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2018年10月 2日 (火)

■1002■

ジンバブエへの旅立ちが一ヵ月後に迫り、仕事が山積みの中、ジーン・ハックマンとアル・パチーノ主演の『スケアクロウ』を、レンタルで。
Mv5bmtiyotaxntgwnl5bml5banbnxkftztyおそらく30歳をすぎてから観たことがあるんだと思う。アル・パチーノが刑務所でゲイに犯されそうになったり、子供を抱えて噴水に入り、変質者扱いされるシーンはよく覚えていた。
こんな異端者を描いたニューシネマなのに、なんとカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞している。この頃のアメリカ映画は、もう超大作でテレビを凌駕することをあきらめて、社会の裏側をシニカルに描いた低予算の映画が増えていく。

冒頭、2人の風来坊が何もない道で出会う。2人は馬が合わないが、タバコの火を借りるため近づくシーンで溶暗となり、軽快なメインテーマが流れはじめると、次のシーンは移動撮影で農家のトラックを追っている。荷台には、あれだけソリの合わなかった2人が、仲良く寝そべっている。「ああ、映画が始まった」と感じる。
カメラは停車したトラックを追いこして、振りかえる。ちょっと雑で前のめりなカメラの動きにさえ、人間くささを感じる。


ジーン・ハックマンは、妻に拒絶されて精神的におかしくなった親友のアル・パチーノを救うことができず、ひとりでピッツバーグ行きの切符を買おうとする。
ところが、少しだけお金が足りない。窓口の女性は後ろに並んでいる裕福そうな女性を先に通す。その間、ハックマンは靴を脱いで、カカトをはがして一枚の紙幣を取り出す。それでギリギリ、切符代に足りる。
カカトを剥がしてしまったので、ハックマンはカウンターに靴をガンガン打ち付けて、靴を直そうとする。その打ち付けている動きの途中で、バツン!と暗転して映画は終わる。

エンドタイトルが流れるのを見ながら、僕は全身が痺れたようになり、ただ呆気にとられた。貧乏なハックマンが靴でカウンターを叩く。カウンターの女性は、冷たい目で彼を見ている。ひょっとして、ハックマンは彼ら異端者を救おうとしない社会に対して怒っているんじゃないか――もちろん彼は、靴を直すためにカウンターを叩いているにすぎない。
「ひょっとして、靴でカウンターを叩くのは怒りの表現なのではないか」と思い当たるまでに、丸一日を要した。


これといって、凝った構図やカットワークが使われているわけではない。単純な切り返しだ。でも、粗野で朴訥な語り口だからこそ、俳優の芝居が生のまま投げ出される。その俳優の芝居を、カメラや編集が救うことはない。無駄に装飾することもない。
そして、演技の途中で、いきなり映画を終わらせてしまう。暴力的といっていい。賢くないし、綺麗でもない。
でも、だからこそ伝わるものがある。文学的な構図や機能的なカットワークが死に絶えたとしても、映画は死んでいなかった。

(C)1973 - Warner Bros. All rights reserved.

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