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2017年8月21日 (月)

■0821■

イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン監督の『ファーゴ』、レンタルで。
Imageシンボリックな構図の多用で知的好奇心を喚起し、個性的な顔つきの俳優たちのかもすユーモラスな雰囲気で親近感をあたえる。よって、90分間のあいだ、まったく飽きることはない。
いつものようにストーリーが、テーマが、メッセージが……と文学的に解釈しがちな方でも、プロセスの積み重ねやシチュエーションの展開に興味を持てるのではないだろうか?


誰でも気づくと思うが、ものを食べるシーンがとても多い。
主人公(だとしても、登場までに30分もかかる)の女性警察署長マージは、妊娠しているせいか、とにかく大量に食べる。登場シーンは、ベッドで寝ているところを電話で起こされるという凡庸なものだが、夫が料理した朝食をとって、事件の捜査に出発する。
雪の中の犯行現場に着いてからは、部下にコーヒーを勧められる。つわりで吐き気を催すものの、すぐさま「お腹が空いたわ」などと言い出す。
次のシーンは、狂言誘拐をもくろんだ中古車ディーラーたちが、カフェで朝食をとっている。誘拐犯たちの動きを見せたあと、マージ署長が警察署に戻ってくる。すると、夫が山ほどのハンバーガーを差し入れに来ている。
さらに、マージ署長がビュッフェ形式のレストランで料理を皿に盛るシーンを、やけに長々と撮っている。ほかにも、ドライブスルーでハンバーガーを買い、車内で頬張るシーンもある。
プロセスの進行を遅延させる、無駄とも思えるシーンばかりだ。それでも、食事シーンが映画や人物にまろやかな感触を与えているのは間違いない。


誘拐犯たちは、ブレーナードという小さな町に寄り道する。町の入り口には木こりの像が立っており、劇中に三度、登場する。二度目は、最初の殺人が発生する直前だ。まさかりを担いだ木こりの像を、ゆっくりと舐めるようにティルト・アップで撮っている。下から光が当たっているので、木こりが殺人者のようにも見える。
ラスト近く、誘拐犯が仲間の死体を解体しているところを発見され、捕まる。彼がパトカーの中からゆっくりと見上げるのが、やはり木こりの像である。

実は、そのような暗喩的なシーン、カットに溢れた映画なので、いちいち解釈するのが癪ではある。だが、映画はドラマだ、ストーリーが大事だという思い込みを駆逐するだけのパワフルな密度の映画であることは間違いない。


20年ぶりぐらいに、根本敬さんの著書を買った。『夜間中学』という穏当なタイトルからして、以前に比べると薄味になっているかと思いきや、あの生命力に満ちた毒々しさは健在で、心の底から「頼もしい」と感じる。
「生活感だらけの街、銀座の角を曲がると釜ヶ崎」……韓国について触れたページで、このような美しいフレーズと出会った。

生きることへの図太さを教えてくれた根本敬さんは、心のセーフティネットだった。この人の存在を知らなかったら、とっくに野垂れ死んでいただろう。

(C)1996 ORION PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved

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