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今日は、独身バツイチオタク男性の立場から、旅行ガイド的な記事を書こうかと思います。
まず、僕は高校時代に、対人恐怖症を発症しました。隣の席の女子が教科書を忘れてきたというので、机をくっつけて、2人で並んで教科書を見ていたら、ものすごい量の汗が出てきたのです。
以降、電車で隣に女性が座ったり、僕から見てハンサムだったり立派な体格をした男性が座ると、猛烈に発汗して、途中で駅を降りねばならないほどになりました。50歳をすぎた今でも、女性の隣には座りません。
インタビューの仕事でも、たまに汗が出ることがあります。では、どう対処しているかというと、医者に精神安定剤を処方してもらってます。ポケットから取り出して、口に放り込むと、数分で落ち着きます。
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これが病気なのか、そもそも「治せるのか」「治す必要があるのか」は、さておきます。ともあれ、隣に女性が座っただけで緊張して席を立たねばならないほど病的な男が、海外旅行なんて出来るのか? 大丈夫、できます。しかも旅行中は、ほとんど薬を飲みません。
海外のほうが人権意識が高いわけでもなければ、外国人が日本人より寛容というわけではありません。出羽守さんの大好きなスウェーデンでは人種差別に遭ったし、窮屈で堅苦しくて、二度と行きたくないです。ようは、コンプレックスを抱えた僕という人間が、日本社会と分断される時、途方もない開放感に包まれる……それだけのことなんです。
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2013年3月に、クロアチアへのパックツアーに参加しました。45歳、初めての海外旅行です(■)。パックツアーなので、しょせんは小さな日本社会が丸ごと移動するに過ぎず、グループに分かれて互いに変な距離をとるのがイヤでイヤで仕方なかったのですが、「一日だけ個人で行動してください、食事も自分で何とかして、ホテルに独自の手段で帰ってきてください」という日がありました。そのとき、中学生レベルの英語でも何とかやっていけると分かったのです。
「どうしても船に乗りたい!」と前のめりになる自分が、封印されていた本当の自分なんだと思います。
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2013年10月、今度はひとりだけでクロアチアに旅行しました(■)。

座席指定の方法を知ってからは、必ず通路側に座るようにしてますが、窓際に座ると、ちょっと圧迫感を感じるからです。でもまあ、「他人が怖い、特に異性が怖い」ということは、飛行機の中では感じたことはありません。
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2014年4月、スウェーデンへ行きました(■)。僕はとにかく、一人旅しかしません。誰か知り合いや友達と一緒だと、それは小さな日本社会を海外へ持ち歩くだけな気がしてしまう。

返事ができなくても、せめて笑顔を返そうと努めました。
あと、白人の皆さんからアジア人差別をくらった直後、中国人の経営するレストランに入って、優しくされたのを覚えてます。
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2015年4月、ギリシャのサントリーニ島へ旅行(■)。

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2016年11月、アルゼンチンのイグアスの滝へ旅行(■)。
この時も、レストランで意地悪されたんだよなあ……。アジア人は、白人様からいろんな目に遭わされます。ポリコレ包囲網でお疲れなのではないでしょうか、白人の皆さん?

やっぱり海外旅行は、日本で受けた毒を洗い流してくれるのです。
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2017年4月、オーストラリアのケアンズとフィッツロイ島へ行きました(■)。

だけどその分、相手の顔を見れば、何が言いたいのか分かるようになってきたように思います。
ところで、オーストラリアは日本人がとても多いです。働いているのも日本人、旅行者も日本人なので、日本語の会話が成り立ってしまう。それで大いに助けられもしたけれど、その「助けられた」って部分が大事なんです。
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2017年10月、マルタ共和国へ旅行(■)。

あと、レストランでも「マルタへは初めてですか?」と話をふられたり、まあ日本では絶対にあり得ないことですね。通りすがりの女性に話しかけられるなんて。
だけど、かなり人口密度の高い都市を路線バスで移動しているとき、隣に15~16歳ぐらいの若い女性が座ったのです。その時は珍しく緊張して発汗してきたので、あわてて薬を飲みました。女性は席を立って、後ろのほうの座席に移りました。「路線バス」というシチュエーションが、日本的すぎたのかなあ……など、いろいろ考えます。
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2018年11月、ジンバブエへ(■)。
丸一年ぶりの海外だし、飛行機で過ごす時間が長いから対人恐怖がぶり返すのでは……と心配でしたが、ぜんぜん大丈夫でした。もちろん薬はポケットに常備しておきます。
そして、ちょっと思い出したことがあります。ビクトリア・フォールズ近くのワニ園で、まだ10代後半ではないかと思われる少年に、一時間半ほどガイドしてもらったのです。その時の僕は、汗びっしょりでした。その時、「ああ、海外でも対人恐怖は発症するのだな」と気づきました。

(←ワニの尻尾を頭にくっつけて遊ぶ少年。「一緒に動画撮ろうよ!」と誘ってくれたり、澄んだ目で可愛いことを言うのでドキドキしてしまった。)
もう一ヶ月前の旅だけど、今でもジンバブエで出会った誠実で優しくて、心の広い男たちをひとりひとり思い出す。まあ、ペテン師もひとりだけいたけど……。
そして、胸板を突き破って心臓にタッチするような、神秘的な瞳の女たち。特にブラワヨの薄暗いレストラン、バーカウンターの中で働いていた30歳ぐらいのお姉さんには、今からでも会いたい。
もちろん、会ってどうなるわけでもない。ときめいて、ドキドキして、人間って美しいな、他人って尊いなって思えたら、それだけで生きてきた価値あったと、僕は思う。
あと、海外で「船に乗りたい!」とか「ビール飲みたい!」とか欲望丸出しで、少量の酒で気持ちよく酔って、明日の行動予定を立てる自分が好き。海外にいる間の自分なら、愛せるんだ。
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