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ニュータイプ 2017年9月号 発売中

故・菅正太郎さんについて、佐藤竜雄監督にインタビューしました。
5年前に放送された『輪廻のラグランジェ』で、菅さんはシリーズ構成、佐藤さんは総監督という立場でした。
僕は、放送が決まってから、『ラグランジェ』のオフィッシャル・ライターとしてプロダクションI.Gに呼ばれました。Blu-rayなどのパッケージだけでなく、番組のキャッチコピー、各話あらすじ等、公式な文章はほぼすべて書きました。
「少年ガンガン」と「ヤングガンガン」に連載されていた情報ページも任されました。月刊と隔週刊なので、月に3本、まだ本編が出来上がる前に先行情報を書かねばなりません。制作スタッフは全員忙しいので、声優さんから各話についてコメントをいただくため、何度もアフレコスタジオに行きました。
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僕はけっこうお節介なので、『ラグランジェ』の第二シーズンが始まる前に、徳島のマチアソビでコメンタリー付き上映会を開催して、お客さんのために入場特典を用意してもらったり、キービジュアルを提案したりしました。その頃になると、だんだん宣伝費も底をついてきたので、それらの自主的な活動はボランティアでやっていました。
また、『ラグランジェ』のムック本があまりにも軽い内容だったので、世界観の設定ページや本全体への導入パートを設けることを、会議で提案しました。そのとき、新たな設定づくりのため、菅さんに惑星の名前などを考えていただき、僕が書き上げた設定部分をチェックしてもらいました。
その延長上で、「月刊ホビージャパン」に『ラグランジェ』のメカ設定のページを連載しました。なぜなら、せっかくロボットを日産自動車のデザイナーに描いてもらったのに、本編での設定が薄すぎたからです。バンダイビジュアルさんのプロデューサーがページを確保してくれましたが、「タダでもいい」と言ったら、本当に原稿料が出なかったので、びっくりしたものです。
そして、全六回の連載のため、本編にはまったく出てこないメカの開発背景、バックストーリーを考え、菅さんにチェックしてもらい、ときにはダメ出しもあり、ときにはキャラクターや艦船の名前を考えていただき、半年ほどお付き合いが続きました。
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打ち合わせの場所は、いつも吉祥寺駅からちょっと離れた喫茶店で、時間帯は夜8時ぐらい。バンダイビジュアルのプロデューサーが同席して、3人だけの打ち合わせです。
あるとき、プロデューサーがどうしても来られないことがあり、菅さんと2人で打ち合わせしていたら話が盛り上がり、「ちょっと飲んでいきましょう」と誘われて、吉祥寺の小さな焼き鳥屋で飲みました。
とりたてて、面白い話だったわけではないです。『DARKER THAN BLACK 黒の契約者』はちゃんと見てくれていたか?とか、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で神山健治監督に何度も使ってもらえて、すごく嬉しかったとか、今後はもっと頑張るから見ててくれよとか、別に秘密の話でも何でもない。
僕は利害関係のない外部の人間なので、気楽に話していただけたのでしょう。それと、佐藤監督からうかがったのですが、奥さんは菅さんの仕事内容をよく知らされていなかったそうで、あまり自分の参加した作品を振り返って語る機会がなかったのかも知れません。
僕がタダで連載をやっていると話したら、「それはひどい。俺からお金が出るように言っておくよ」と怒ってくれたのを、よく覚えています。
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『ラグランジェ』は、当初は別の監督とライターで進んでいたそうですが、そのお2人が抜けたので、まったく新しい設定とストーリーを考えなおしたそうです。仕事している人なら分かると思いますが、一度ポシャったところから再出発するのって、絶対に苦しい。気持ちを切り替えないといけないから、精神的にイヤじゃないですか。クリエイティブ側のスタッフは菅さんひとりしか残らなかったので、張り切るのは分かるし、責任感もあっただろうし、孤独感をおぼえるのも分かります。
その辛さとか、辛さと背中合わせのやりがいだとかは、5年たった今のほうが分かるような気がする……。菅さんは、いつでも「やってられるか」と逃げる権利を擁していたんだけど、とうとう最後の最後まで踏みとどまった。『ラグランジェ』の他のライターさんはギャグとか趣味に走っていたけど、菅さんだけは義務感を優先させていたんじゃないかな……。いちばん外側から作品全体を見ていたので、どうしてもそう思えてしまう。
そういう仕事のしかたを、他人事とは思えなくなってきた。今さらだけど。
