« ■0131■ | トップページ | ■0206■ »

2018年2月 2日 (金)

■0202■

レンタルで、チャールズ・チャップリン監督の『街の灯』。
Mv5bmtk5otuwmtuzmf5bml5banbnxkftztc途中、チャップリンが笛を飲み込んでしまい、しゃっくりをするたびに笛の音が鳴るギャグがある。笛の音が鳴らないと、まったく面白さが伝わらないシーンなので「上映当時はサイレントでも笑えたのだろうか?」と疑問に思っていたら、なんとこの映画はセリフこそ入っていないものの、音楽と一部の効果音だけはサウンドトラックに録音されて公開されたのだという。
1931年の公開だから、1927年の『ジャズシンガー』、1928年の『紐育の灯』による完全トーキー化完了後、サイレントへの回帰を志した作品だったのだ。セリフは、すべて字幕だ。


盲目の花売り娘が、チャップリン演じる浮浪者に親切にされる。
花を買ってもらった娘は浮浪者の胸に花を飾ってやり、お釣りを渡そうとするのだが、浮浪者の後ろから立派な紳士が歩いてきて、タクシーに乗り込む。その音を聞いて、娘は浮浪者がタクシーに乗って立ち去ったものと勘違いする。もちろん、当の浮浪者はその場に残っており、娘の思い込みを壊さないよう、足音を立てぬようにその場を立ち去る。
このシーンは「音」がドラマの要素であるにも関わらず、効果音は入っていない。芝居の段取りだけで娘と浮浪者の行き違いを見せている。

やがて、娘は手術によって目が見えるようになる。
Mv5bngnlmzniy2utmjaznc00nwy1lwjmymm彼女は浮浪者と再会するのだが、初めて会ったときはタクシーに乗れるぐらいのお金持ちだと勘違いしていたので、みすぼらしい身なりの浮浪者にお金を恵んでやろうとする。だが、彼の手に触れたとき、花を飾ってやったときの感触が記憶によみがえり、恩人と再会したことに気がつく。
このシーンでは、娘が浮浪者に触れる手だけをアップで抜いている。彼女の手は、かつて盲目だったころのような手つきになって、浮浪者の手と胸を撫でるように触る。これだけで、観客は彼女の心のうちが手にとるように分かる。「あなたでしたのね」「見えるようになった?」と字幕が入るが、これは余計だろう。
カットワークは凡庸な切り返しなのだが、小道具と仕草だけで、セリフに頼らないドラマが成立している。このシーンは、映画でなくとも演劇でも再現可能だ。だが、サイレント映画の雄弁さを伝える美しいシーンであることは間違いない。


演劇で再現可能ならば、それは映画である必要はない。上で書いたことは、実は脚本や演劇への評価であって、映画を誉めていない。
『街の灯』を見て、僕は涙をにじませたが、「映画の機能に感動したわけではない」と冷徹に割り切らなければ、映画の本質は見えてこない。「泣いた」「感動した」なんてことに重点を置きすぎると、結局は粗雑な作品鑑賞しか体験できないのだと思う。

代替可能な要素は、そのメディアの本質ではない。
実写映画は、目の前の現象を記録することで24枚の静止画を得る。アニメーションは、先に静止画を作成して、それを記録する。両者にはフレームやカットなどの共通概念があるので、「生身の俳優か絵で描かれた人物の差しかない」ように見えるが、全工程の中で「撮影」が正反対に位置している。よって、同じ表現とは言いがたいと思う。


しかし先日、あるCGアニメ作品のモーションキャプチャの収録現場を見学させてもらって、おおいに当惑した。いくつもの役をたった三人で演じ分けているのだが、俳優のアドリブもあれば、うまくセリフを言えない場合は、予定されていたカットを変更したりもする。小道具が必要になったり不要になったり、現場で予測不可能な事態が起きる。
つまり、静止画を得るために目の前の物理現象を記録する工程が必要であり、その内容は被写体の特性に大きく左右される。ロト・スコーピングでも、同じことが言えるかも知れない。

「被写体が絵だからアニメ」というわけではないのは、確かなことのようだ。
僕は『RWBY』を観るとき、構図やカット割はいっさい頭に入らず、もっぱらキャラクターの表情、芝居やセリフに夢中になっているが、あの作品がモーションキャプチャを使っていることと無縁ではないような気がしてきた。 

(C)1931 - Warner Bros. All rights reserved.

|

« ■0131■ | トップページ | ■0206■ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106227/66349601

この記事へのトラックバック一覧です: ■0202■:

« ■0131■ | トップページ | ■0206■ »