■ジンバブエ旅行記-6■
■11/6-1 ビクトリア・フォールズ→ブラワヨ
ビクトリア・フォールズからブラワヨへ戻る長距離バスは、昼過ぎに出る。果てしなくどうでもいいことなんだけど、ようやく電気が復旧して安眠できたと思ったら、朝になってまた停電してんの。まあ、もう帰るからいいんだけどね。
(しつこいけど、130ドル、1万5千円の朝食。)
僕は荷造りをして、坊主頭のメイドさんに「タクシーを呼んでほしい」とお願いした。「すぐに来るから、待ってて」って、椅子を運んできてくれて。彼女、いろいろと世話を焼いてくれる。で、「タクシーが来たわよ」って呼ぶんだけど、女将の車が買い物から帰ってきただけ(笑)。思わず「え? これがタクシー?」って聞いてしまったよ。
で、女将の運転する車でバス停まで送ってもらって。
インターケープ・バスの発着場所は、ケンタッキーのお店の入ったガソリンスタンドで「TOTAL」という場所。これは、さすがに地元の人でないと分からないな。
女将が、近くに座っていた青年に「バス停って、ここでいいの?」「この人もブラワヨへ行くんだって」と確認してくれて。悪い人ではないんだよね。
そして、インターケープのバスは一時間も遅刻してきて、降ろさなくていい荷物まで降ろしたりして、本当にイライラさせられる。
■11/6-2 暗闇
ブラワヨに帰り着いたとき、もちろん周囲は真っ暗だ。さて、どうやってタクシーを探そうか……と考えていたら、小柄なオジサンが「タクシー?」と声をかけてくれた。
日本から印刷してきたホテルへの地図を見せると、「分かりづらいけど、多分大丈夫」と言う。タクシーは、暗闇の中を走り出した。町中ではなくて、えらい外れにあるので、もう街灯なんて一本もない。
で、やっぱり迷ったんだよ。この暗闇の恐ろしさは、あの場に行かないと分からない。暗闇の中に、ポンとガソリンスタンドが浮かび上がって、オジサンは僕の印刷してきた地図を持って、店員さんに聞きにいってくれて。
結局は地図が間違っていたので、オジサンは手書きで地図をつくりはじめた。「間違った地図で、申し訳ない」と謝ると、オジサンは「何を言ってるんだ、僕の車にGPSがないのがイカンのだよ」と、少しも怒らない。雰囲気を和らげるためか、「日本語でハローは何て言うの?」なんて話題をそらしてくれて。
しかし、道が複雑すぎて、どんどん暗闇に迷い込んでいく。
■11/6-3 マタネ!
道沿いのバーに寄って、もう一度、道を聞きなおすことにした。僕はまだ余裕があったのだろう、「この店で缶ビールを買っていきたい」と言うと、オジサンは笑って僕の背中を叩いて。
「種類が分からないから、缶ビールを2本、どれでもいいから頼んでくれる?」とお願いしたら、オジサンは笑いながら「ザンベジ!」ってオーダーして。2本で、たったの2ドルだった。
でもね、そこからさらに迷うの。
これはもう、ダメだろう……。俺は、町中に戻ってもらって、前に泊まった“The Bulawayo Club”に行ってもらえないかと提案した。場所なら確実に分かるし、もし部屋が空いていれば、安心して泊まれるだろうから。
オジサンは別のガソリンスタンドや、すれ違った車にまで声をかけてくれた。そして、「ちょっと待って。あの車が案内してくれるって!」
たまたま近くを通りかかった車が、僕らの探していたホテル“Lynn's Guest House”を知っているという。
「あの人は、とても親切だ……」と、オジサンは先導してくれる車を見つめながら、つぶやいた。いやいや、あなただっていい人でしょう、こんな見ず知らずの日本人のために……。
すると、暗闇の中に“Lynn's Guest House”の看板が浮かび上がった。「ありがとう、お休み!」と、オジサンは先導してくれた車に声をかけた。
一時間半も、暗闇の中をさまよった。僕らは握手して、抱き合って喜んだ。「日本語でバイバイはなんて言うんだ?」と、オジサンが聞く。サヨナラでは冷たすぎるので、「マタネだよ、マタネ」と教えると、オジサンは嬉しそうに「マタネ! マタネ!」と言いながら、帰っていった。
彼の書いた地図は、捨てずに日本に持ってかえってきた。
(つづく)
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