だから、俺は作品がつまらなくても「クソ」とか「カス」とか、商業的に失敗しても「爆死w」とか、絶対に言わない。「コケた」とさえ言いたくない。「神アニメ」にも、同様の無責任さを感じる。誉め言葉になっていない。かえって失礼な感じがする。
あのね、他人の仕事を屁のように軽んじているから、「クソ」「神」と言い捨てられるんですよ。観客は当事者。作品を生かすのも殺すのも観客。生まれながらに「クソ」も「神」もないんです。99人が敵になるとしたら、俺はひとりの味方でありたいです。
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僕はけっこうお節介なので、『ラグランジェ』の第二シーズンが始まる前に、徳島のマチアソビでコメンタリー付き上映会を開催して、お客さんのために入場特典を用意してもらったり、キービジュアルを提案したりしました。その頃になると、だんだん宣伝費も底をついてきたので、それらの自主的な活動はボランティアでやっていました。
また、『ラグランジェ』のムック本があまりにも軽い内容だったので、世界観の設定ページや本全体への導入パートを設けることを、会議で提案しました。そのとき、新たな設定づくりのため、菅さんに惑星の名前などを考えていただき、僕が書き上げた設定部分をチェックしてもらいました。
その延長上で、「月刊ホビージャパン」に『ラグランジェ』のメカ設定のページを連載しました。なぜなら、せっかくロボットを日産自動車のデザイナーに描いてもらったのに、本編での設定が薄すぎたからです。バンダイビジュアルさんのプロデューサーがページを確保してくれましたが、「タダでもいい」と言ったら、本当に原稿料が出なかったので、びっくりしたものです。
そして、全六回の連載のため、本編にはまったく出てこないメカの開発背景、バックストーリーを考え、菅さんにチェックしてもらい、ときにはダメ出しもあり、ときにはキャラクターや艦船の名前を考えていただき、半年ほどお付き合いが続きました。
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打ち合わせの場所は、いつも吉祥寺駅からちょっと離れた喫茶店で、時間帯は夜8時ぐらい。バンダイビジュアルのプロデューサーが同席して、3人だけの打ち合わせです。
あるとき、プロデューサーがどうしても来られないことがあり、菅さんと2人で打ち合わせしていたら話が盛り上がり、「ちょっと飲んでいきましょう」と誘われて、吉祥寺の小さな焼き鳥屋で飲みました。
とりたてて、面白い話だったわけではないです。『DARKER THAN BLACK 黒の契約者』はちゃんと見てくれていたか?とか、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で神山健治監督に何度も使ってもらえて、すごく嬉しかったとか、今後はもっと頑張るから見ててくれよとか、別に秘密の話でも何でもない。
僕は利害関係のない外部の人間なので、気楽に話していただけたのでしょう。それと、佐藤監督からうかがったのですが、奥さんは菅さんの仕事内容をよく知らされていなかったそうで、あまり自分の参加した作品を振り返って語る機会がなかったのかも知れません。
僕がタダで連載をやっていると話したら、「それはひどい。俺からお金が出るように言っておくよ」と怒ってくれたのを、よく覚えています。
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『ラグランジェ』は、当初は別の監督とライターで進んでいたそうですが、そのお2人が抜けたので、まったく新しい設定とストーリーを考えなおしたそうです。仕事している人なら分かると思いますが、一度ポシャったところから再出発するのって、絶対に苦しい。気持ちを切り替えないといけないから、精神的にイヤじゃないですか。クリエイティブ側のスタッフは菅さんひとりしか残らなかったので、張り切るのは分かるし、責任感もあっただろうし、孤独感をおぼえるのも分かります。
その辛さとか、辛さと背中合わせのやりがいだとかは、5年たった今のほうが分かるような気がする……。菅さんは、いつでも「やってられるか」と逃げる権利を擁していたんだけど、とうとう最後の最後まで踏みとどまった。『ラグランジェ』の他のライターさんはギャグとか趣味に走っていたけど、菅さんだけは義務感を優先させていたんじゃないかな……。いちばん外側から作品全体を見ていたので、どうしてもそう思えてしまう。
そういう仕事のしかたを、他人事とは思えなくなってきた。今さらだけど。
だから、俺は作品がつまらなくても「クソ」とか「カス」とか、商業的に失敗しても「爆死w」とか、絶対に言わない。「コケた」とさえ言いたくない。「神アニメ」にも、同様の無責任さを感じる。誉め言葉になっていない。かえって失礼な感じがする。
あのね、他人の仕事を屁のように軽んじているから、「クソ」「神」と言い捨てられるんですよ。観客は当事者。作品を生かすのも殺すのも観客。生まれながらに「クソ」も「神」もないんです。99人が敵になるとしたら、俺はひとりの味方でありたいです。
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