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2018年11月12日 (月)

■ジンバブエ旅行記-2■

■11/3-2 コレラとクーデターの国
僕は日本国内とは逆に、海外旅行すると、女性と子供には声をかけられる。去年、マルタ共和国を旅したとき、ナイジェリア人の女性と話して「楽しかった」と言われたほどである。
しかし、「私のこと、おぼえてます?」などと聞かれたのは初めてだ。だって、昨日の夜遅くに着いたばかりじゃないか。「タクシー探してましたよね?」「それで、よく寝られたんですか?」 なんだか、怪しげな微笑を浮かべているのである。あれは幸福な瞬間だった。

そういえば、入国審査の女性も、不思議なムードを持っていた。
ビザの取得には30ドル払うのだが、「これは私へのチップかしら?」などと聞くのである。「え? ハハハ、違います」と一応否定すると、書類に目を落としたまま、「あれ? 私へのチップじゃないの?」「どうして? どうして私にはチップをくれないの?」などと、なんだか甘ったれたような口調でつづけるのである。あの時も、心臓をつかまれたよなあ……。
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さて、手荷物検査の女性は、「私のこと、おぼえてます? 私はあなたと話したこと、ちゃんと覚えてますよ」と、まだ謎かけのようなことを言う。
「覚えてないんだ、申し訳ない」と謝っても、フフンと余裕の笑みを浮かべている。思い当たることがあるとすれば、昨夜、国際便の手荷物検査のとき、「英語は大丈夫ですか?」と聞いてきた女性だ。「少しだけなら」と答えると、ツカツカと前をあるきながら「あら。もっと話せないとダメですよ?」などと、高飛車な物言いをしてきた、あの人だ。

こうして思い出しながら書いていても、彼女たちが愛しくて懐かしくて、今回の旅は、僕と通りすがりの女たちと、そして熱いオジサンたちのショートストーリー集だったのだなあ……と、胸がチクチクする。コレラとクーデターの国のくせに、なんてキュートな人たちなんだ!
大好きだ。涙が出る。「僕は、あなた方の国が大好きです」と、ずっと誰かに言いたかった。誰にも言えなかったけどね。

■11/3-3 小さな飛行機
さて、ハラレからブラワヨへ向かう小さな飛行機に乗る。ここでまた、「よお!」と声をかけられる。おそらく、昨夜のタクシー運転手だ。おそらく、ブラワヨへ出張なのだろう。
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機内で、タクシー運転手の彼は、スマホを差し出して「お前の番号、教えてくれ」などと言う。そんなもの知って、何をどうするという(笑)。だけど、不思議なことに、タクシー運転手はみんな人懐っこかった。理由は分からない。観光客相手の商売だから?
飛行機を降りると、運転手は親指を立てて、乗客とは別の方向へ歩いていった。やはり、仕事だったのだろう。

■11/3-4 ブラワヨ
ジンバブエ第二の都市、ブラワヨへと着く。そういえば、ジンバブエの朝は非常に冷える。タクシーでホテル“The Bulawayo Club ”に10時半ごろにチェックインしたとき、「毎日こんなに寒いの?」と聞いたら、モーガン・フリーマンを若くしたような守衛さん(そういう制服を着ていた)は「毎日ではありません」と答えた。なので、出かけるために長袖のシャツとスラックスに着替えた。
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どこから話せばいいのだろう、このブラワヨの魅力! まだ午前中だ。官公庁も近いので、真面目な人たちは出勤した後なのだろう。鉄格子のかかった店舗の前には、露天商が出ている。「ゴキブリ殺しの毒があるぜ」などと声をかけられるが、振り向いてはいけない。
僕は、金の入ったバッグを胸の前に持ってきて、両腕を交差させた。それぐらい、怖い。だけど、活気がある。信号が少ないので、車も人も、自己判断で道を横切る。いつしか僕は、信号無視のコツさえつかんでいた。

とても、道行く人々にカメラを向けられるムードではないのだが、新聞の見出しだけを刷って、歩道に壁新聞のように貼っているのは、カッコよかった。
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郊外に行くと、火力発電所があったりして……。そうそう、この町では白人を見かけなかった。まして、アジア人など僕ひとりなので、「何だこいつは?」という目で見られた。
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午前中歩き回ってお腹が空いてきたけど、とにかく安心して入れるような店構えのレストランなんてないわけ(笑)。どの店も薄暗いか、ビールを手にした男たちがサッカー観戦して路上まであふれていて、怖くて入れない。
そんな中で、“Licenced Restaurant”という看板が目に入った。公認? 国から許可されてるの? それなら安心だろうと思って、入った。店は半分に区切られていて、入ってすぐが立ち飲みバー。奥に入ると椅子とテーブルがあって、親子連れが食事している。客に手を洗わせるための水が用意してあるのも好印象だ(店員さんが大きなヤカンをテーブルまで持ってきてくれる)。
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奥にはバーカウンターがあって、酒を飲んでる人もいるので、ビールぐらい頼んでもいいだろう。
ただ、種類が分からないので「あなたが選んで」と、カウンター内にいた女性に頼むと、「あはははは!」とお腹をかかえて笑い出した。冷蔵庫を指差して、「あなたが選んで」と繰り返す。彼女は寒いせいだろうか、パーカーのフードをかぶっていて、神秘的な瞳をしていた。
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結論から書こう。僕は昼過ぎに、ブラワヨ郊外にあるカミ神殿へタクシーで行った。その後、再びこのお店に戻ってきて、「何か食べるものはある?」とフードをかぶった彼女に聞いた。
その時、彼女がメニューを渡しただけですませたと思う? カウンターの上で、僕と肩をくっつけて、一枚のメニューを一緒に見ながら、最初からひとつひとつ説明してくれたんだ。
「これは牛のシチューね。ご飯かパンが選べるよ」「サイズは大きい?」「うん、大きいよ。あ、あとコレはどういう料理か知ってる?」って感じに。きっとそれは、ジンバブエ独特の料理だったんだと思う。でも、説明が難しくて、よく分からなかった。ちょっと早めの夕飯は、シチューとご飯にしたんだ。

翌日、バスでビクトリア・フォールズに向かい、またブラワヨに戻ってくるんだけど、彼女の店にちょっとだけ寄ろうかと思った。また別のドラマがあったので、そういうわけにはいかなかった。
「料理はどうだった?」と皿を片付けに来たときの、あの覗きこむような瞳は、死ぬまで忘れない。美しかった。そうだ、カミ神殿に行った話を書かないといけない。次は、男たちの話だ。本当に、今回の旅はショート・ストーリーズだったんだ。

(つづく)

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