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2017年9月 8日 (金)

■0908■

レンタルで、15年ほど前に大ヒットしたというミュージカル映画『シカゴ』。
Mv5bndcwmjq4mde3n15bml5banbnxkftztcその時期は結婚していて、幽閉されていたも同然だから、舞台版のタイトルを小耳にはさんだ程度だった。1920年代のシカゴ、ナイトクラブでキラキラの衣装で……モチーフだけ見ると、まったく興味がわかない。
だけど、モチーフは何でもいい、登場人物に共感できなくてもいい。どのように語ったか、どのように映画というプロトコルを使いこなしたか。そこに興味がある。

主人公の冴えない女性(レネー・ゼルウィガー)が、華やかなナイトクラブの踊り子を見ている。主人公もスターを夢見ているが、浮気相手にだまされていて、情事に没頭していく。ベッドに倒れこむ主人公と、舞台で歌う踊り子のアクションがカットバックして、ひとつのアクションを形づくる。
「おい、ちょっと待てよ」と、身を乗り出した。主人公は物理的には歌ってもいないし踊ってもいないんだけど、舞台の上の踊り子とカットバックさせることで、ちゃんと歌っているじゃないか。「これは素晴らしい、贅沢な作品が始まったぞ」と、居住まいを正したよ。


主人公はアパートで浮気相手を撃ち殺してしまうんだけど、旦那が警察官に「俺が撃った」とウソをつく。主人公の顔に、警察官の持った懐中電灯が当てられる。その光は、いつの間にか舞台の照明になっていて、主人公は自分の旦那について歌いはじめる。何の段取りもなく、彼女は舞台に立っていて、ゴージャスな衣装をまとっている。

ところが、旦那は裏切って、女房が撃ったとバラしてしまう。そのシーンはカットバックではMv5bmzjkyty2n2itmdi0mc00zdkwltg4mge なくて、「主人公のいる舞台」に「アパートにいる旦那」を合成して……と、やけに古典的な演出だな?と思いきや、合成ではない。舞台の上、暗がりをはさんだ向こうに実際に旦那が座っている。空間的な距離なんて、ヒョイッと飛び越えている。
「なんて自由な映画なんだろう!」と、胸が熱くなった。この映画だけの約束事を提示して、その力を存分に行使している。その堂々とした態度。別になにか文学的なテーマがあるわけじゃないですよ。ほとんどのミュージカルがそうであるように、「生きるって素晴らしい、歌って素晴らしい」ぐらいのものですよ。

人生にリズムを見つけ出して、そのリズムに映画を乗せている。表現することへの喜びがむき出しになっている。絞首刑のシーンだろうと裁判のシーンだろうと、ぜんぶ歌と踊りで祝福する。
その方法論が観客に通じなかったら、まっさかさまに墜落してしまう。綱渡りのように危なっかしい、だけど、すごく嬉しそう。吹きっさらしの風の中で、自分の二本だけの足で立っている、そういう表現が好きだ。勇気が出る。


でもねえ……この映画が公開されたころって、監獄のような結婚生活で、妻と一緒に見る映画は血の出るようなアクションか、エロい映画ばかりだった。人生を肯定できるような要素がなかったんですね。仕事はバカにされるし、友達とは会わせてもらえないし。
アパシー(無感情)だったですよ、離婚までの三年間。離婚届けを出したとメールをもらった夜は感動のあまり、ひとりでカラオケ屋に行って、ムーンライダーズの歌を朝までうたった。結婚時代は、好きな音楽すらバカにされていたので、すごい開放感だったよ。

あのまま結婚していたら、こんな宝石みたいな映画とは出会えなかっただろうし、出会えたとしても感動する心がなかった。静かに壊れていたんだろうな。
今は、なんと自由で穏やかな日々よ。

(C)2002 - Miramax

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