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2017年9月 6日 (水)

■0906■

月刊Goods Press 10月号 発売中
●大河原邦男さんインタビュー
Bandicam_20170906_105710437 特集「ザク、その革新の系譜」で、ザクの生みの親である大河原邦男さんにインタビューさせていただきました。
一般誌でもありますし、これといった新事実や斬新な切り口があるわけではありません。だけど、大河原さんの仕事に対する柔軟性あるスタンスが、鮮やかに伝わってくれるんじゃないかと思います。何度お話を聞いても、すがすがしい気持ちに立ち返ることができます。


2013年公開のモノクロ、サイレント映画『ブランカニエベス』をレンタルで。
142970703183069162179_blancanieves1大学時代に熱中した『夢見るように眠りたい』は、映画についての映画、しかも過去に封印された映画をモチーフとしていた。だから、モノクロ・サイレントという形式が似合っていたし、武器として有利に使いこなせていた。
『ブランカニエベス』は音楽のテンポ、とくにフラメンコの手拍子に合わせた美しいカットワークがある一方、やむなく効果音に頼ったカットもある。
1920~30年代の映画は、カットワークやカメラワークによって、原則的な話法を完成させていた。クローズカップで俳優の表情を強調したり、レフ・クレショフが実験したように、バラバラのカットを繋いで意味を生じさせることも出来た。
どうしても効果音を入れざるを得なかったのは、サイレント映画は不自由だという思い込みがどこかにあるためじゃないだろうか。ついつい僕らは、自分が生まれる以前の表現や娯楽は「現在よりも稚拙で、退屈だった」と決めつけてしまいがちだ。その悪癖から逃れるためにも、名画と呼ばれている作品は、ちょくちょく見直しておいたほうがいい。


クラス会で、すっかり人相の変わった元同級生が「僕のこと、誰だか分かる?」とニヤニヤしながら聞いてきたことがあって。「ごめん、誰だっけ?」と聞き返すと、「ほら、分かんないんだ。さて、誰でしょうねえ」と、えんえんともったいつけている男がいた。
仕事でも核心を言わずに、「困ったことになりましたねえ」「これはどうにかしないとアカンですねえ」と話をはぐらかすばかりで、具体的にどこをどう改善するのか聞いても「えーと……どこが悪いか、理解してます?」と、話を曖昧にする人っているでしょ? そういう人とは二度と仕事しないので、最近は僕の周囲にはいないけれど、彼らの中には「相手よりも頭の冴えた、本当の自分」がいるんだろうな。
生(なま)の、現在進行形の自分がちっぽけだから、曖昧な言い方で自分を誇大に見せる。

僕は数多く挫折してきたので、苦心しながらクリエイターとして大成した人には尊敬心を持っている。あるいは、いま現在、苦労している人に対しても。
挫折が嫉妬となり、「本当は俺だって……」と屈折している人もいるかも知れないけど、僕には「本当の自分」などという誇大な虚像がない。理想も向上心も捨ててないけど、周囲の人の下す評価が現実だと思っている。自分を認めない周囲が愚かだとも思わない。現実以外の答えはない。よって、間違ったと気づいたら謝る、助けてもらったらお礼を言うといった実務と礼儀を重ねていくしか、物事の改善方法はないと思っている。


「フリーライターなんて誰でもなれるだろ」と思われているなら、特に反論はない。僕より文章力の優れたアマチュアは、星の数ほどいる。
しかし、フリーランスで仕事を続けていくには、文章力よりも信頼が必要だ。「周囲がバカなのだ」「本当の俺は、もっともっと凄いのだ」という尊大な態度、もったいつけた言い方は、一時的に人を圧倒し、恐れさせ、従わせるだろう。
だが、そういう威圧的な人は(どれだけ突出した才能があろうと)、相手にするのが疲れる。僕には才能がないので、せめて誠意をつくそうと努力している。その結果として仕事をいただけているのなら、それ以上の喜びはない。
(C)2011 Arcadia Motion Pictures SL, Nix Films AIE, Sisifo Films AIE, The Kraken Films AIE, Noodles Production, Arte France Cinema

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