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2018年6月 6日 (水)

■0606■

『女優で声優の“はるかぜちゃん”こと春名風花さんが出演予定だった舞台「偏執狂短編集IV」が、警視庁から「ヌード及びわいせつ物の露出表現の自粛」の要請を受け、公演内容を一部変更することを決定しました。』(

劇団Voyantroupeの演劇の公式サイト()によると、何者かによって「わいせつ物の陳列および未成年者への児童ポルノ強制または青少年育成法違反の疑惑がある」と通報されたそうだ。
劇団および主催者からも、法令にもとづく正確な抗議がなされいるとは言いがたく、Twitterを検索すると「児童ポルノ」の勝手気ままな自己解釈があちこちで展開されている。
総務省行政管理局の運営するe-Govに記載された「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」の法令文()を一読されたい。

法令では『この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物』となっているので、目の前で上演される演劇はそもそも記録物を指す「児童ポルノ」になりようがないのだが、その辺はどうでもいいから、自分がわいせつでけしからんと思ったものを片っぱしから「児童ポルノ」と呼びたい、たまにはフィギュアなんかもひっくるめて「児童ポルノ」と呼び含めたい警察や不勉強なマスコミと、糾弾される立場の表現者サイドが同じような曖昧な認識を共有していてはいけない。

公権力の介入を拒みたければ、表現者は勉強しておかねばならない。「自分を信じて、一生懸命やるだけだ」では、次もその次も、ずっと負けつづける。


春名風花さんについては、彼女が小学生~中学生ぐらいのとき、Twitter上で大人たちから「あなたの年齢だとよく分からないと思うけど」「大人になれば分かると思うけど」と説教されまくっているのを、よく見かけた。
マウントをとるのに「相手が子供である」ことをダシにする大人があまりにも多いことに、慄然としたものだった。だから、「日大アメフト部」はこの国のいたるところに偏在している。年齢や立場を武器にして他人をコントロールしたい大人たちで、この国はあふれかえっている。
春名さんのブログに、痛快な一説があったので、以下に引用しておこう。

『オリンピックに出るような子供たちが、

子役なんかの比にならないくらい

スポーツに全てを捧げた生活をしていても、

朝も夜もなく何時間も厳しい特訓を受けて

学校を休んで海外の大会に出ていても、

何も言われないどころか、賞賛されるのに

芸能活動をしている子役は可哀想って言われるのが、

ぼくにはイメージによる偏見としか思えない。』(


性犯罪やセクハラがいけないのは、相手の望んでいないことを腕力や権力で無理強いするからだ。性欲がいけないのではない。力を行使して相手を支配することがいけないのだ。
「児童ポルノ」(この呼び方、あらためて変えたほうがいいと痛感しているが)規制法は、大人が子供に無理強いすることを禁ずる法律だったはずなのに、「未成年に性欲を抱くことを禁ずる」概念になってしまった。

上のブログを見ると、春名風花さんは「ぼくがかわいそうかどうか決めるのはぼく自身であって、他人が勝手にぼくの気持ちを決めつけてさわぐことじゃありません」と、七年前に発言している。
春名さんぐらいの年齢の人たちを守るための法律が、春名さんの主体性を奪うために乱用されている。そもそも、子供はバカではない。大人に対する批評眼もある。だが、支配欲の肥大した大人たちは子供の無力さにつけこんで「我々が管理すべきだ」と力で縛りたがる。

スポーツ界の話だけではない。文化や芸術の世界にも、「目上・目下」の概念があって、相手が年下というだけで呼び捨てにしたりタメ口をきいたりするような人は、すごく多い。抑圧の萌芽は、いたるところに芽吹いている。

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