■ジンバブエ旅行記-5■
■11/5-2 胡散臭そうなオジサンたち
『地球の歩き方』のコピーを持っていったんだけど、ビクトリア・フォールズ周辺でも強盗事件が起きたってね。有名なバオバブの木の近辺だってね。タクシーの運転手が、「でかい木があるの知ってる? そこで記念撮影すれば?」って気をつかって、連れてってくれたよ。
何しろ、象に乗れるツアーまでは5時間もある。『地球の歩き方』のコピーに、自然保護区に隣接したワニに触れる動物園があって、そこまでタクシーで運んでもらったんだ。「いくらかかる?」と聞いたら、たった10ドルだという。
本当は、こういうエリアを周回するバスを運行させればいいと思うんだよ。いちいちタクシーと交渉しなくてはならないんだけど、なぜか彼らは決してボラない。
で、そのワニ園を案内してもらって何時間かかるかと言うと、13時には回り終えるから、ピックアップしてくれるという。その帰りに、バオバブの木に寄ってくれたんだけど、周囲には土産物屋を売る露店が出ていて、もはや強盗が出るような雰囲気じゃないよ。俺は『星の王子様』とかどうでもいい汚れた人間なので、なんかこういうのは好きじゃない。
むしろ、町中にタムロしている時点では、あまりにも胡散臭そうなオジサンが、たった10ドルで約束を守って時間より早めに来てくれて、追加料金なんて請求せず、よくよく顔を見ると、目が澄んでいる。その方が美しい、と俺は思ってしまう。
旅の後半は、そんな心の優しいオジサンたちと連続して出会うことになる。
この時は、俺のほうから少し多めに払ったんだ。誠意に答えるには、それが一番だよね?
■11/5-3 オペレーション
さて、意外と早くワニ園を回ってしまったので、ビクトリア・フォールズの町で遅めの昼食をキメた。
ハンバーガーが15ドル、ビールが5ドル。これでお腹いっぱいなのだから、130ドルの朝食の意味が本当に分からない。
ツアーの集合場所近くなんだけど、タクシーから降りたとき、足がもつれて思い切り地面に転んでしまった。トイレで鏡を見たら、ものすごい汗。一杯しかビールを飲んでないのに、頭がクラクラしている。しかし、コレラの初期症状ではない。ツアーをキャンセルしようか?とも考えた。
でもね、旅行会社に入って椅子で待たせてもらっていたら、運転手のお兄さんのスラックス、靴の色、すべてが美しく調和して見えた。目が覚めるぐらい綺麗だった。ちょっとした意識変性状態だったと思うんだが、あれは何だったんだろうか。
象さんに乗れるツアーの参加者は、僕を入れて8人だったかな。他はみんな白人で、面白かったよ。白人は白人同士としか話さないから。僕には挨拶すらしないし、お礼もない。
でも、ガイドの人がそういう雰囲気を察知したのか、いちいち僕に「説明は分かった?」と話しかけてくれて。「ちょっとだけなら」と答えると、「大丈夫、俺だって日本語はちょっとしか分からないからさ」と、親指のツメの先っちょを見せてくれて。
象に乗って、一時間ほど平原を回るツアーは、確かに幻想的で良かった。雷雲が近づいていて、曇り空が美しくて。
だけど、それ以上に旅行会社のクルーが団結して、「待ち時間をつくらない」「客を飽きさせない」「記念写真やビデオなどの俗化した要求にも対応する」オペレーション遂行の段取りが、本当に素晴らしかった。たとえば、象にエサやりさせてくれるんだけど、手を洗うためのタンクを運んできて、ひとりずつ手を洗った後は、清潔なタオルが人数分用意してある。その後で、手づかみで現地の料理を食べさせるから、念が入っている。
で、どうして料理を食べさせるか?というと、撮影したばかりの写真をソフトで編集して、客にサンプルとして見せるためなんだ。気に入った客は、その場で追加料金を払ってDVDに焼いてもらう。DVDを要らない客は、ただ映像を見ながら食べて飲んでいれば無駄な時間ではないわけ。
おまけに、僕がビールを美味そうに飲んでいたら、「美味いだろ? ザンベジってビールなんだよ。もう1本どう?」と、確実に予算オーバーだろうに、2本も追加してくれた。
■11/5-4 停電
さらにすごいのは、客たちをひとりひとりホテルまで運んでくれること。
僕が泊まっている朝食130ドルのホテルは、やっぱり地元には知られていないんだ。たまたま僕がホテルのネームカードを持ってきていたので、幸いにして電話番号が分かって、それからの旅行会社の対応が素晴らしかった。
まず、他の客たちを先に降ろすから、あなたは事務所でバスを待っていてほしい、と。で、バスが外を回っている間に、事務所ではホテルへ電話連絡。社員同士で情報交換して、「分かった分かった、大丈夫だ」と、場所を確認しあう。
そして、ガイドの青年がバスに同乗して、責任もってホテルまで届けてくれる。
運転手は新しい人に代わっていたんだけど、家族の話をしてくれた。息子が4人いて、いちばん下は4歳なんだよ、とかさ。この会社のスタッフたちは、僕が日本人らしくお辞儀をしたら、「日本人はそうやってお礼をするのか」と喜んでくれたし、「日本にも雨季はあるの?」「いつか日本のどこかで会いましょう」とかさ、リップサービスにしても嬉しいじゃない。悪い気はしないもの。
今朝のペテン師の青年(■)が「日本人かい? うーん、日本はいいよね!」って似たようなこと言ってたんだけど、あの薄っぺらさは何なんだろう?
で、旅行会社の見事な連携でホテルに帰りついたら、停電してるんだよ。「そんなことより、象に乗ったんでしょ? どうだったの?」って、女将は見事に話題をそらすんだけど、エアコンが効かないから、暑くて眠れないわけ。
坊主頭のメイド(この人はキモがすわっていて、何かと頼もしい人だった)が、ロウソクなんて持って来るんだよ。女将は「20~30分で復旧するわよ」なんて言ってたくせに、結局は4時間もかかった。
「サービスとは何か?」について、考えさせられてしまうよなあ……。
(つづく)
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