« ■0114■ | トップページ | ■0120■ »

2019年1月18日 (金)

■0118■

原田眞人監督作で、とりこぼしていた映画を観なくては……と、『伝染歌』と『関ヶ原』を借りてきた。『伝染歌』は、去年見たばかりだ。うっかりしていた。
640_1『関ヶ原』は、かなりヒットして賞も貰っているのだが、あいかわらず誰がどこで何をしているのか、さっぱり分からないところが原田映画だなーと思う。これは、ケナしているわけではない。アイドル主演のお手軽ホラー映画のはずの『伝染歌』だって、「こういう映画だよ」とパッと説明できない、猛烈な複雑さと混沌に満ちていて、そこが不思議な魅力なんだよね……。
で、そんな奇ッ怪な映画ばかり撮っている原田監督の思惑とはまったく別のレイヤーで、日本映画界の偉い人たちが利権こみで今年の日アカ賞は誰にやろうか、なんて不毛な会話をかわしてる光景を想像してしまう。いや、想像ですよ想像。


でも、『関ヶ原』を観て良かった、やっぱり原田監督は良い!と思えるところもあって、それは原作の『関ヶ原』で創造された架空の女性キャラクター、初芽の登場するシーンなんだよね。
640このスチールになっているシーンも、大勢の兵たちが通りを突き進んで行く中、パッと初芽だけが立ち止まって振り返る。それまで通りを進んでいたカメラが、彼女と同時にピタッと止まる。彼女の心に寄り添う。きれいなカットだよ。
映画を観るんなら、カメラの動きを楽しまないと意味ないよ。

そして何より、映画が始まって30分ぐらいのシーンが素晴らしかった。夜の廃屋の近くで、初芽は赤耳という老忍者に襲われるが、一撃で返り討ちにする。
赤耳がドカーンと廃屋につっこんで、初芽は「ドンガメ」「(お前の名など)知らんわ」と短く切り返しながら、廃屋とは別の方角へ歩き出す。すると、カメラは2人の真上から俯瞰でシーンをとらえる。赤耳は初芽の行く手をはばむかのように回り込みながら歩くけど、初芽は赤耳の動きを見透かして、ちょっと引き返したりする。
この2人の動きを地面に置いたカメラで撮ると、2人の姿が前後に互い違いに入れ替わるように見えて……「ああ、この2人は会話しながら互いに警戒しあってるな」と分かるわけ。人物の動きと、それを真上から撮るカメラ、真横から撮るカメラとで、2人の不穏な関係が分かる。
映画って、そういうもんなの。カメラの動きで、たとえば“不信感”とか“疑惑”を感じさせる、そういうものなんだ。


まだ、続きがある。初芽は自信満々にまっすぐに歩いて、赤耳が彼女を追う格好になる。カメラは、2人の後を追う。初芽の歩く先には、焚き火が燃えている。
すると、焚き火のまわりに初芽の仲間の忍者たちが、左から右から、ヒラリヒラリと集まってくる。どうして「仲間」だと分かるのか? それは「炎」に集まってくるから。だって、初芽は焚き火の「炎」に向かってまっすぐ歩いていくわけだから、同じ「炎」に集う者たちは、彼女と同じ志向の人間だって理解できるでしょ? “図像”なんですよ、映画って。

で、忍者たちは、それぞれに情報交換する。初芽は有能なので、堂々と切り返すんだけど、仲間のひとりが「どうなんだよ、蛇白?」と声をかけると、初芽がハッと振り返る絵が入る。見ているこちらも、初芽が黙ったから何事かと思うわけだ。
すると、草むらから白い蛇を手のうえでもてあそびながら、真っ黒な服の女が出てくる。
そして、初芽の周囲をゆっくり歩いて回りながら、話す。蛇を手でかわいがりながら。彼女は「忍びは、みんな殺されるよ」と不吉なことを言いながら、「炎」から離れていく。

仲間の集まってきた「炎」から、蛇白だけが離れていくわけだから、その構図だけで、彼女が仲間じゃないって分かるじゃない? 映画って、そういうもんです。
そして、炎の近くにとどまったまま、蛇白を無言で見送る初芽のバスト・ショット。さらに、アップで寄る。初芽の心情を想像させながら、次のシーンへ。まったく見事なものだと思う。
その前後2時間ぐらいは、あまりにも描写が難解すぎて、理解を放棄してしまうけど(笑)、このワンシーンだけで原田節は満喫できるよ。初芽を主人公に撮ってほしかった。


16日(水)は、あるアニメの試写会へ行った後、ラピュタ阿佐ヶ谷へ『マイマイ新子と千年の魔法』を観に行った。平日昼間、10人ぐらいのお客さんでは監督も映画も可哀相……と思いきや、なんと席はほとんど埋まっていた。
50231539_2052849794808924_627631097新子のおばあちゃん役の世弥きくよさんも客席にいて、ロビーは和やかなムードに満ちて、本当に温かかった。木曜以降も、平日昼間にしては盛況だと聞く。「じゃあ、もう大丈夫だな」と安堵するこの感覚、2009~2010年にかけてのラピュタ阿佐ヶ谷の状況そのままだ。

もちろん、観客と監督がわいわいするのが好きじゃない人もいるだろうから、ひとりの帰路で映画の余韻を味わってもいい。
『RWBY』の試写会のとき、僕はひと気のない道を選んで、泣きながら帰ったからね。感想を人に聞かれるのさえ、苦痛だった。

もう何十回映画館で見たか数えるのも放棄した『マイマイ新子と千年の魔法』だけど、やっぱり大胆で、謎めいていて、観るたびに「どういう意味だろう?」と腕組みしてしまう。ミスリードが仕掛けてあるんだけど、別にミスしても大丈夫というか……いつも迷うんだけど、「迷ってもいいよ」と許してもらえるというか……。

(C)2017 「関ヶ原」製作委員会

|

« ■0114■ | トップページ | ■0120■ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■0118■:

« ■0114■ | トップページ | ■0120■ »