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南雅彦プロデューサーが明かす、「ボンズが20年間もオリジナルアニメをつくりつづける理由」【アニメ業界ウォッチング第50回】(■)このインタビュー記事は、『ひそねとまそたん』のBD-BOXが来月発売なので、個人的応援のつもりで企画したものです。ただ、法人としてのボンズさんにもメリットが必要だと思ったので、「20周年記念展開催の告知も入れますので」と広報の方にお話しして……と、記事を成立させる条件を考えるのが、いちばん面白いです。
そして、南さんの修羅場をくぐりぬけてきた野良犬のようなバイタリティに、ぞっこん魅せられました。この歳でもギラギラしてる人って、本当にいい顔をしてますよね。カッコいいです。
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最近、レンタルで観た映画は『ポンヌフの恋人』、『ヴィオレッタ』。それぞれ、公開時に観たきりだった。偶然だが、双方の映画にドニ・ラヴァンが出演している。『ヴィオレッタ』は、映画倫理機構から「区分適用外」、つまり「審査しないので日本国内で公開するな」と、『ぼくのエリ 200歳の少女』と同様に放置された作品。公開当時は「月刊 創」で配給会社のアンプラグドさん、映倫の大木圭之介委員長(当時)、双方に取材したものです。
いま観なおすと、映画としてはおそろしく稚拙で、映倫の人たちは何を恐れていたのだろう?と、首をかしげてしまう。主演のイザベル・ユペールの下着姿に、グッときてしまった審査委員がいたんだろうな。「猥褻」という概念は、自分の心の中にしか生じえない。「エッチだ、倫理に反する、見てはならない」と感じてしまう主体は、常に自分だ。その自分の醜さを直視する勇気がないから、誰もが「権力によって罰せられるべき」と責任転嫁する。「児童ポルノ」「性的消費」「18歳未満閲覧禁止」、ぜんぶ権力に判断を押しつける便利な言葉として使い捨てられて、「他でもない、私自身の性欲が歪んでいるのではないか?」と自らを疑う人は少ない。
「欧米に比べて日本は遅れている」、「秋葉原は治安が悪い」、何はともあれ間違っているのは他人であり、優れているのも他人である……と決めておく。改善されるべきは自分ではなく、日本であり秋葉原である。それなら、主体性も向上心も放棄できる。
ラノベの表紙で憤激し、フィギュアのパンツに狼狽し、バルテュスの絵画を見て「児童ポルノだ、禁止せよ」と怯える人々には、何か別の救いが必要だ。
『ヴィオレッタ』を観て、「主演の子がセクシーだ」「かわいらしい」と素直にレビューに書いている人たちは、少なくとも、ストレスなく心穏やかに生きているように見える。
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「多分に、怒りの表明という娯楽を楽しんでるんだと思うよ、ご意見を強い言葉で呟く人らは」(■)、おそらく、そういうことなんだろう。
僕にも、覚えがある。反原発デモに参加していた頃だ。反原発が終わると、次は秘密保護法反対デモだった。原発は今でも止めるべきと思っているが、秘密保護法はなぜ反対しているのか、自分でも分からなかった。みんなで怒鳴っているのが、だんだん気持ちよくなっていったのは確かだ。デモのコールは、いつの間にか「戦争する国、絶対反対」に変わっていた。
Twitterで、「で、次は何に反対したらええんや?」と苛立っている人がいて、ちょっと目が覚めた。デモを何千回くりかえしても、原発はなくならない。原発をやめるには、やめようと主張している僕たち自身が、具体的にコストを払わなければならないはずだ。
正しいと信じれば信じるほど、間違っていく。
原発事故の頃、ひさびさに出会った友人が、「政府が安全だと言っているんだから、安全に決まってるだろう」と、気まずそうに目をそらした。そんな生き方だけは、イヤだと思った。
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どんどん話が矮小化していくが……中学校の文化祭で(いや、「祭」は中学生にふさわしくないそうで「文化活動発表週間」と呼ばれていた)、ロックバンドの演奏が禁止されそうになった。
女教師が眉をしかめて、「ロックは禁止、私、ロックはうるさいから嫌い」と言った。僕自身はバンドを組んでいなかったし、ロックも聞かなかった。だけど、「先生が嫌がっているので、あきらめてくれ」と友だちに言うのは、それじゃあ生きている意味がないとさえ思った。だから、辛抱強く職員室で交渉した。
ロックをやっているリア充たちに日和ったわけでも何でもない。彼らの大半は、廣田はアニメ好きで暗くて汚くて、ダサいヤツと思っていただろう。
「なんで教室の隅っこでマンガ描いているようなオタクが、俺たちのために教師と交渉してるんだ?」って、変な顔で見られた。
バンドをやって、女子にモテモテになるのは彼らであって、俺ではないですよ。お前ら、自分のためなんだから自分で戦えよ、とも思った。「なんで教室で愚痴ってるの? 職員室で教師と話そうよ」と言ったおぼえもある。汚らしい、根暗のオタクの分際で、生意気にも。
おそらく、手続きを通して理想を実現しようと、コツコツと実務に励んでいる自分が好きなんだよ。何かに激怒して、相手を罵倒してスカッとした、溜飲が下がったとしたら、それは堕落の合図だね。
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