタクシーで100マナトとられた、市内からの往復で200マナトだった、いやガイドしてくれて350マナトだ……と、さまざまなブログを見てきた。
結論から書くと、このバス停から片道一時間ほど、ゴブスタンまで往復してくれて、遺跡の案内も丁寧にしてくれて、50マナトであった。タクシーなら100マナトは覚悟していたので、これは格安だ。市街までは、プラスして10マナト。

英語のできる友人に電話して、「全部で50マナトだよ」と眠そうな友人が説明させるのには笑ってしまったが、タクシーの運転手は親切だった。たとえば、僕が道ぞいのガス田を熱心に見ていると、「コレだよ、コレ」と百円ライターを見せてくれたり、ソーラー発電設備の前を通る時、「あれはコレだよ」と車内の蛍光灯をトントンと指差したり、ひとつも自分の得にならないことをいちいち説明してくれる人に、悪い人はいないと思う。
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そういえば、こんな写真も撮ってくれた。「トイレは行かなくていい?」とか「展望台があるよ」とか、こっちのペースを考えて歩いてくれて、ミュージアムはちょっと子供じみているので、面白いところだけ見せて「ハハハ」と笑って通りすぎて。
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ゴブスタン遺跡は、こうした素朴な岩絵が有名ではあるけど、僕は別の惑星へ来たような岩山の造形に魅了されていた。
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こんな写真では、造形の面白さが伝わらないので歯がゆいけど、歩くたびに刻々と姿を変えていく奇岩は、いくら見ていても飽きなかった。運転手さんがガイドしていなかったら、2時間ぐらい歩き回っていたはずだ。
普通に歩いて回ると、1時間程度だろうか。ガイド付きで3時間、50マナトは明らかに安い。

旅好きの中には、いかに自分があこぎなタクシー運転手と戦ったか、いかにしてマケさせたか、武勇伝を語る人が多い。相手を怒鳴ってやったとか、完全無視したとか、もはやパターンになっている。
前回のジンバブエでもそうだったけど、謙虚でいい運転手も、いっぱいいるのに。

ゴブスタン遺跡を歩いて回ってタクシーに戻ってきたとき、運転手は近くの泥火山へは30マナト、天然ガスが燃え続けるヤナル・ダグへは20マナトだけどどうかな?と、スマホ内の画像を見せながら、提案してきた。
泥火山は近くのはずなので、30マナトは高い。逆に、ヤナル・ダグは街へ戻って北側へ行かなくてはならないのに、どうしてそんなに安いんだろう? 運転手さんとしては、そのオプションで儲けを出したいんだろうけど、市街へ戻るのに10マナト追加、とさせてもらった。
ちょっと残念そうだったけど、スマホの壁紙が、娘さんの写真だった。可愛がってるんだろうな。そういう人に、悪人はいないよ。俺がオプションを断ると、それ以上はゴリ押ししてこなかったし。

そんなわけで、まだ12時だけど、市街へ向かった。

(つづく)

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