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2017年5月18日 (木)

■0518■

痴漢行為を疑われて逃走した男性が死亡した事件の余波だろう、Twitterが痴漢犯罪や痴漢冤罪の話題でにぎわっている。
「痴漢冤罪防止のために、署名をやるべきだ。問題は、誰が署名活動を始めるか」というツイートがあり、「またか」とため息が出た。
どんなことでも、思いついた人間がやる以外、何事も実現しないというのに、延々とスマホに向かって「世の中変われ、俺(私)の望みどおりに変われ」と、願い事を書き込んでいるだけの人たち。

二年前、僕は『痴漢被害根絶のため、「車内防犯カメラの設置」と「学校での性暴力対策教育」を求めます。』という署名を行った()。
なぜ「防犯カメラ」と「性暴力対策教育」を掲げたかというと、先立ってアンケートを行い、上位の意見を採用したため()。
また、前後して痴漢被害を啓発するステッカーも自費で製作して、中野駅前でひとりで配ったこともあった。

……なぜ、そこまでやったのか?
Twitterで二万人ぐらいフォロワーのいる男性が「防犯カメラ設置の署名を集めようか!」と盛り上がっては途中で投げ出し、男性デザイナーが「痴漢被害啓発ステッカーをデザインしました!」と盛り上がっては途中で投げ出し……という醜態を目にしてきたからだ。
彼らの周囲で「やりましょう!」「がんばりましょう!」と盛り上がっていた男女も、申し合わせたように口を閉じてしまった。
だったら、誰かが身体ひとつで動いて見せなくてはダメでしょう? 願いを達成させるための最低限度の、たったひとつの方法が「自分で動く」ことではないのですか?


結局、誰ひとり着いてこなかった。署名が失敗に終わったときの気持ちは、二年前のブログに書いてある()。以下に一部、引用する。

何の成果もないから関心が低いのは分かるけど、こんな気の長い話より、「痴漢が捕まって、顔も名前もさらされて一生苦しむ」って有り様を、みんな早く見たがってるじゃなかろうか……?って気がしてしまう。あのね、何より怖ろしいのは「法を最大限に活用して、フェアに、潔く戦ってみせよう」なんて、誰も考えてないんじゃないか?ってことなんです。

性犯罪者を憎む気持ちを理解したい、でもだからこそ、社会の真ん中を走るルートを使って、法治国家にふさわしい形で無念を晴らしましょうよ。こちら側だけでも、きちっと筋道を通しましょうよ。そう考えるから、僕は顔と名前を出して行動できるんですよ。
だけど、誰も僕のあとに着いてこないのは、「コイツのやってることは回りくどい」ってことなんでしょう。驚くほど、みんな社会に要望を通す手続きを知らない、関心がないんです。

それ以前にやった行動も、すべて僕はスジを通したつもりだった。
児童の人権を擁護する法律に「児童ポルノ」という言葉はふさわしくないから、「性虐待記録物」に変更しましょう。それには、「性虐待」について、正確な知識を得ていないと、それこそ子供をダシにしてしまうことになる。
だから、専門書をたくさん読んだし、児童虐待の勉強会にも行った。個人や団体に取材もしたし、性犯罪・性虐待を告発する映画を支援もした。

性犯罪・性虐待が残す心理的外傷が、あまりにも深刻なので、見て見ぬフリはできない。
だけど、たとえば児童ポルノ規制法の話題は、いつも表現規制へ向かってしまう。合法的に売られていたポルノ作品を「疑わしい」とあげつらったりするばかりで、犯罪過程で撮影された性虐待記録物こそを根絶しよう……という動きには、決してならない。


松山市の中等教育学校で、かつて小学生の担任だった男性が、児童のスカート内を盗撮していた()。
教師の性犯罪はとても多いし、警察官が痴漢していた事件もよく耳にする。だけど、「教師や警官をこそ疑おう」「抗議しよう」という世論にはならない。秋葉原でエロ漫画やアイドルDVDを買ってるオタクたちが危ないぞ……と、矛先をそらす人たちがいる。

女性は、社会的に不公平な立場におかれていると思います。性犯罪・性虐待は「男権」や「父性」の醜い暴走であるし、根絶したい。だけど、何らかの行動を起こすと、まったく次元の違う問題に巻き込まれ、いつもいつも本質がブレてしまう。
「みんな、本気じゃないんだな……」と、ため息さえ尽きるのです。

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