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Figure-rise LABOは「プラモデル」という箱舟で未知の大海へ漕ぎ出す(■)
公式サイトに、コラムを書かせていただきました。
2月ごろ、テストショットを受け取ってすぐ書いたものなので、ちょっと前のめりすぎて下手な文章だと思います。バンダイさんからは、「自分たちはこの製品にずっと関わってきて、冷静に何がどう良いのか、伝えづらくなっている」とのことで、僕に冷静に製品の魅力を書いてほしい、というご依頼でした。だけど、このコラムの時点で、僕も冷静ではなくなっていると思います。
本当は、あと2パターンぐらい書き方を提案できたんです。その相談ができなかったので、雑誌の企画でフォローを入れるつもりでいます。
ただ、アニメキャラの瞳の描画がデジタル化によってどのようなモードを生んだのか、それを射出成形のみで再構築しようとすると、どういう解釈とメソッドが必要になるのか。これはアニメとプラモデル、両方の「表層」を観察していないと、気づけないことです。
今、「表層」を価値づけする人が、ほとんどいない。「何となく良いと思う」「とにかく好きだ」「よく分からないけど猛烈に感動した」等、感情の振幅だけが重視されるのは、僕は怖い風潮だと思っています。
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ポケットに、指令書がくしゃくしゃのレシートの中に紛れ込んでいる。
通信の代わりに、ポケットの中に指令書が転送されてくる。
ロボットへの指令は、「お前は、上等なシャツのように、自由そのものになるのだ」など、詩的なセリフで行う。
味方のロボットは大聖堂の地下にある巨大コントロール・ルームで、50名のスタッフによって動かされている。
主人公も、かつてはオペレーターの出身だった。
コントロール・ルームは、キリスト教圏の各国にある。
最新鋭戦闘機やヘリのような、スマートなイメージ。だが、動きは鈍重で、とても大きい。
敵のロボットは、19世紀ぐらいに作られたロボット兵器である。火炎放射器やハンマーなどの古風な武器を持つ。
たいがい、呪術的な力で個人の怨念や嫉妬によって動かされる。
鬼の顔などが彫られており、リベットが打たれ、第一次大戦風である。
操縦者は、どこか遠くからリモコン操作している。姿は見せない。
ドイツの怪兵器のイメージ。
水陸両用だったりする。
味方のロボット“エルヴァ”
主動力・重力アシスト機関
武装
右副腕・モンロー=ノイマン式爆砕穿孔器
左副腕・準グラヴィトン級80口径熱線銃
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これは、「短編小説メモ」として四年間、忘れ去られていた文書ファイルです。当時は、プラモデルと小説による「フォトストーリー」で、同人誌(というか、カラーコピーしただけのペーパー)を作ろうと思っていたのです。スーパーフェスティバルで、一枚百円で売るつもりでした。
以下、プロットらしきものが続きます。
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第一話
僕は、着いたばかりの南欧の架空の街で、彼女と待ち合わせる。
彼女と自転車に乗って、あちこちの店先を回る。大聖堂、ケーブルカー。ケバブを路上で食べる。路面電車の終点である周囲には、人々が列をなしている。
ここは、ほんの20年前に内戦のあった土地である。しかし、子供たちが元気に橋を渡っていく。遠くには、団地が見える。
僕は、気分が滅入って、ホテルに戻る。同時に、彼女と別れる。僕は、彼女は堕落したと思う(コスプレか髪を染めたせいで)。
ひとりホテルに戻ると、路面電車をたどれば、中央駅に出られると分かる。帰り道を知りたいので、その道を辿ることにする。
すると、道の途中に、巨大ロボットが現われる。戦争時代のロボット。
僕のポケットに、指令書が入っている。上空の輸送機から、ロボットが投下される。夕暮れの街で、ロボット同士の戦いが始まる。僕は、適切に指示を飛ばす。
敵ロボットは敗退する。その火花の向こうに、彼女が見える。
彼女は、何かキツいことを言って立ち去る。
僕は、呆然として見送る。引き返して、カフェでビールを飲む。
翌朝、路面電車で中央駅へ向かう。
昨夜の戦闘跡は、工事現場になっている。夢だったのかも知れない。
僕は、中央駅からタクシーを拾う。「エアポート」と言うと、運転手は「エアポルト」と言い直す。
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これは明らかに、二回目のクロアチア旅行での体験に、架空の女性キャラクターとロボットを絡ませただけです。今後、僕が小説など書くかどうかは別にして、自分の体験を自分で粉飾して、自分を楽しませるだけの行為は必要な気がしています。
「メモ」には、クロアチア語とスウェーデン語を使ったネーミング案が書かれ、最後に第1話の書き出しが数行だけ残っています。主役ロボットの“エルヴァ”とは、スウェーデン語で「11番目」という意味です。
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諜報機関“街路の鉄薔薇”は、重力アシスト機関を応用した11番目のロボットを作戦に投入。コードネーム“エルヴァ”は、過去3回、僕のコントロールで諜報任務に就いた。
だが、3度目の作戦後、エルヴァは地球低軌道を飛行中に消息を絶った。それから4年――。
“街路の鉄薔薇”を脱退した僕は、東欧のある街で、かつての恋人と待ち合わせていた。
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結構いいじゃん、と思ってます。旅行をベースにしていることもあるけど、これは好きで書いている、と自分でも分かります。こういう自分を楽しませる文章を失って、とにかく書いて金にしなければ……と焦っている人生は、虚無です。
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