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2019年1月24日 (木)

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レンタルで、金子修介監督の『リンキング・ラブ』。
6403月に開催予定のイベントに、金子監督が出てくださるという。その後、本当に出ていただけるのかどうか、ちょっと怪しいムードになっている。だけど、最近作を観ておくのが礼儀だと思い、借りてきた。
劇中であっさりネタを明かしているように、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』そっくりのプロットだ。バブル崩壊直後の日本へ主人公の少女がタイムトリップして、まだ若い大学生の父親と母親をくっつけて、現代へと帰ってくる。
その味つけに、AKB48の楽曲を借りた架空のアイドル・グループが登場する。

無理して誉める義理はないし、風邪っぽいので、初回は冒頭20分ほどで「ああ、80年代のアイドル映画みたい……というか、月曜ドラマランドだな」と油断して、寝落ちしてしまった。起きると、AKB48の曲で制服姿の女優たちがダンスしているシーンだった。「ホントに、こんなかったるいダンスでいいの? こんな平凡なカットワークしか思いつかないの?」と、最初は冷ややかに見ていた。最初はね。
640_1クライマックス、ちょっとした危機を乗り越えて、グループが全員そろって『恋するフォーチュンクッキー』を舞台で歌う。リードボーカルは、主人公の母親だ。客席で見ていた父親が花束を持って、彼女に近づく。曲はサビに入っているが、母親は舞台を降りてきて、父親と向き合う。そして、母親が花束を受けとったところでジャン!と曲が終わる。他のメンバーたちは、客席に手を振ったり、仲間同士で抱き合ったりしているが、それがまるで父親と母親がくっついたことを祝福しているように見える。
ちょうど、『生きる』のハッピーバースデーのシーンみたいに、ふたつの無関係なドラマがひとつのフレームに重なり合って、画面手前のドラマが強化されている。ちょっと待て、これはなかなか大した演出ではないか? と、姿勢を正して頭から見返した。


いや、ホントは誉めたくないんです。金子監督、イベント出てくれるんですか、どうして何も返事してくれないんですか?ってイライラしてるわけだから。
この映画、創作的な部分は本当に少ない。プロットは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だと、映画の冒頭で早々とバラしてしまっているうえ、『バック・トゥ~』で困難だった危機設定はあっさりと省かれている。“おいしいとこ取り”ってやつだ。
主人公は若い母親と父親を結びつけるために、まだこの世に誕生していないAKB48の曲を流用して、即席のアイドル・グループを結成する。オリジナル曲がないわけだから、このアイデアも創作的とは言いがたい。『リンダ リンダ リンダ』で、女子高生たちがブルーハーツの曲をカバーするのとは、次元が違う。
『リンキング・ラブ』は内輪ウケやセルフ・パロディは連発するし、オリジナルな要素は本当に乏しい。

だけど、主人公(演じている田野優花は、元AKBメンバー)がAKBの楽曲と振り付けを即席のメンバーに覚えさせて、アイドルオタクの先輩の前で披露するシーンで、ガツンとくる。
640_2その先輩は1991年に生きている人間なので、「今はアイドル冬の時代だ」と、白けきっている。もちろん彼は、AKBの振り付けなんて見たことがない。だから、主人公たちのたどたどしい物真似ダンスを見て「えっ、何だよ、その可愛い踊り!」って驚くわけ。「でも君たち、アイドルは笑顔で!」って先輩が言うと、彼女たちは自信なさげに笑う。
その笑いは、元気な笑いではない。ちょっと気まずい笑いだ。主人公たちはAKBの物真似をしているに過ぎないのだから、観客も素直に喜べない。だから、力のない笑いなんだけど、カメラは真正面から、堂々と撮っている。

なぜかというと、その先輩が味方についたことで、主人公たちは大いに助けられるから。映画としては、主人公たちの心情よりも、もっと引いた目線から動向を凝視せねばならない。
以降、先輩が張り切って、メンバーをしごいていく。カメラは踊りの練習をしているメンバーをドリー移動でガーッと撮りきった後、先輩の怒鳴り顔のアップでピタッと止まったりする。
そのドライブ感に煽られて、初見では雑に見えた制服姿のダンスシーンが、魅力たっぷりに見えてくる。プロットも借り物、楽曲も借り物。ぜんぶパクりなのに、本人たちは必死……そんな見せ方を出来るのが、この映画だけの利点だよね。


いまだにAKB48とモーニング娘。の区別すらつかない僕なので、この映画に出てくるアイドルたちは、本物のAKBのメンバーを混ぜて撮っていて、だから歌もダンスも上手いんじゃないの?と疑っていたら、みんな別々の出自をもつ女優たちで、この映画のために特訓したのだという。
企画としては安易だと思うし、スタッフもキャストも乗り気ではなかっただろうな。しかし、数少ないネットのレビューを見ると、まあまあ好感をもって受け入れられている。

安易につくられた映画に、ほんの一瞬、本物の熱意が灯る瞬間がある。僕は、それを見逃したくない。気がついているのに、知らん顔で素通りはできない。全人類が無視する映画であれば、僕ひとりで救ってみせる。
映画のレベルでいうと、B級どころかC級と言ってもいい。だけど、レベルなんてどうでも良くなる瞬間が、この映画にはある。しかつめらしい、いかにも賢そうな顔をして、本当にどうでもいい映画が、他にいっぱいあるよ。

(C)2017 AiiA Corporation

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