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2017年9月24日 (日)

■0924■

友人2人と、TOHOシネマズ新宿にて『エイリアン:コヴェナント』。
Aliencovenant120170504023409ひとりはオタク濃度が薄く、前作『プロメテウス』は見ていなかった。だが、『エイアリン』公開の年は全員が中学生だったので、一作目だけは何度も見ている。まず、『エイリアン』を覚えてさえいれば、『~コヴェナント』は理解できる。そして、『エイリアン2』以降の通俗性と作家性がごった煮となった何本かの続編シリーズは、すべて忘れてもいい。

もちろん、『~コヴェナント』が第一作目『エイリアン』の前日譚であることも理由のひとつではある。もうひとつ、『エイリアン2』で、エイリアンは女王蟻のような単一のメスが卵を産むことで数を増やしているという設定が付け加えられた。第一作目でカットされたシーンには、犠牲者の肉体が生きたままエイリアンの卵と化していくシーンがあった。つまり、エイリアンは人間さえ犠牲にすれば、個体でも繁殖していくことが出来る。その残虐な設定が気に入っていたので、クイーン・エイリアンが登場したときは、かなり白けたものだった。
『~コヴェナント』は、エイリアンが繁殖するのになぜ人間を必要とするのか、はっきりと描いている。人類の到達していない惑星で生まれたはずのフェイス・ハガーが、どうして人間の顔にジャスト・フィットしたのか。ちゃんと説明できているので、好感をもった。


また、洗練された西欧人が未知の文明と出会って価値観を変えざるを得なくなる、リドリー・スコットが頻繁に取り上げてきたテーマも、きっちりと表出している。
640前作『プロメテウス』で登場したロボット(第一作目ではアンドロイドではなく「ロボット」と呼んでいたので、これに倣いたい)が、『~コヴェナント』にも登場する。彼は、たったひとりで無人の惑星に篭り、ずっとエイリアンの研究を続けていたのだ。
その研究の様子がいい。パソコンなどのハイテク機器はひとつもなく、実験の記録はすべて紙にインクで書き、丸めて棚に整理してある。標本は、薄汚れたガラス瓶に収められている。
中世ヨーロッパの修道院のような研究施設を訪れるのが、人間に奉仕してきた同じタイプのロボットである。冒頭で、彼は(進歩した文明を象徴するかのような)真っ白な清潔な部屋で生まれた。彼には、音楽の才能がある。エイリアンの研究に耽溺しているもう一人のロボットは、原始的な笛を持っているのだが、彼は吹き方を知らない。そこで、ロボットがロボットに楽器の演奏のしかたを教えるシーンが出てくる。
異文化の邂逅にしか、リドリー・スコットの興味はないのだろうし、それで十分であることが改めて分かる。


だが、僕はモチーフ、題材を映画の本質だとは思っていないので、ロボットの知能や進化、エイリアンの秘密などには、それほどの興味はない。
一方で、『スター・ウォーズ』のように「映画の体をなしていないが、題材や被写体が猛烈に面白い」タイプの映画にも、しばしば魅了されてきた。だからこそ、モチーフの魅力で映画の価値を推し量ってはならないと思う。
カッコいい宇宙船が出てきたからカッコいい映画とはならない。それなのに、いつでも「モチーフがいかに魅力的であるか」が、映画の印象とごっちゃに語られる。「どんな知恵を使って、モチーフを魅力的に見せているか」が、映画の価値ではないのだろうか。
あるいは、モチーフの面白さに頼りすぎ、映画としてはガタガタな状態からも、別の角度から「映画の価値」は見つかるのではなかろうか。

『~コヴェナント』の冒頭に、生まれたばかりのロボットの瞳のアップがある。『ブレードランナー』でも瞳のアップがあったぞ、という比較画像がネットに出回っている。
同じ作家が同じ構図を使っていることに着目するのは、とても良いことだ。そこから、映画の本質を探る旅が始まるのだろう。だが、ネットの常で、「ホントだ同じ絵だね!」で思考停止してしまう。いつものように祭のネタとして燃焼させて終了、なのだ。

慎重を期するには、やはり紙に印刷された研究書を、孤独に読み進めるしかない。ネットには共感を求める意志が溢れすぎていて、僕はときどき怖くなる。

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

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コメント

不躾な指摘で申し訳ございません。冒頭で言及されているロボットはエイリアンの研究に没頭している方ではないでしょうか?  

投稿: judis | 2017年10月 2日 (月) 00時55分

■judis様
コメントありがとうございます。
そうなんですか? すみません、気がつかなくて。しかし、そうだとしたら、ますます面白いです。

投稿: 廣田恵介 | 2017年10月 2日 (月) 08時24分

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