« ■1015■ | トップページ | ■1021■ »

2017年10月17日 (火)

■1017■

録りこぼしていたアニメを、ウェブ配信で少しずつ見ている。
1_3『少女終末旅行』。軍服を着た少女ふたりが、廃墟となった無人の街を旅する。

ふたりは、終始密着しているため、動きのストロークが短い。一メートルと離れていない相手に、コーヒーカップを手渡す。相手はカップを受け取るまでに指を広げたり、指差したり、細かな演技をする。リピートも入っているが、短い距離の中に多彩な動きを織り込んでいる。絵が単純だから動きも単純なのだろう、というものではない。キャラデに惑わされてはいけない。
アニメーションは時間を組み立てるものだし、時間の推移を味わうものだと思う。


後半、飛行機のプロペラに少女ふたりが乗る。ひとりは、両足で蹴って、プロペラを回そうとする。ひとりは、落ちまいとしてプロペラにしがみついている。二回蹴ったところで、プロペラは大きく回転し、三回目の蹴りを入れようとしていた少女の体は浮いてしまい、縦に回転しながら落ちる。しがみついていた方の少女は、それこそプロペラのように手足を開いて横に回転してから落ちる。
まっさかさまに落ちるのではなく、ほんの少し滞空してから落ちる。実時間とは異なる、絵によって組み立てられた時間を感じとることが出来る。
少女であるとかミリタリーであるとか、モチーフは二の次であって、アニメーションの面白さを分解していくと、「時間をどうコントロールしているか」だけが残される気がしている。そこから副次的に、キャラが可愛いとかテーマやストーリーがどうだとか、文学的な評価へ分岐していくんだと思う。


『Just Because!』、これも第一話だけ。
Ab5e481434d8b684e7e0b9d561f5d290450「時間をどうコントロールしているか」がアニメの面白さ……と言っておいて何だが、こちらは空間を感じさせる作品だった。

教室をロングショットで捉えている。教室の入り口に立った二人の男子生徒が、机に座って日誌をつけている友人と会話をかわす。同じフレーム内に教師がいて、ふたりの女子生徒に「○○と○○は、この後、面談な」と声をかける。ひとりは「はい」と短く答え、もうひとりは「えーっ」と嫌そうな声を出す。
そのとき、入り口に立っていた男子生徒が無言でちょっと教師のほうを見る。そのさり気ない視線の移動によって、急に教室が広く見えるのである。教室は、椅子と机がBOOKに分けてあるだけで、レイヤーでいえば背景一枚だ。その一枚絵が、立場や状況の違う人物たちの芝居を交差させることにより、ちゃんと奥行きのある空間に見えてくる。


別のシーンで、廊下をふたりの人物がすれ違う。ひとりは静かに歩いていて、もうひとりは上体を思い切り前に倒して走っている。ふたりのポーズや移動速度が違うことによって、急に廊下の距離が意識される。一枚の廊下の絵が、廊下として空間的に機能する。

アニメの撮影がデジタル化されてから、撮影台に存在していた物理的な距離は消失した。だから、アニメーションだけの原理で距離を表現しなくてはならない。3DCGで背景を組んだから立体的な表現ができるわけではない(それはアニメーションの原理とは無関係に思える)。人物が息をきらして走ってくる芝居を重ねたとき、初めて距離が表現できるのではないだろうか。
つまり、空間であれ立体であれ、映像においては時間を駆使するほか、表現のしようがない。教室の広さや廊下の長さを表現するには、そこで人物を動かすしかない。あるいは、ピタリと止まった背景のみの絵でも、環境音を入れれば広がりが感じられるかも知れない。


実は、『Just Because!』には優れたカッティングがある。
転校生の少年が廊下を歩いてくるが、進行方向から女生徒ふたりが歩いてきたので、柱の陰に隠れる。手持ち無沙汰になった彼は、手近に置いてあるパンフレットを読む。
彼がふと目をあげると(ここまで、ロングショットのワンカット)、窓際にかばんが置かれている。人物はいない。完全な一枚絵だ。だが、ロングショットに直結した空舞台の(人物がいない)一枚絵は、とても広く感じられる。
すなわち、カッティングによっても空間は表現できる。しかし、音声であれカッティングであれ、結局は時間を必要とする。

『少女終末旅行』がエキサイティングなのは、なるべく演技だけで見せようとしているからだ。そこには実時間ではない、絵の連続のみによる架空の時間が流れている。
『Just Because!』のように、実写映画のロジックを援用した見せ方も面白いのだが、アニメーションとしての純度は薄まる(その分だけ実写映画には近づく)。
しかし、なぜか『少女終末旅行』のように、アニメーションならではの架空時間をむき出しにした作品のほうを、僕は「映画っぽい」と感じてしまう。
(C)つくみず・新潮社/「少女終末旅行」製作委員会
(C)FOA/Just Because! 製作委員会

|

« ■1015■ | トップページ | ■1021■ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106227/65927341

この記事へのトラックバック一覧です: ■1017■:

« ■1015■ | トップページ | ■1021■ »