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2018年9月10日 (月)

■0910■

土曜夜、常磐線で土浦へ。『この世界の片隅に』を2016年の公開日から休まず上映しつづけ41360643_1876478915779347_3309628_2 ている唯一の映画館・土浦セントラルシネマズへ行って日曜朝の上映を観るため、その後に映画館から離れた亀城プラザで開催される「『この世界の片隅に』ロケ地を見よう会」に参加するため。

どうしても朝10時の上映に間に合う気がしなかったので、土浦駅前のホテルに一泊して、朝8時に宿を出た。
映画館のあるビルに着くと、やにわに「廣田さんですよね?」と声をかけられた。『マイマイ新子と千年の魔法』の上映をつづけようと試行錯誤しているころ、いずれかの場所でお目にかかった方だった。「百人ぐらい並んでいたから、もう劇場を開けたんです。びっくりしますから、行ってみてください」とのことだった。
(その方は、上映後に「廣田さん、お疲れさまでーす」と、自転車で爽やかに去っていった)。
このラフな空気感、特にどういう層ともいえない人たちが勝手に集まって勝手に解散する感覚は、確かに『マイマイ新子』が這うように上映を継続していた2009年秋~2010年春に特有のものだった。
ラピュタ阿佐ヶ谷のロビーに忽然と現れた『マイマイ新子』のサンドブラスト製グラスを手作りなさった首藤睦子さんが、『この世界の片隅に』グラス()を持って駆けつけてらしたのだから、いよいよ空気感は『マイマイ新子』めくのであった。「この空気は、僕は知ってるぞ」という感じだ。
(首藤さんとは亀城プラザでお話しさせていただいた)


『この世界の片隅に』に関しては、こうした“現場”におもむくことは自分の役目ではないとサボってきたところがある。しかし今回は、12月にある企画を考えて、自分を『この世界の片隅に』の前に正座させ、没入させねば仕事にならない……という状況に追い込んだ裏の事情がある。

何十回と映画館で観ているファンの方たちにとっては常識であることを、今ごろ発見している自分には、特に書くことはない。今回は劇中の衣装がどのように加工されていくか、じっと凝視していた。すると、片渕須直監督が劇や絵の裏に埋設した何本ものロジックのひとつに触れることができたような気がする。

『この世界の片隅に』の原作をぼんやりと曖昧に脚色して、ひたすら泣けるだけの映画に加工することも可能だったと思う。
でも、監督がそれですませるわけがないことを、僕は2010年には確信していた。まだ『マイマイ新子』は今後どうすれば継続できるだろうねとマッドハウスの方と話している頃に、「ご飯を食べている席でする話じゃないかも知れないけど……」と、監督が原爆の威力について深掘りした話題を切り出してきたから。もちろんそれは「泣ける」話なんかではなく、研究者視点からの冷徹な考察だった。
情緒的な劇や絵が成立しても耐えられるだけの頑丈な骨組みが、まず縦横に組んである。その仕事に触れないと、この映画を知ったことにはならないのでないか。……そのような焦りと畏れは、僕の場合、2010年から継続していたことになる。


「『この世界の片隅に』ロケ地を見よう会」は、すずさんの実家のある江波編だったが、象41309177_1876768802417025_683209942 徴的なシーンがあった。ファーストカットに登場する建物(現存するものなので劇中と外観は異なる)の縁の下に片渕監督が潜り込み、そこから先が海であったことを確認する。会場に、どよめきと笑い声が広がった。
主催のブリンキーさん(@bulynkey)のカメラが、監督が見たものを追う。すると、やけに高さのある鉄骨が組まれており、建物はかなり高いところに乗っかっているにすぎないことが分かる。地面は大きくえぐれており、なるほどそこから先は海だったに違いないと、素人目にも分かった。

この映像は、なんと2014年に撮影されたものなので、映画は影も形もなく……いや、影も形も出来つつあったのだ。僕が原爆についての話を聞いてから4年も経過している。
その間に、膨大に資材が集められ、猛烈な勢いで骨組みが組み立てられていたのだ。


「ロケ地を見よう会」の会場に、今年になってインタビューや個展で何度かお会いしている青木俊直さんが、ごく当たり前に「お客さん」として来ているのにも驚いたが、50~60代になってもクリエイティブな現場の第一線に立っている方たちには、独特の胆力・脚力がある。
若い頃に淡白だった人が、中年になっていきなり貪欲になるパターンは、僕は見たことがない。とすると、僕が濃度60%程度の若者だったとしたら、中年になっても60%を維持できているから、いまだに仕事をいただけていることになる。

濃度200%、1000%ぐらいの人たちは、何をどうやって生きてきたのだろう? 片渕監督にも「いつ、何時間ぐらい寝てるんですか?」「ご飯はいつ?」と、ずいぶん不躾なことを聞いてしまった。
たとえば、サンブラストのグラスを持参なさった首藤さんは監督の高校時代の同期だそうだが、短い言葉の中にも、独特のバイタリティが感じられた。
遠慮していては人生がもったいない。どこにでも行って、誰とでも会って、何でも食べてみないと、何事も分からない。

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