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2019年1月 9日 (水)

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レンタル店の準新作コーナーで見つけた、キャスリン・ビグロー監督の『デトロイト』。
Mv5bmja4ndu5mjcyof5bml5banbnxkftztg60代後半のビグロー監督が、まだこんな手に汗にぎる緊張感に満ちた映画を撮りつづけていることに驚愕した。しかも、白人優位社会を根底から揺るがすような危険なモチーフだ。挑戦的だと思う。
戦車が出動し、戦場のような修羅場と化した1967年のデトロイト……いくらセットの建造費用があったって、CGで自由自在に画面をいじれたって、こんな撮り方はできない。つくづく、映画にとってストーリーは二の次だ。うかうかしていると、カメラがブレブレになって、何を撮っているのか分からなくなってしまうだろう。

最初の十数分は、ひたすら暴動が激化していく様子を、群集の中から撮っている。思いつきで撮ったかのような、激しいカメラワークもある。
ところが、あるモーテルで決定的な事件が発生するあたりから、画面に入る要素は限られてきて、カメラは銃撃音の直後に穴の開いた天井へサッと寄ったり、意図のある動きをしはじめる。そこからラストシーンまで、すっかり画面に没入した。
つまり、冒頭の暴動を撮ったシーンで観客の生理が調整され、本編に没頭できるよう仕組んである。その視覚的構成力こそが「映画」、という気がする。(3Dメガネがなければ臨場感が出せない、感じられないでは困ってしまうのだ)


贅沢な2時間を過ごしたが、しかし、日常生活に影響を残すタイプの映画ではない。
Filmstill06201712ストーリーは二の次だと言ったが、ラスト数十分は法廷劇となり、暴行を働いた警官たちにどんな判決が下されるかが気になってしまう。
(ウィル・ポールターは憎まれ役に徹することのできる良い俳優だった)

現場で、カメラマンや監督がどんな仕事をして、その成果物(フィルム)を編集作業でどう並べなおすかが、映画の品位を決定するのだと思う。
最初の『スター・ウォーズ』だって、トラブルの続出した現場で貧しいフッテージしか得られず、編集者を2人投入して、何とか見られるものにしたのであって、あの映画のチャームポイントはその過程にしかない。思い通りに撮れなかったとしても、編集で何とかする。そのプロセスにこそ、映画の生命が宿るんだと思う。映画評論家は、そんなこと一言も言わない。テーマがストーリーが、ネタバレが……と、そんな一生を送りたいのか? こんな膨大な、潤沢な作品たちを前にして?
僕は大学で映画を学びはしたが、プロになれずに挫折して良かったと思っている。こうして、映画について考える体勢、身構えが得られたのだから。

映画を観て「すげえ感動しました! めっちゃ泣きました!」なんてのは、「腹が立ったから相手を殴ってやった」と、レベルが変わらない。
ようするに、個人を守る武器が「泣いた」「腹たった」「憎い」といった情動しかない。酷い、危険な時代だと思う。


明日の阿佐ヶ谷ロフトAのイベント()、当初は数枚しか前売り券が売れてないというので大いに不安だったが、満席とは言わないまでも、予想をこえる数の大勢のお客さんが来られるという。小規模なサイン会を予定していたが、パニックにならないよう留意せねばならない。

もともと、秋山徹郎さんとは別件で仕事していて、このイベントは思いつきで誘ったに過ぎない。必ず来てくれるゲストとしては、キャラクター玩具の専門家・五十嵐浩司さんしかいない。そこまでは身内と言える範囲だし、何も冒険していない。
「きっと無理だろう」と思いながら、湖川友謙さんに一迅社さん経由で連絡をとったあたりから、風向きが変わって、テーマも絞り込まれてきた。
幸いにも、まだ発売されていない『聖戦士ダンバイン』の新製品のテストショットまでお貸しいただけた。メーカーさんのご好意ではあるが、人との関係を大事にしておいて良かった。


これまでの40年間、アニメ作品に登場するロボットをプラモデル化する際は、「アニメの設定画に忠実に再現」という曖昧な尺度に準拠するか、立体化に適したアレンジを施す実務的対応しかなされて来なかった。
その曖昧と実務の間にメスを入れるには、アニメ現場への取材経験が豊富な人間でなければ無理だ。模型メーカーの社員や、塗装や工作の上手いプロモデラーでもないくせに……と、ほとんどの人が疑っていると思う。まあ、そういうもんだろう。そうやってプラモデル業界は成り立っているのだから、異物を歓迎するわけがない。

でも、どこにも属してない、プラモが上手いとか下手というフィールドを避けている個人に、どこまで出来るか、僕は試したい。とりあえず、組織に属していない僕個人の私的イベントで数十人を動員できると証明できて、第二回も決まっている。ロフトさんは、第三回をやりたいと言っている。
ひとまず、それで成功なんじゃない?と思っている。誰かを騙して、無理やり何とかしたわけじゃなくて、何人かの方たちから信頼してもらえてるんだから、それで良くない?って。

何かをやるには、監獄に人を入れて監視したいタイプと、監獄から脱出したいタイプがいるそうで、僕は圧倒的に後者だ。

(C)2017 - Annapurna Pictures

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