■0628 コップの底にこびりついて、洗っても落ちないカビのような感情■
毎日のようにスタジオに通い、若い編集者たちとゲラゲラ笑いながらプラモデルの写真を撮っている。ふらふらになって帰宅して、今日はアニメ会社へ行ってキャラクター・デザイナーさんにインタビュー、明日はまた別の模型雑誌でプラモデルの撮影……こんな風に、楽しいことをずっと毎日つづけながらお金を稼げないかなあ、と夢みた理想が、気がついたら実現されている。
個人的に、「こんなことを考えているのだが、どうしたら形になるだろう?」と相談されることも多くなった。信用されている、と実感できる。期待に応えられるだけの人脈もあるし、なければつくるだけの交渉力もある。
今週はどこへ行っても、サッカーの話題をふられた。彼らが楽しそうに話しているぶんには、にこにこ笑って聞いていられる。「サッカーどころかスポーツ全般が苦手なので、俺の前では話さないでくれ」などとは微塵も思わない。そう思わなくてすむように、人生の舵とりをしてきたつもりだった。
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私がW杯日本代表を応援しない超個人的でチンケな理由について(■)
“チームが負けた場合は、たかが体育の授業にもかかわらず「お前は死ねやカスが」などと全力で罵倒してガンを飛ばし、敗戦に至ったお詫びとして購買のパンやジュースを買わせようとするやつが出てくる。彼らはさらに、たかが球蹴りや球投げの能力にもとづく人物評価を、普段の班決めだの社会科のグループワークだのの日常生活にも持ち込み、しばしば私にマウンティングや威嚇を加えてくる――。”
ああ、僕の高校時代そのままじゃん。
バスケットやバレーボールが出来ないと、ただ廊下を歩いたり弁当を食べたりしているだけでも「おいおい、変なのがいるぞ!」と大声で指さされ、女子たちが笑い転げていた。
それは昔の話だって?
今だってそうだよ。コンビニでコピーをとろうとして待っていたら、コピー機でチケットか何かをプリントしている若い男がいた。僕をチラッと見ると、壁にもたれて、すました顔でスマホを取り出した。「ああ、コイツは待たせておいても大丈夫なやつだ」「殴り合っても勝てるヘナチョコだからな」って、そういう目をする。大学で「テメエごときが俺と対等の口きくな!」と僕を怒鳴りつけた男がいて、彼もまったく同じ目をしていた。こういうのって、動物的な優劣に近い。
実は、スポーツは関係ない。団体競技などの閉鎖的な組織だと陰湿さが露呈しやすいだけの話であって、軽蔑と嘲りの塊みたいな人が、たまにいる。「廣田さん、もうオッサンだし禿げてるじゃん。これから彼女なんて出来ないだろうし、一人でどうすんの?」とか、酒に酔ってもないのに言えてしまう人、いるんだよ。
「ざまあみろ、俺の勝ちだぜ」って、勝手に他人を蔑む人。スポーツだけじゃなくて、趣味の世界にもいるよ。優越感で他人を圧迫する人。
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なんてこった、と呆然とする。
ごくわずかな得意な部分をこつこつ伸ばしてここまで来たのに、ヒョイと足を出して転ばされて、「ああ、自分には不得意なことがいっぱいあったんだっけ」と思い起こされてしまう。
「人生の大切な時期を、強い同性や多くの異性から嘲笑されて過ごした、それが俺だ」「俺の人生って、やっぱり失敗作なんじゃないのか? もっと早く終わらせておくべきだったんじゃないか?」
コップの底にこびりついて、洗っても落ちないカビのような感情。
ブログにこうして独り言を書くでしょ? 「被害妄想なんだよ」「卑屈なんだよ」「いい歳して、いつまでも学生時代のことをネチネチと」と言われますよ、Twitterとかで。だから、そのあなた方の肥大した優越感が、他人の傷に触れることがあるんだよって話。無神経だから分からないだけだよ、バカだのカスだのネットに書いてられる人たちは。
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ちょっと話題をかえよう。
Twitterで「母が亡くなって何年も経つのにNHKから督促状が止まらない」と話題 → マジなのかNHKに問い合わせてみた結果(■)
学生時代にスポーツができなかったことを「いつまでもウジウジと悩むな」と高圧的に説教する人って、おそらくNHKに関しても「受信料ぐらい払えや、決まりだろ」って言いそうだよね。単に、自分が強者の側に立ちたいだけだから。
原発事故のとき、本当に露骨だった。「放射能なんて安全だよ、なに怖がってんだよ、無知どもが」「何が反原発だよ、電気使わないのかよ?」「そんなに嫌なら日本から出てけよ」って、ようするに何も問題にしたくない、現状維持したいから問題提起する人が煙たいってだけだよね?
原発も日大アメフト部も、警官の性犯罪がうやむやに揉み消されるのもNHKが恫喝めいた取り立てを続けられるのも、体育の時間に苦しんだ人たちを黙らせるのも、根っこは同じという気がする。自分の優越感や正当性をキープするため、強い側につきたい人たちが、とても多いんだよ。「いま騒いでる連中ってバカだよね、クズだよね」と暴言を吐いて他者を蔑んだ方が手っ取り早い。
コンプレックスの中から這い上がって、理想的な人生を手に入れるなんて、彼らには想像も及ばないだろうな。
関連■0523 「支配されたくない、だから支配しない」■(■)
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