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2017年12月27日 (水)

■1227■

どうしても日本語吹替え版も観ておきたくて、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』、二回目。
Star_wars_bag_1この映画はシーンの終わりでキャラクターの名前、またはキャラクターを想起させるセリフを入れて、続くカット頭で関連のありそうな人物のアップから始める、思わせぶりなシーン転換が多い。それが上手くいっている箇所もあれば、あざとい箇所もある。
「シーン転換があざとい」なら、映画への批判として成立すると思う。「そんな技が使えるなら、なぜ先に使わないのか」などは、ストーリー批判であって、映画批判になっていない。誰がどんな技を使うとか最後に誰が死ぬだとかは、映画を観なくてもプロットを読めば分かる。

たとえば、レイがスノークによって宙吊りにされて絶叫しているシーン。レイの体はあおむけになり、頭は画面右にある。そのシーンが途中で切れた直後、気を失っていたポーが目覚めるシーンへ繋がる。ポーは、頭を画面右に向けた状態から起き上がる。つまり、前シーンのレイと体の向きが同じなわけ。
レイとポーは出会っていないし、作劇的なつながりもない。単に視覚的テンポをつけるために、構図を似せている。これを「テンポのいいカットワーク」と認めるか、「中身のないハッタリ」と批判するか……それなら、議論する価値がありそうだ。シーン転換やカット割りは、僕らの生理に直接訴えてくるし、映画の思想・方向性って、そういうところに宿ると思う。


もうひとつ。
昨日の『カサブランカ』の記事()に書いたこととも関連するけど、映画は別々の場所で撮った映像を編集することで、シーンを作り上げる。人物Aが画面右を向いてるショット、人物Bが画面左を向いているショット。これを繰り返すと、撮影現場では別々に撮った映像であっても、同じ場所でリアルタイムに会話しているように見える。
10年前に撮った人物Aの映像であっても、アングルさえ同じであれば、人物Bと会話させることが出来る。映画っていうのは、そういうメカニズム、機能をもっている。

『最後のジェダイ』を批判しているラジオでも触れられていたけど、レイとベンの会話シーンは、もっとも原初的な「右を向いた人物A」と「左を向いた人物B」、ふたつのショットの切り返しのみで成り立っている。
Httpsjphypebeastcomfiles201708http2ただし、レイの背景は惑星上の島。ベンの背景は敵軍の基地内。島で雨が降っているなら、ベンのいる基地のガラス窓も濡れていて、窓外では火花が散っていて、ちょっと雨っぽいイメージになっている。
(ベンが上手方向、つまり右を向いている場合が多かったと思う)
レイが振り向いて左を向いたとしたら、ベンも振り向いて右を向く。しかし、背景はまったく別。もちろん撮影現場も別。構図の一致だけで、身近で会話しているように見せている。
『最後のジェダイ』だけでなく、カメラを複数台回してない以上、劇映画の切り返しは、必ず別の時間・別の場所で撮っている。劇映画って、そういうウソのうえに成立している。ウソとウソを繋げて、本物のように見せている。レイとベンのテレパシーのシーンは、映画のウソを逆転利用して非現実感を出しているわけで、たいへん感心させられた。


そのような劇映画に特有の原理、機能が、『最後のジェダイ』では有効に使われている。「一本の映画として」批評する以上、劇映画の根本原理を無視していいわけがない。

だけど、『最後のジェダイ』にかぎらず、「ここが変だよ、矛盾しているよ」「このキャラクターは、なんでこんなに頭が悪いんだよ」といったストーリー批判しか、インターネットでは見かけない。ストーリー批判でなければ、「この映画は何が言いたいんだ?」と、目に見えないメッセージ批判へ飛躍してしまう。

また、『最後のジェダイ』では、この映画を誉めているヤツが気に食わない、出演女優の顔が嫌いといった幼稚なヘイトやルッキズムが目立つ。僕も、茶化されたり噛みつかれたりした。政治の話題ではヘイトは珍しくないけど、自由であるはずの映画の世界にまで、どちらが多数派で正しいだとか、敵の味方は敵といった考え方が浸透していくのだろうか。
映画を誉めたり貶したりする人が映画評論家だと思われている現状では、モラルの崩壊も仕方がないのかも知れない。

『カサブランカ』のDVDには映画評論家ロジャー・エバートの音声解説が付いていて、霧の中で飛行機の飛び立つ美しいラストシーンで、「ハンフリー・ボガートも飛行機に乗って逃げればいいのに、どうしてわざわざ飛行場に残るのだろうか? まるで分からない」と矛盾を指摘したあとで「だけど、いちばん好きな映画だ」と結んでいる。
ロジャー・エバートも点数をつけたり貶したりするのが好きな人だったけど、『最後のジェダイ』をとりまく現状は、個人の好みの問題を越えてしまっているかに見える。

(C)2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

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