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アニメ業界ウォッチング第36回:荒牧伸志監督が語る「3DCGとモーションキャプチャにこだわる理由」(■)神山健治監督と『攻殻機動隊』をつくりはじめた、荒牧伸志監督に取材させていただきました。
神山監督の話題も面白く聞かせていただいたのですが、それは情報解禁になるまで待ってとのことで、今回は荒牧監督の作品に、話を絞っています。
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レンタルで、アイルランドのアニメ『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』、ケイト・ブランシェット主演の『キャロル』など。『ウェディング・シンガー』という映画が、なかなか面白い試みをしていた。
結婚パーティ専門の歌手の男性が、婚約者に逃げられてしまう。その彼が結婚予定のウェイトレスと出会って、紆余曲折の果てに彼女と結ばれるという、まあなんてことない恋愛映画だ。
このシンプルな筋立てを、衣装とセットの色で演出している。主人公が落ち込んでベッドで眠っているときは、彼のパジャマもシーツもモノトーン。ちょっと元気が出てきたら赤いシャツを着ているとか、「いつの間に着替えたんだよ?」と笑ってしまうぐらい、展開に応じて衣装がどんどん変わる。
いちばん感心したのは、このスチールの衣装。右側が、主人公だ。このシーンで、ヒロインはピンクのシャツと黒いジャケットというコーディネート。また、彼女の婚約者(主人公のライバル)もピンクのシャツを着ている。したがって、2人が並ぶと「ピンクでお揃いの服を着ている」わけだ。
だが、ヒロインは主人公にも好意をもっている。彼女が主人公の近くに行くと、彼女は横を向いて話しているので、下に着ているピンクのシャツは見えない。すると、今度は主人公の黒いジャケットと「お揃いの服を着ている」ように見える。これは、実によく人間関係を視覚化しているよ。
主人公とライバルとの間に、衣装の共通点は皆無。だが、ヒロインは2人の間で揺れ動くわけだから、2人の衣装それぞれに呼応したコーディネートになっている。
徹頭徹尾、そのような設計で衣装が選ばれているわけではないけど、部分的に衣装が強烈に主張してくる。ドラマを奏でるのは、何もセリフだけとは限らないのです。
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『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』は、良質なアニメーションであることは分かるんだけど、やはり「アニメーション」と「映画」とは、別の表現手法ではないだろうか。
劇映画は、「フレーム内の情報の変化」と「カットを割っても劇が持続していること」、その二つが成立条件だ。ストーリー性というより、劇性のあるアニメーションも、その成立条件を拠りどころにしてはいるんだけど、フレーム内の「情報の質」が、実写映画と違いすぎるんだよな。乱暴に言うと、写真と絵は別のものだから。
『君の名は。』も『この世界の片隅に』も、実写「的」な奥行きと立体感をもった絵づくりをしてはいるんだけど、「絵」であることの優位性は、それほど評価されていない。それどころか、「実写よりリアルだ」「絵とは思えない」といった混乱を招く評価のされ方が多い。
フレーム内の「情報の質」について気にする人が案外少なくて、いつもストーリーテリングに話題が集束してしまう。
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